いまさらですが、「タイタニック」3D版を観てきました。
この映画をはじめてDVDで観たとき、
劇場のスクリーンで見逃したことをとても悔やんだのですが、
「いまさらストーリーも知っている映画を3時間も観ていられるだろうか」と思いつつ、
あのスケール感を味わいたくて、思い切って劇場に行ってきました。
もともとこの映画は、
レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットが演じる、
「極貧画家」と「上流社会のお嬢様」の身分を超えた悲恋が話題となって、
女性の圧倒的支持を受けた映画でした。
しかし、この映画の面白さは、
監督のジェームズ・キャメロンが語ったように、
8歳から80歳まで、それぞれの世代で、それぞれの楽しみかたができ、
また、観る年齢によって新たな発見ができることです。
ラブロマンス映画だと思う人もいれば、パニック映画だと思う人もいるでしょう。
格差社会や身分差別を批判する社会派ドラマだと感じる人もいるかもしれません。
そんなキャメロン監督の言葉通り、
ストーリーは知っていても、3時間があっという間に過ぎていきました。
私がこの映画を最初に観た15年前は、
「この映画は、ローズ(主人公の女性)の生涯を描いた人間ドラマだ」 と思いました。
タイタニックの沈没から生還したローズが、
ジャック(ディカプリオ)との束の間の出逢いを生きる力に変えて人生を切り拓き、
年老いて再びタイタニックへ還ってくるまでの長い人生の物語だと。
映画の中では、101歳になったローズの、それまでの人生を伝えるものは、
冒頭と最後に映し出される、彼女の寝室に飾られた若き日の写真しかありません。
しかし、タイタニックで彼女がジャック(ディカプリオ)と過ごした短い日々が、
そのセピア色に変色した幾枚もの写真と見事につながり、
映画を観る者の心に、彼女のその後の人生を鮮やかに描き出します。
船の切っ先で空を飛ぶように両手を広げるシーンと、
フライトスーツで飛行機に足をかける若き日のローズの写真。
「馬の乗り方を教えてあげる」
ジャックが彼女に語ったそんなシーンは、
笑顔で馬にまたがるローズの写真へとつながっています。
当時は、そんなジェームズ・キャメロンの演出に深く感心したものです。
そして今回、「タイタニック」を観て心に強く訴えかけられたのは、
豪華客船の一等船室で優雅に着飾って食事をする富豪たちと、
その船を動かすために、船底で真っ黒になって石炭をくべる人夫たちとの、
あまりにも大きな格差とそれによって支えられている社会の姿でした。
浸水が始まると、船が沈没するのを防ぐために隔壁が閉鎖され、
船底の彼らは真っ先に閉じこめられて犠牲となっていきます。
「形は違えども、いつの時代でも社会の仕組みは変わっていない」
駆け出しの社会人の時にはわからないことでも、
15年の歳月が経てば、しみじみと実感することもあるものです。
ところで、今回の売り物である肝心の3D。
正直、この映画は大きなスクリーンで観る価値はあっても、
3Dである必要性はまったくないと感じました。
3Dであるか否かは、この映画の評価にはまったく関係ありません。
むしろ、3Dに期待しすぎると、立体的に見える場面ばかり気になって、
ストーリーやスケールの大きさに集中できません。
少なくとも私の脳みそは、3D映画向きではない。
個人的には、そんなことも気づかされた映画でした。