女装子愛好クラブ

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女装しての京都ひとり旅②

2024年10月02日 | ★女装体験記
紘子さんは京都駅に戻ってきました。
季節は夏、京都の夏は暑いですね。

 再び、一人バスに乗り、駅へ帰ってくる。かなり度胸がついてきて、駅近くのそば屋に入る。本当は、レストランに入ったこともない初心者なのに。京都名物にしんそばを食べたいが、化粧くずれを恐れて、冷たい京風そうめんにする。店員は全くの素知らぬ顔。どうして大丈夫なのかしらと、鏡の中の顔をみつめる。
自分にはすぐわかる男の笑顔がみえる。若くない、美人でないのがよいのかなと、やや寂しい納得をする。三千院にゆかなかった分、時間があまる。仕方がない。荷物をロッカーから出して、宿泊予約してある新ミヤコホテルヘゆこう。

 チェックインの時間まで、ロビーの喫茶室に。大きくて立派なホテル。外は暑いが、ここは別天地の涼しさ。何故、こんなに暑い梅雨時の京都を女装して訪れる気になったのか。バカみたい。とにかく女性で通すしかない。ホテルの洗面室は、きれいで鏡も広い。化粧をチェックして、汗の臭い消しスプレーを使いに使う。
 一時。更に十分待ってから、フロントヘ。「……絃子様ですね。ありがとうございます。御予約承っております。……」
 と流れるようなサービス。心配していた女性としてのチェックインは、あっけなく解決。部屋はシングルだけれど、大きなソファもあって普通の二倍の広さはある。その上、一泊八○○○円は、東京とくらべると信じられない程、安い。空調もよく効く。思わずベッドの上に大の宇。

 ああ疲れた,昨攻からめ繋張感は大変なもの。気楽な姿に戻りたくなるが、下着一枚男物は持ってこなかった。気おくれしても逃げ場のないように、断念したのだけれど、やっぱり苦しい。
 スリップー枚で、鏡の前に立つ。「よくやるね、おまえは」と自分にむかって話しかける。顔もダメ、スタイルも悪い、若さもない。おまえは、一体何に狂っているのかい。ま、話せば長い。いいじゃないか。あと2日、頑張りましょう。
気をとり直して、シャワーを念入りに浴びる。それから、本格的に外出の化粧をはじめる。化粧には一種の魔力がある。自己流ながら、変貌してゆく過程にひきずりこまれる。女性の気持がわかる一瞬。

 その時、電話が入る。偶然知り合った京都の男性(Oさんという)から。これから、鞍馬山ヘドライブにゆこうという。ドキッとするが、OKしてしまう。不安なくせして、どうしてこう度胸がよいのだ。えーい、女の子。やるときはやるのよ。
 でも本当はドキドキがはじまる。何を着てゆこうかしら。
半袖のスーツに黒のハイヒール。ポリエステルの軽いスカートのすそを、くるくる廻してみる。何かの映画でみたような記憶がある。男性とのデートは、矢張りはじめて。妙に興奮するのだ。でもなかなかやってこない。一時間ちかくも、そわそわしながら待つ。待つ。うーん、待たせることにこれ程心理的効果があるとは、知らなかった。

 あらためてみるOさんは、背の高いなかなかのハンサム。彼は私の正体を知っているにも拘らず、ソフトな女性扱いは変わらない。かなり、女性の敵みたい。
 ダブルの洋服で、その上ベンツを運転してやってきた。なにか、あやしいな。でも、どういうわけか、話をしているうちに、こちらの方がわがままな女の子に変っていってしまう。こら、絃子。しっかり者が売り者のおまえにしては、おかしいじゃないか。

 車は、祭でわいている街中を巧みにさけて、鞍馬山を目ざす。
日中の暑さが落ちついてきて、山中は冷気さえ感ぜられる。あちこち走って鞍馬寺の山門に歩を進めた時は、もうほの暗くなっていた。
 山門から中に入ると、石段を登りながら、大声で声明を唱えている男性に出あう。ろうろうと響き渡る男声は素晴らしく心に沁みた。杉木立の間からわずかにダークブルーに変わりつつある空がみえる。夏には、写経の会が一般の人に開放されて行なわれる旨の表示があった。宗教が、 いや仏教が一般の人に密着していることを目にするのは、とても快い。さすが京都なのかしら。下りの階段に、ヒールをひっかけてよろけてしまう。と、腕が延びてきて、しっかりエスコートされる。

