珍方録

バイクと酒とジンギスカンをこよなく愛するブログ

のぼうの城

2013-03-05 | その他

 

昨年(2012年)秋に公開された映画「のぼうの城」にエキストラとして参加した時のレポートです
撮影は一昨年(2010年)の夏
北海道苫小牧東部の原野に広大なセットを築いて撮影が行われた

 

映画の原作は和田竜の「忍ぶの城」
史実に基いた戦国時代の物語で、豊臣秀吉が行った小田原征伐で唯一落城しなかったといわれる忍城(おしじょう)攻めを描いた内容
ボクの役柄は石田三成率いる豊臣軍の鉄砲足軽
ロケでは正木丹波役の佐藤浩市と撮影日が一緒だったが、演技はただただ渋いのひとこと・・・

ロケには1週間ほど参加した。 苫小牧集合は毎朝6時30分
早朝ミスティックで家を出発し、朝の清々しい支笏湖を経由して苫小牧まで走るという毎日が、実は撮影より楽しかったかも・・・
現場に到着すると、衣装用テントが何棟も設営されていた
ボクは足軽なので、まずは甲冑に着替えさせられる
担当者に案内され衣装テントの中に入ると、そこにいる男のスタッフはみんな顔が真っ黒に日焼けして髭面という風貌だった

とてもカタギに見えないその人たちは"五十騎の会"と言われるプロの俳優集団だった
すでに何日も前からハードな撮影をこなしているせいか、どことなく戦国時代の人っぽい
東京から遠征して来ている人達だが、早朝から陽が落ちるまでずっと我々地元エキストラの世話をしてくれた
監督、助監督からは「ゴジュッキ!」と呼ばれ、あらゆるシーンで重用されていた 

撮影現場は熱気に溢れており、常に300人以上の人間が居た
ロケ期間中、苫小牧の仕出し屋が"ロケ弁"の受注でかなりの売上があったと新聞に載っていた
甲冑に着替え終えると、足袋・草履を履き、顔に"汚れ"メイクを行う
実際は30kg以上あったという甲冑だが、衣装とは言えずっしり重い
甲冑のほか火縄銃を持ち、さらに合戦中に敵と味方を識別するため、背中に自軍の旗指物を付ける
この旗が強烈に重く邪魔で、戦国の人はどうやって戦ったのか?

衣装・メイクの準備がすべて整うと鉄砲部隊、弓部隊、槍部隊にそれぞれ分かれ、隊列を組んで撮影場所まで移動する
最初の撮影場所まで1キロくらい歩く
オープンセットの規模は東京ドームが何個か入るくらい広いらしい
移動中、甲冑を纏った周囲の人たちを見ていると気分が高揚してくる
大人がお金を掛けて真面目にこんなことをやる世界があるのだな、と歩きながら思ってしまった・・・

皆が腰からぶら下げている巾着袋は本来兵糧を入れるためのものだが、ボクの巾着の中にはデジカメとタバコが入っていた
最初のシーンは田んぼの中で石田軍が泥に足を取られて四苦八苦するシーン
史実の忍城は沼地が点在する湿地帯の中にあり"攻め難く守り易い"というロケーションだったようだ
豊臣方の足軽たちは田んぼの泥の中を漕ぎながら行軍するしかなかったと思われる
実際に演じてみると草履の足がどっぷりと膝まで泥に埋まってしまい、機敏には動けない

完成後の映像ではCGを駆使し、兵隊の数は数万に増えることになっている
少ないエキストラとはいえ、監督は実写で撮る我々の演技をかなり細かく指導した
蚊除けに焚いている燻煙と火薬の硝煙が立ち込める撮影現場はその匂いといい雰囲気といい映画の世界だった
初日の激しい合戦シーンの撮影で右足をちょっと捻挫してしまった
撮影後の帰り道、自転車の樋口監督から「足大丈夫?大変だけど明日もがんばってね」と元気付けられた

 

撮影の合間にスタッフの雑談が耳に入ってきた
「とりよし行ってみた?」という会話だった
知る人ぞ知る勇払の名店「ラーメン鳥よし」のことを言っていた
撮影現場から近いため、皆気になっているようだった
ボクも前から気になっていた店なのでついでに食べに行ってきた
メニューは「ラーメン」のみ。昔なつかしい感じのごくシンプルなラーメンだった
営業時間が10:30~13:00の2時間半だけなので、昼に苫小牧近辺に居なければ食べるのは難しいかも

 

映画の後半の見所のひとつに石田三成が実際に行った水攻めシーンがある
映像はVFXによって再現されるが、このシーンが時節柄問題となり、2011年の公開が見送られた経緯がある

 

さて、撮影から2年以上が経過した今年(2013年)、一人でひっそりと映画館まで足を運び、完成作品を観て来た
大スクリーンで観た率直な感想だが、水攻めで建物が破壊されたり流されるシーンはやはり少々痛々しいものを感じてしまった
作品全体としては脚本がいいので、最初から最後まで楽しめた
CGによる映像が多いが、数万の軍勢を俯瞰する夜の映像は美しく、映画館で見る価値はあった

 

ちなみに我々エキストラは全員同じ衣装・メイクなので、自分がどこに映ってるのか全く解らない。カット割りも細かい
1日撮影して実際に使うシーンが数秒というのは映画の世界では珍しくない
2時間25分の上映が終わり、エンドロールにもしや自分の名前がクレジットされているのでは?と最後まで席を立たなかったが、そんなモノがあるワケなかった(爆)

 

今回地元エキストラへのギャラはなし
そのかわり、朝昼夕の弁当とノベルティグッズが何個か貰えた
1日の撮影が終わるのは夜7時を回っていたが、真夏のロケなので夜も暖かい
帰り道、バイクでの夜走りが最高に気持ち良かった

映画に地元エキストラを多く起用することは地元側にもメリットが多い
ロケ地を提供した苫小牧市や地元の協賛企業に多少なりとも経済効果があり、なにより地元への宣伝効果がある
ちなみにボクはこの映画を誰にも宣伝せず、上映期間が終った今になって初めてここで喋っていますが・・・
何はともあれ「のぼうの城」は封切り3日で動員40万人、興収5億超えとまずまずのスタートを切ったようなので、出演者の一人?としては安堵の気分です

コメント (2)
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