くまきち日記

名古屋に住んでいる、くまきちのたわごと。

ヒョシンくん 『ファントム』演出家からも高評価

2015-05-09 03:13:55 | パク・ヒョシン
















『ファントム』演出ヨハンソン「パク・ヒョシンは一貫性と集中力がある俳優」

ミュージカルレビューおよび演出家単独インタビュー


強弱の調和がとれたドラマだった。‘ファントム’役のパク・ヒョシンはクレッシェンドとデクレッシェンドを自由自在に使い分けた。
バレリーナトバレリーノが‘身ぶり’に力を集中する時 ミュージカルの主演である‘音楽’は欲張らずに力を抜いた。
‘華麗さ’の極致に突き進むオペラの舞台は オペラ座の怪人‘ファントム’が生きる‘暗い’地下に自然に入り込んだ。
場面が両極端を行き来したが観客は没頭した。たびたび起こる弛緩と収縮の中でも結び目に全神経を集中した演出が観客の目を最後まで引きつけた。

ミュージカル『ファントム』が先月28日 ソウル興仁洞・忠武アートホールで開幕した。
演出を引き受けたロバート・ヨハンソン(64)と 30日 忠武アートホールで出会った。
彼は「私は『ファントム』のように観客を一風変わった世界へ導ける作品を好む。観客は公演を通じてその世界を直接経験できるはずだ」と語った。

『ファントム』は劇作家アーサー・コピットと作曲家モーリー・イェストンの合作で 
フランス作家ガストン・ルルーの小説『オペラ座の怪人』(1910)が原作だ。
醜い顔を知られないようパリ・オペラ劇場の地下で暮らす天才音楽家‘エリック(ファントム)’が 
女性歌手‘クリスティーン’を愛して立ち上がる物語が大きな楽しみを作り出す。
『ファントム』の始まりは簡単ではなかった。同じ小説を基に 似た時期に制作されたミュージカル『オペラ座の怪人』(1986)が先に興行に成功したためだ。
コンテンツを先占された状況で『ファントム』が作品の魅力を認められて1991年 米国ヒューストンの劇場に上がるまでは
台本と音楽が完成された後でも7年がかかった。

『ファントム』はミュージカル『オペラ座の怪人』に比べてエリックの幼年時代に集中する。
自然にエリックの母であるバレリーナ‘ベラドバ’の比重も大きくなる。『ファントム』でバレエは過去と現在をつなぐ重要な媒体だ。
韓国版『ファントム』の中 バレエはよりいっそう力を受けた姿だった。ベラドバ役を引き受けたチェ・イェウォン(キム・ジュウォン、ファン・ヘミン)の
おぼろげな演技のおかげで観客はミュージカルとバレエの境界という恍惚の境地に落ちた。

『ファントム』には権威的で背徳感に怖じ気づくエリックはいない。
「悪くなかった。音楽を聴くことができたでしょう。クリスティーンも見られたし」
代わりに愛することができるあたたかなエリックがいる。小さなことに満足する素朴でかわいそうなキャラクターに
同情を誘発するパク・ヒョシンの声が重なると観客はずっと切ないまなざしでエリックを見つめた。
ヨハンソンは「パク・ヒョシンは大きな傷を負った人だけの魅力がある。一貫性と集中力がある俳優だし 彼の演技には鳥肌が立つ」と評価した。

パク・ヒョシンの他にも 俳優リュ・ジョンハンとカイがファントム役を引き受けた。
二人の俳優はパク・ヒョシンとはまた異なるファントムを演じる。ヨハンソンは「3人はみな異なる声を持っている。
パク・ヒョシンは素晴らしい余韻が残り リュ・ジョンハンは権威的でパワフルだ。カイは道に迷った少年のような声を持っている。
声は人物に対する解釈とも関連する。3名が表現するファントムがすべて異なるから観客も大いに興味深い」と語った。
また「観客がコピー品のようなファントムを見ることは意味がないと思う。同じ役でも少しずつ別のものになるかと思う」と付け加えた。

ヒロイン‘クリスティーン’役はオペラのソプラノ キム・スニョン(イム・ソンヘ、イム・ヘヨン)が引き受けた。
クリスティーンが天上の声を持つオペラ女性歌手なので ある意味当然の帰結だ。
『ファントム』でミュージカル舞台にデビューしたキム・スニョンは“3オクターブもシャープ(♯)”まで上がる高音と
短時間で装飾音が続く“コロラトゥラ”を苦労せずに消化し観客の喝采を浴びた。ただ硬直して不自然なセリフ回しは残念さを残す。
ヨハンソンは「オペラの演技とミュージカルの演技は異ならざるを得ない。オペラにはセリフがないからだ。
オペラ歌手たちが苦労して学んだことが まさに歌う時のようにセリフにエナジーをのせること」と言った。
彼は良い例としてマダム・カルロッタ役を引き受けた俳優‘シン・ヨンスク’を挙げ
「歌う時やセリフを言う時 同じエナジーを維持する。これはオペラ歌手たちが続けて練習して学ぶべき点」と高く評価した。

まだミュージカルの演技に不慣れなキム・スニョンの余白を埋めたのもシン・ヨンスクだった。
マダム・カルロッタは実力はないが金持ちの夫のおかげでオペラのヒロインになる憎らしいキャラクターだ。
シン・ヨンスクの演技の変身は驚くべきだった。天井にぶら下がったシャンデリアよりもきらびやかなドレスを着て“もっと私を消して”を熱唱する時 
それは舞台を超えて客席まで掌握した。なまめかしい歌声とカリスマあふれる真性を自然に変奏して観客を感嘆させ 
それほどではない道化で観客を笑わせたりもした。クリスティーンに嫉妬する‘悪女’として登場しても 観客を自分の側に引きつけるほど魅力があった。
ヨハンソンは「その力で我々が作品をはじめる」と語った。

彼は演出家の役割を‘傘をさす仕事’と比喩した。
「多様な役割を受け持つ人たちに 1本の傘をさしかけて一貫性のある作品が生まれるようにすること」が演出家の役割という話だ。
このような役割が最も光を発した場面は『アイーダ』『ラ・トラビアータ』『パルクィレ』等のオペラと ファントムとクリスティーンの歌の練習が数回交差して出てくる時点だ。
観客は早いながらもまとまった場面転換に口を開けたままだったし 古代エジプトから妖精の世界まで合わせる数多くの衣装と小道具にまたいっそう感嘆した。

観客が全神経を舞台に集中するほど魅力的な公演だったが ヨハンソンは小さな失敗が出るたびに膝をたたいた。
彼は「まだ手を加えるべき技術的な問題がある。舞台空間がものすごく狭い。すべてのセットがもっとくっついていた場面転換や俳優たちの背中・退場が難しい」と
惜しむ気持ちをあらわした。その一方で「衣装、小道具、舞台など各分野が満足だ」とし
「構成員すべて‘ひとりでは上がれない公演を力を集めて作ろう’というマインドで作業している」と語った。

観客は仮面の中のファントムの本当の姿を、170分の間 ファントムとして生きるパク・ヒョシンの顔を見ようとした。
だがファントムは最後まで観客に自分の顔を見せることはない。
ヨハンソンは「どんな醜い顔でもこの作品の中のファントムはとても素晴らしい人だということを知ってほしかった。想像にゆだねるのがいいだろう」と語る。
7月26日まで 忠武アートホール大劇場。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする