ホテルまではレイが迎えに来てくれ自宅でキャシーが待っている。昨日、私たちと別れ
て帰宅する時、事件に遭遇しビデオカメラを持っていたので、それを撮影したと説明し
てくれるが『stub』という意味が分からずスペルを聞いて電子辞書で引いて、やっと詳細
が分かった。この映像をコピーしてくれ帰国後に見てみると、男が誰かを刃物で刺した
後、警官に取り押さえられ銃を突きつけられていたる映像が出てきた。交差点で信号待
ちの間に撮影したものだが迫力満点のアメリカ犯罪実写版。
自宅に着き車庫に入るとキャシーは30年来の愛車マスタングと共にスタンバイしており、
すぐにスティーブの墓参りに出かけた。マスタングはスティーブ・マックイーン主演の映画
ブリットで雄姿を披露、車に余り興味はなかったのに男心をくすぐる代物。私は助手席に
乗せて貰い市内を出ると、大きな風車が並んでいる。何かと聞くと『風力発電』だという。
市内からそんなに離れていないが、風が強く風力発電に適している小高い丘の上に風車
が延々と何Kmも並んでいる。アメリカのような大国が目指すより、エネルギー資源の少な
い日本こそ考え実践すべきことではないかと真剣にそう思い、日本はかなり遅れていると
痛感させられた。数年前、地震はないとされていたサンフランシスコは未曽有の地震に見
舞われ、高速道路が寸断されオークランドの海上鉄橋が崩れた。当時、日本ではこの地震
の状況をみて『日本では同じような地震があっても、高速道路が崩れるようなことはありえな
い』と専門家が嘯いていたが、阪神淡路大震災ではあり得ないことが、あちらこちらで発生し
た。こうしたことは災害原因の新しい定義となり『想定外』という。その修復された鉄橋を通っ
た時、レイが崩れた場所は丁度この辺りと教えてくれた。世界中に報道され日本でも何度も
流された場所だから、初めて来た場所のようには思えなかった。
途中のスーパーで墓に飾る花を買いに寄る。こちらでは墓に飾るものは腐らないから生花で
はなく造花が主流、また日本では両サイドに飾るから対で用意するが、こちらでは一式だけ
を飾る。花を買い車に戻ると30年前のマスタングが珍しいから若者たちが羨ましそうに覗きこ
んだりしていた。実はキャシーの横に座らされたのは目のいい私がナビゲーターとして適して
いたからだ。幅の広い道路をブンブンと飛ばしているが急に『義、今何マイル?』と聞くからス
ピード計を見て『80マイル』と答えながらKmに換算すると120Km以上のスピードだ。レイもキャ
シーも70過ぎの老人だから日本人の感覚からすると暴走老人ということになり、『本当に大丈
夫か?』と心配になってきた。
おまけに右側通行だから右折、左折時の感覚が慣れないから『危ない』と何度もドッキリし、は
らはらのドライブだ。