承前です。
明智探偵は二十面相との戦いに勝利します。
その謎解きを依頼主の大島氏としています。
「それは、ぼくが命じて置きかえさせたのですよ」
明智探偵は、あいかわらず落ちつきはらって答えました・
「え、あなたが? だれにそうお命じなすったのです」
大鳥氏は、意外につぐ意外に、ただもうあきれかえるばかりです。
「おたくには、つい近ごろ、やといいれたお手伝いさんがいるでしょう」
「ええ、います。あなたのご紹介でやとった千代という娘のことでしょう」・
「そうです。あの娘をちょっとここへよんでくださいませんか」
「干代に、何かご用なのですか」
「ええ、たいせつな用事があるのです。すぐ来るようにおっしゃってください」
明智探偵は、ますますみょうなことをいいだすのでした。
大鳥氏はめんくらいながら、すぐさま千代を呼びよせました。読者諸君はご記憶でしょぅ、千代というのは、たびたび奥座敷をのそいていた、あのかわいらしい怪少女なのです。
まもなく、りんごのようにあでやかなはおをした、かわいらしいおさげの少女が、座敷の入り口にあらわれました・
「ここへきてすわりなさい」
探偵は少女を自分のそばへすわらせました。そして、黄金塔、置きかえの説明をはじめるのでした。
「大鳥さん、あなたがたが、ほんものの塔を、床の下へうめようとしていらしたとき、裏の物置きに火事がおこりましたわ」
「ええ、そうですよ。よくごぞんじですわ。しかし、それがどうしたのですか」
「あの火事も、じつはぼくが、ある人に命じて、つけ火をさせたのですよ
「エッ、なんですって? あなたがつけ火を? ああ、わしは何がなんだか、さっぱりわからなくなってしまいました」
「いや、それには、ある目的があったのです。あなたがたが火事に気をとられて、この部屋をるすになっていたあいだに、すばやく黄金塔の置きかえをさせたのですよ。床下にかくしてあったのを、もとどおり床の間につみあげ、床の間のにせものを、床下へ入れておいたのです。火事場から帰ってこられたあなたがたは、まさか、あのあいだに、そんな入れかえがおこなわれたとは、思いもよらぬものですから、そのまま、にせもののほうを床下にうずめ、床の間のほんものをにせものと思いこんでしまったのです」
「へえー、なるほどねえ、あの火事は、わたしたちを、この部屋から立らさらせるトリックたったのですかい。しかし、それならそうと、ちょっとわしに言ってくださればよかったじぞありませんか。何も火事までおこさなくても、わし自身で、ほんものとにせものとを置きかえましたものを」
大鳥氏は不満そうにいうのです。
「ところが、そうできない理由があったのです。そのことはあとで説明しますよ」
「で、その塔の置きかえをやったというのは、いったいだれなのですね。まさかあなたご自身でなすったわけじゃありますまい」
「それは、このお手伝いさんがやったのです。 この人は、ぼくの助手をつとめてくれたのですよ」
「へえー、千代がですかい。こんなおとなしい女の子に、よくまあそんなことができましたねえ」
主人はあっけにとられて、かわいらしい少女の顔をながめました。
「ハハハ……、千代は少女ではありませんよ。きみ、そのかつらを取ってお目にかけなさい」
探偵が命じますと、少女はにこにこしながら、いきなり両手で頭の毛をつかんたかと思うと、それをスッポリと引きむしってしまいました。すると、その下から、ぼっちゃんがりの頭があらわれたのです。
少女とばかりに思っていたのは、そのじつ、かわいらしい少年だったのです。
「みなさん、ご紹介します。これはぼくの片腕とたのむ探偵助手の小林芳雄君です。こんどの事件が成功したのは、まったく小林君のおかげです。ほめてやってください」U
明智探偵はさもじまんらしく、秘蔵弟子の小林少年をながめて、にこやかに笑うのでした。
ああ、なんという意外でしょぅ。少年探偵団長小林芳雄君は、小娘のお手伝いさんに化けて、大鳥時計店にはいりこんでいたのです。そして、まんまと二十面相にいっぱい食わせてしまったのです。
「へえー、おどろいたねえ、きみが男の子だったなんて、うちのものはだれひとり気がつかなかったのですよ。なかなかよくはたらいてくれましたね、いい人をお世話ねがったとよろこんでいたくらいですよ。小林さん、ありがとう。ありがとう。おかげで家宝をうしなわなくてすみましたよ。明智さん。あなたは、いいお弟子を持たれて、おしあわせですねえ」
大鳥氏は、ホクホクとよろこびながら、小林君の頭をなでんばかりにして、お礼をいうのでした。
江戸川乱歩著「少年探偵団」(ポプラ社)から引用
> 「ハハハ……、千代は少女ではありませんよ。きみ、そのかつらを取ってお目にかけなさい」
> 探偵が命じますと、少女はにこにこしながら、いきなり両手で頭の毛をつかんたかと思うと、それをスッポリと引きむしってしまいました。すると、その下から、ぼっちゃ>んがりの頭があらわれたのです。
女装子のカツラを取るシーン、女装美少年シリーズの二村監督がよく使いますね。
女のように啼いた女装子が絶頂の余韻から覚めたとき、二村監督はまだ覚醒していない女装子さんに近寄り、ウィッグをとります。
するとさきほどまであれだけアンアンいっていた女の子が男の子にもどっていきます。
ここのトランスフォーメーションが女装子スキの私にはたまりません。
