騒動収拾の兆しも見えない横浜のマンション傾斜問題。
三井不動産レジデンシャルはマンションの区分所有者に対し、
全棟の建て替えと過去の最高評価額での買い取りを提案しました。
これは補償の内容として妥当なのでしょうか。
法律の専門家ではありませんが、
長年のクレーム対応の法律知識を元に考えてみました。
通常、販売した物品に瑕疵があった場合、
機能回復が補修や改修で可能であれば、法的にはこれで足ります。
たとえ命にかかわるような自動車のリコールであっても、
新車に交換してもらえないのと、理屈は同じです。
仮に住民の8割以上が建て替えに賛成し、
三井不動産レジデンシャルが全棟建て替えをするとしても、
技術的に補修や改修で建築基準法が要求する耐震強度を満たすなど、
そのマンションの本来の機能を回復できるのであれば、
三井住友建設や日立ハイテクノロジーズ、旭化成建材は、
補修や改修に相当する費用以上の負担義務はありません。
これを上回ってかかった建て替え費用は、
三井不動産レジデンシャルが負うことになるはずです。
そのような費用負担について、
各社の間で合意ができているとはとても思えません。
もし、補修や改修で済むものを建て替え、
過剰にかかった費用を三井不動産レジデンシャルが負ったとしたら、
それは回避することが可能であった損失として、
株主から経営者責任を問われる可能性もあるのではないでしょうか。
今の段階で全棟建て替えを表明するのは勇み足か、
ブランドイメージを意識したパフォーマンスとしか思えません。
そして、補修や改修で機能が回復できない場合は、
同等の物品と交換する(この場合は建て替え)か、
契約時に遡って売買契約を解除することになります。
買主が同等の物品との交換(建て替え)でなく、
買い取りを望んだら、それは正確には売買契約の解除となります。
買主の要求を最初から満たしていなかったのですから、
売買契約は契約時に遡って無効となり、
これまでに買主が被った損失の補償は売主が負います。
すなわち、三井不動産レジデンシャルは、
マンションの売買代金の返還はもちろん、
買主がこれまでに支払った固定資産税や修繕積立金などの費用も、
金利付きで補てんする義務を負うことになるはずです。
しかし、それを「これまでの最高評価額で買い取る」と言えば、
売買代金を上回った価格(評価益)の部分は、
買主にとっては税法上は利益(所得)となり、課税されるはずです。
したがって三井不動産レジデンシャルは、買主のことを思いやるなら、
「風評被害も最高評価額も算定が困難なので払えない。
そのかわり慰謝料で対応する」
と言うべきだったと考えます。
慰謝料は精神的損害に対する補償なので課税されません。
やはり、最高評価額での買い取り表明も、
太っ腹と思わせるためのパフォーマンスとしか思えません。
マスコミもそれにまんまと乗せられている気もします。
また、被害者であるマンションの区分所有者も、
三井不動産レジデンシャルの提示する補償方針に一喜一憂せず、
目先の損得にとらわれないで、
焦らず冷静に対応すべきではないでしょうか。
【後日談】
その後、補償問題に詳しい知人に確認したら、
「売主が契約時の価格で買い取ったとしても、
建物の減価償却分に対しては所得として課税されるはず」
とのことでした。
ただし、
「契約時の価格であろうが、最高評価額であろうが、
課税相当額は、売主が慰謝料に上乗せして負担するのでは?」
ということです。
課税相当額をどちらが負担するかは、
所有者と売主との交渉で決まるのでしょうが、
売主に支払い能力がある限り、
所有者は絶対に損をしないようになっているようです。
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