くろたり庵/Kurotari's blog~since 2009

総務系サラリーマンの世に出ない言葉

気がついてみると

2013-02-04 23:09:34 | 総務のお仕事(防災)
わが社では、日本国内のどこかで震度6弱以上の地震が発生したときは、
平日・休日、昼夜を問わず、地震が起きた地域の支店と本社の総務担当者は、
会社に参集し、支店管内に居住、または勤務する社員の安否や、
会社施設の被害状況を確認する決まりになっています。

東日本大震災が起きる前までは、
毎年2~3回は参集しなければなりませんでした。
ところがこのところは一年以上にわたって、
総務の防災担当者が集まらなければならないような地震は起きていません。
東日本大震災のちょうど1か月後(2011年4月12日)に発生した余震以降、
震度6弱以上を観測する地震は発生していないのです。

もちろんたまたま震源が海底だったからとか、
あるいは地中深かったから5強以下で済んだという幸運もあります。
内陸部の浅い場所が震源だったら、大きな被害が出たであろうと、
容易に推測できる規模の地震は何度も起きています。

気象庁によれば、震度3以上の地震は、
関東・東北に限っても、この1か月だけで20回起きています。
日本全国で起きた震度5弱以上の地震も、
昨年一年間で16回にもなります。

ここ最近、これほど地震が頻発しているにもかかわらず、
毎年日本のどこかで、必ず起きていた震度6弱以上の地震が、
2年近くも一度も起きていないのは、なんだか不気味でなりません。

大きな揺れがない分、
地殻は地震のエネルギーを溜めつつあるのでしょうか。
あるいは比較的小さな地震が頻発することによって、
溜まった地震のエネルギーは小出しに放出されているのでしょうか。
地震の専門家ではないので詳しいことはわかりません。

ただ、専門家と呼ばれる人の誰もが、
そこかしこで「危ない」「必ず来る」と言い続けているのですから、
少なくとも、小さな地震の頻発が、
大地震のエネルギーを減衰させるものではないようです。

「最近、地震が多いなあ」と同僚と話していて、
ふと、もう2年近くも地震で会社に参集していないことに気がつきました。

東日本大震災以降、
何度も何度も、「いつ」が危ない。「どこそこ」が危ない。
そんな情報をネットや雑誌で見聞きしてきました。

そのような予測があてにならないことは、
誰よりも行政や企業の防災担当者が知っています。
そんな担当者が絶対確実視しているのは、
震度6弱以上の地震はいずれ再び、必ず「起きる」ということ。
そしてそれが、「いつ」「どこで」なのかは、
誰にもわからないということだけです。


案外とおもしろいかも

2012-12-07 19:01:28 | 総務のお仕事(防災)
ようやく今年の震災訓練(BCP訓練)が終わりました。

「シナリオに基づく訓練も大事だが、
 最悪の被害を想定した、実践的な訓練を!」

経営層からそう指示され、
訓練実施までの一ヶ月間は、目の廻るような忙しさでした。

たしかに昨年までの訓練は、
「発震後ほどなくして、震災対策本部のメンバーが参集できる」
という前提のシナリオでしたから、想定が甘すぎでした。
プロットも登場人物もすべて作りなおしです。

そこで会社から5km圏内に居住する社員数名を拝み倒し、
「社長命令だから」と、半ば強引に特別震災対策チームを編成。
今回から、メンバーの養成を始めることになりました。

経営層の要求レベルは、
「震災時は、チームの誰が出社しても、
 また社屋が被災していても、 発電機やパソコン、
 衛星電話など残された手段を駆使し、
 社員の安否や、出先事業所の被災状況の確認など、
 事業継続のための最低限の初期対応ができる」というもの。

それはまさに、映画に出てくるような、
知力と体力に長けたスーパーヒーローのイメージです。
思わず「映画の見すぎです」とツッコミたくなりました。


震災訓練の出発点

2012-08-30 23:38:43 | 総務のお仕事(防災)
南海トラフの巨大地震の記事を見たのか、
出社してパソコンを立ち上げると、社長からメールが。

「シナリオに基づいた訓練も大切ですが、
 今年の震災訓練は、最悪の被害を想定した、
 実践的訓練を行ってはどうでしょうか」

多くの会社がそうであるように、
わが社でも社長の「~どうでしょうか」は、すなわち「やれ!」を意味します。
そこで総務一同、朝から頭を抱え込んでしまいました。

民間の貧弱な一企業が、
関東地方整備局や東京都の災害対策本部指令室のように、
高い耐震性と非常用バッテリー、独自の通信システムなどを備えているわけもなく、
最悪の被害を想定したら何ができるのか、皆目見当もつきません。

加えて、本当に南海トラフを震源とする三連動型地震を想定したら、
首都直下地震では東京本社の代行本部となる計画の大阪、名古屋も壊滅。
まるでお手上げ状態、手の打ちようがありません。

そうなると、「いかに事業を継続させるか」を訓練するよりも、
むしろ社員一人ひとりにサバイバル技術をレクチャーするほうが、
より実践的訓練ではないかという結論に至ったのでした。

要するに、社員一人ひとりが防災に関心を持つこと、
そして大震災発生時に「会社が何をしてくれるか」ではなく、
「自分には何ができるか」を考えてもらうことが、
震災訓練の原点であったわけです。

でも、これを考えてもらうように導く訓練計画って・・・
やっぱり頭を抱え込んだのでした。

今年の訓練、乞うご期待!