明智探偵は二十面相との戦いに勝利します。
その謎解きを依頼主の大島氏としています。
「それは、ぼくが命じて置きかえさせたのですよ」
明智探偵は、あいかわらず落ちつきはらって答えました・
「え、あなたが? だれにそうお命じなすったのです」
大鳥氏は、意外につぐ意外に、ただもうあきれかえるばかりです。
「おたくには、つい近ごろ、やといいれたお手伝いさんがいるでしょう」
「ええ、います。あなたのご紹介でやとった千代という娘のことでしょう」・
「そうです。あの娘をちょっとここへよんでくださいませんか」
「干代に、何かご用なのですか」
「ええ、たいせつな用事があるのです。すぐ来るようにおっしゃってください」
明智探偵は、ますますみょうなことをいいだすのでした。
大鳥氏はめんくらいながら、すぐさま千代を呼びよせました。読者諸君はご記憶でしょぅ、千代というのは、たびたび奥座敷をのそいていた、あのかわいらしい怪少女なのです。
まもなく、りんごのようにあでやかなはおをした、かわいらしいおさげの少女が、座敷の入り口にあらわれました・
「ここへきてすわりなさい」
探偵は少女を自分のそばへすわらせました。そして、黄金塔、置きかえの説明をはじめるのでした。
「大鳥さん、あなたがたが、ほんものの塔を、床の下へうめようとしていらしたとき、裏の物置きに火事がおこりましたわ」
「ええ、そうですよ。よくごぞんじですわ。しかし、それがどうしたのですか」
「あの火事も、じつはぼくが、ある人に命じて、つけ火をさせたのですよ
「エッ、なんですって? あなたがつけ火を? ああ、わしは何がなんだか、さっぱりわからなくなってしまいました」
「いや、それには、ある目的があったのです。あなたがたが火事に気をとられて、この部屋をるすになっていたあいだに、すばやく黄金塔の置きかえをさせたのですよ。床下にかくしてあったのを、もとどおり床の間につみあげ、床の間のにせものを、床下へ入れておいたのです。火事場から帰ってこられたあなたがたは、まさか、あのあいだに、そんな入れかえがおこなわれたとは、思いもよらぬものですから、そのまま、にせもののほうを床下にうずめ、床の間のほんものをにせものと思いこんでしまったのです」
「へえー、なるほどねえ、あの火事は、わたしたちを、この部屋から立らさらせるトリックたったのですかい。しかし、それならそうと、ちょっとわしに言ってくださればよかったじぞありませんか。何も火事までおこさなくても、わし自身で、ほんものとにせものとを置きかえましたものを」
大鳥氏は不満そうにいうのです。
「ところが、そうできない理由があったのです。そのことはあとで説明しますよ」
「で、その塔の置きかえをやったというのは、いったいだれなのですね。まさかあなたご自身でなすったわけじゃありますまい」
「それは、このお手伝いさんがやったのです。 この人は、ぼくの助手をつとめてくれたのですよ」
「へえー、千代がですかい。こんなおとなしい女の子に、よくまあそんなことができましたねえ」
主人はあっけにとられて、かわいらしい少女の顔をながめました。
「ハハハ……、千代は少女ではありませんよ。きみ、そのかつらを取ってお目にかけなさい」
探偵が命じますと、少女はにこにこしながら、いきなり両手で頭の毛をつかんたかと思うと、それをスッポリと引きむしってしまいました。すると、その下から、ぼっちゃんがりの頭があらわれたのです。
少女とばかりに思っていたのは、そのじつ、かわいらしい少年だったのです。
「みなさん、ご紹介します。これはぼくの片腕とたのむ探偵助手の小林芳雄君です。こんどの事件が成功したのは、まったく小林君のおかげです。ほめてやってください」U
明智探偵はさもじまんらしく、秘蔵弟子の小林少年をながめて、にこやかに笑うのでした。
ああ、なんという意外でしょぅ。少年探偵団長小林芳雄君は、小娘のお手伝いさんに化けて、大鳥時計店にはいりこんでいたのです。そして、まんまと二十面相にいっぱい食わせてしまったのです。
「へえー、おどろいたねえ、きみが男の子だったなんて、うちのものはだれひとり気がつかなかったのですよ。なかなかよくはたらいてくれましたね、いい人をお世話ねがったとよろこんでいたくらいですよ。小林さん、ありがとう。ありがとう。おかげで家宝をうしなわなくてすみましたよ。明智さん。あなたは、いいお弟子を持たれて、おしあわせですねえ」
大鳥氏は、ホクホクとよろこびながら、小林君の頭をなでんばかりにして、お礼をいうのでした。
江戸川乱歩著「少年探偵団」(ポプラ社)から引用
> 「ハハハ……、千代は少女ではありませんよ。きみ、そのかつらを取ってお目にかけなさい」
> 探偵が命じますと、少女はにこにこしながら、いきなり両手で頭の毛をつかんたかと思うと、それをスッポリと引きむしってしまいました。すると、その下から、ぼっちゃ>んがりの頭があらわれたのです。
女装子のカツラを取るシーン、女装美少年シリーズの二村監督がよく使いますね。
女のように啼いた女装子が絶頂の余韻から覚めたとき、二村監督はまだ覚醒していない女装子さんに近寄り、ウィッグをとります。
するとさきほどまであれだけアンアンいっていた女の子が男の子にもどっていきます。
ここのトランスフォーメーションが女装子スキの私にはたまりません。