2時間ほどでスティーブの墓に到着、TVや映画で観る墓苑は日本のものとは違い全
体が平坦な景色だ。私たちは日本式で拝むと、レイたちは膝をついて洋式で拝む。
キャシーは感極まって小さな嗚咽を洩らす。
墓を前にして、もしはないが生きていたら墓石に刻まれている好きなウィンド・サーフィ
ンを楽しんでいるだろうに。
帰りは父を亡くしたボブと一緒に食事をすることになっており、彼の家で合流して、近く
のレストランに立ち寄った。昼食は直径が50センチ近くある大きなピザを5人でつつきな
がらのものだったが、レイとボブのお喋り大会のように2人で話をしていた。
内容は分からないがボブが時折『exactly(正に、その通り)』と受け答えしていたのをよく覚
えている。SF市内近くまで戻ってくると夕方のラッシュアワーが始まりかけていた。アメリカ
では面白いルールがあり金門橋では3人以上乗った車は通行料が只になり、ここは3人
以上乗っている車は特別レーンが設けられており、案外とスイスイ移動できた。市内中心
部が渋滞しているから特別レーンを過ぎると、渋滞に巻き込まれホテルまでノロノロ運転
になった。
ホテルで別れた後、私たちはホテル内のレストランに行き幕の内を注文し、昨晩に続き和
食だ。アメリカの食事は不味くはないがこれと言って美味しいものには当たらなかった。た
だ量は馬並と大量。周りを見渡すとビジネスマンが慣れない手つきで箸を使いながら、私
たちと同じ幕の内を食べており、日本食人気はアメリカで定着していた。昼間の疲れが出た
こともあり早めの就寝。ところがサンフランシスコは800万人が住む大都会、近くに消防署が
あり救急車の出動、パトカーのサイレンが一晩中、鳴っているような煩さで熟睡できる状況
ではなかった。犯罪は特定の危ない地区はもとより率そのものも日本よりずっと高いだろう。
特定の場所も低所得者の集まりで犯罪の温床のような場所、同性愛者たちが占拠したよう
な形になっている地域など私たちには理解できないものありそうだ。
だから・・・でもないだろうが繁華街にあるホテルの周辺は投げ捨てられた新聞や段ボール
箱の切れ端、たばこの吸い殻など道路に散乱しており、とても花のSFなどと歌う気分になれ
ない。そうした一角、若いお嬢さんが空き缶を前にして物乞いをしている。
アメリカンドリームで富を手に入れる人、その陰にはこうした多くの貧しい人が暮らす、何も
アメリカだけに起こることではないし、平均的な暮らしぶりを見れば、やはり世界トップクラス
だろうが、予想もしないシーンに考えさせられた。
側から見ていると裕福な国のように見えるが、大雑把な括り方をすれば光と影がはっきりと
分かれている国と言えるのではないかと思った。