新耐震基準は安心か?

2012-07-20 23:59:59 | 総務のお仕事(防災)
会社で事業継続計画(BCP)を策定したとき、
社屋ビルの耐震診断を実施したことがあります。

一般的には、新耐震基準に基づいて建築された建物
すなわち、1981年の建築基準法改正以降に建てられた建物であれば、
震度6強から7の地震がきても大丈夫という認識があります。
(建築の世界では、震度ではなくガルという加速度を用います)

しかし、多くの人が勘違いしているのは、
「新耐震基準の建物だから、大地震がきても壊れない」、
すなわち「大地震のあとも住み続ける(使い続ける)ことができる」
と思っていることです。

新耐震基準は、
「大地震がきても建物に影響が出ない」
というレベルでの設計強度を定めたものではありません。

あくまでも「人命を守ること」を最優先に考え、
「建物倒壊による死者を出さない」という基準で定められたものです。
「財産」として建物を守ることは考慮されていないのです。

したがって、建物の柱や壁に大きな亀裂が生じたり、
大きく傾いたりして住めなくなることは充分にありえることなのです。

実際に東日本大震災では、
本震では建物は倒壊せず、住民は全員無事に避難しましたが、
その後の余震で建物の損壊は修繕できないまでに拡大し、
取り壊されることになった建物もあったといいます。

もちろん、現代の建築技術があれば、
震度7の地震がきても、ビクともしない頑丈な建物を建てることは可能です。
しかし、それではあまりに建築費用がかかりすぎて、現実的ではありません。
もし、そのような厳しい基準で法制化してしまえば、
一部の富裕層しかマイホームを買えなくなってしまいます。

そこで、その基準の折り合いをつけたところが、
「建物倒壊から人命を守るレベル」 ということになったわけです。

新耐震基準の建物であったとしても、
大震災後に住み続けることができなくなるほど損壊することはあるし、
住めなくなった状態で、住宅ローンだけが残るということも充分にありえるのです。
(残念ながら、家がなくなったら借金もチャラになるような住宅ローンは、
 世界中のどこを探してもありません)

ですから、そのことを理解している人たちは、
免震構造や制震構造の住宅を購入しますが、やはり価格は割高であり、
購入資金に余裕のある富裕層のものであるという感は否めません。

したがって、私たち一般人には、
災害に強い土地であるか否かなど、建設地の地歴を調べて購入し、
万一に備えて「地震保険」に加入するなどして、
自分の身と財産を守るしかないのです。

ところで冒頭に書いた社屋ビルですが、
診断結果は、震度7程度であっても構造体に影響はなく、
倒壊しないというものでした。

ただし、カーテンウォールの外壁のほとんどは脱落し、
吹きさらしになる可能性が高いとのこと。

「結局、だめじゃん!」 という結果でした。


被害想定に追いつかない!

2012-05-12 22:42:11 | 総務のお仕事(防災)
東日本大震災を契機に、さまざまな災害の被害想定の見直しが行われ、
ここ一年で被害規模の想定がどんどん大きくなってきました。

地震の規模はマグニチュード7から9に引きあげられ、
被害規模も大幅に拡大。
津波の高さは最大36メートルになって、
東京駅周辺の地下は、発災から約3時間で水没するとか。
さらに最近の発表では、富士山の直下に活断層があったとかで、
マグニチュード7クラスの地震で山体崩壊を引き起こすとも言われます。

会社では、報道される被害想定が大きくなるたび、
経営層が事業継続計画(BCP)の見直しを総務に迫ります。
正直、きりがありません。

最近では、大災害が発生したときに備え、
学者たちが、「だから危ないって言ったでしょ」 などと言えるよう、
自分たちの研究の責任を担保しているのではないかと、
うがった見方さえしてしまいます。

数百年、数千年に一度起きていることは、今後もいずれ必ず起きること。
それがたまたま自分が生きているときに起きるか否かというだけです。

また、素人にはよく理解できないのが発生確率の公表。

政府は、「マグニチュード7以上の首都直下地震が起こる確率は、
今後30年間で70パーセント程度」 などと発表していますが、
10パーセントだから安心で、70パーセントだから危険というわけでもないでしょう。
私たちにとっては、明日も、一年後も、30年後も、
地震は「起きるか、起きないか」、「イチか、ゼロか」だけです。

拡大し続ける被害想定。
最近ちょっと、防災対策にお疲れ気味なのでした。