「佐藤さん、田中商店の渡辺さんから電話です」
同じ部署内の女性社員が、代表電話にかかってきた電話をとり、
近くにいる佐藤さんに、彼あての電話であることを伝えました。
彼女の声が聞こえたのか、聞こえなかったのか、
佐藤さんは、なにやら真剣にパソコンのディスプレイを見つめ、
無言のままキーボードを叩いています。
すぐに佐藤さんの机の電話が鳴り、彼は受話器をとりました。
「お電話かわりました。佐藤です」
どうやら女性の声が聞こえていなかったようではないようです。
このような場面を目にしたことはないでしょうか?
一日に何度も、同じ女性社員が電話を取り次いでいると、
男性社員はだんだん横着になり、返事もしなくなってきます。
仕事に集中していることをアピールしたいのか、
「返事などしなくても聞こえているよ」とでも言いたいのか、
中堅社員より上の年代になると、そんな社員がとたんに増えてきます。
そのくせ、聞こえなかったと思った女性社員が、少し強い口調で二度繰り返すと、
「今日の彼女は、なんだか機嫌が悪そうだ」と同僚どうしでささやきあいます。
大変失礼きわまりないオヤジたちです。
多くのビジネス本を読むと、
「あいさつが報連相(コミュニケーション)の基本」であると書かれています。
「はい」というたった二文字の返事ができないのですから、
「おはよう」とか「おつかれさま」などといった言葉が言えるわけがありません。
社外からの電話を受ける女性社員は、電話を取り次ぐのが仕事です。
それに対し、無言のまま返事をしないというのは、
彼女の仕事を軽視している、あるいは無視しているに等しいことです。
彼女が「できました」と持ってきた書類を、無言で受け取るようなものです。
自分の仕事が同じように扱われたら、どのように感じるでしょうか。
たかが電話の取り次ぎなどと思ってはいけません。
職場を見渡すと、「あいさつ」よりももっと基本的なことができていないということは、
まだまだあるようですです。