 今は体温で暖かくなっている人工乳房がソフトにいつまでも圧迫されると、妙に 頭がしびれてきた。男性の腕にすがれるというのは、女の良さだナと思う。胸がズキンとする。
 それから、貴船神社までは上の空の状態でよく覚えていない。貴船神社は、まっ暗になっていた。わずかな灯りで、それとわかるかえでの木の下で腕を組むと、とても幸せな気分になる。

 一寸待て。うますぎるではないか。紘子はプレイ派ではない筈。いいのか絃子。
 目をさませ。辛うじて帰りの車中で自分をとり戻す。それにしても、○さん、貴方はうますぎる。プロではないかと思ったら、恐くなって、目がさめてきた。ホテルまで送ってもらって、別れたけれど最後まで紳士を捨てなかった。新米女装者は自分にも恐くなった。心理的には、完全に女性になってしまうことがあるのだナー本当に。こわい。

 本当に恐いのは明日の夜も会っていただけませんか、いいそうになった自分の心だ。男性に甘えられるということは、快くあまりに魅惑的なこと。化粧をおとし、シャワーをしっかり浴びても、顔が男に戻らない。私は大胆すぎる。

 三日目。朝早くから目がさめる,昨夜は結局、祇園祭にはゆかなかった。今日 こそ出かけよう。
ホテルで朝食をとる。その為にも、又々シャワーを浴びて化粧しなくては。
 昨夜の興奮がまだ尾をひいている。ボーイに導かれた席は、白人の外国人夫妻の隣。不思議なことに、英語で話す方が男女を意識しないですむ。しばらく京都や鞍馬の話のあとで、彼らは観光に出かけてゆく。
 ボーイとウェイトレスのサービスが、とてもよい。何度も食後のコーヒーを注ぎにきてくれる。平然と彼らのサービスを受け入れている自分に、自分で驚いている。
 半分、女性を意識しないで女性をしているのだから
             新潟 紘子
 出所 『くいーん』1992年4月号


まだ紘子さんの京都の旅は続きますが、引用はこのくらいにしておきますね。
私も仕事では何度も京都に行きましたが、駅前のビジネスホテルとクライアント事業所の往復で観光は全くしませんでした。
紘子さんの旅行記を読むと改めて観光しておけばよかったなと思います。


紘子さん

コメント (2)
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女装しての京都ひとり旅①

2024年10月01日 | ★女装体験記
『そうだ、京都、行こう』
このコピーはJR東海が1993年から展開している京都観光促進キャンペーンのキャッチコピーです。
山手線の駅でみると、やっぱり行きたくなりますね。
コピーライターは博報堂の杉山恒太郎さんです。

新潟に住む女装子・紘子さんも京都に行きたくなりました。
それも女の子として....。
『くいーん』1992年4月号に投稿された紘子さんの京都旅行記をご紹介しま
6頁の大作ですが、今回は前半部分を掲載しますね。
おや、掲載日からいくと「そうだ、京都、行こう」キャンペーンの前ですね。

『3泊4日の京都ひとり旅』 (新潟  紘子)
 この道半年というのに、3泊4日の女一人旅を実行してしまいました。女装外出は地方に住む者には誰もが望んでいることですが、未熟であるが故の大胆さの結果をレポートしてみましょう。参考になればうれしいと思います。
 さて、3泊4日といっても、そのうち2日は夜行長距峻バスを利用していますから実際は1泊2日に近いです。初めての完全女装旅行ですから、最初から昼の汽車利用はとても気持ちの負担が大きいですし、夜遅く出発して早朝に帰る日程ですとうまくすると休暇をとらないですむ利点があります。

 第一日。夜10時30分出発にあわせて、夕方から準備をはじめる。免許証、キャッシュカードなど身分を証明するものは一切残してゆく。メガネ以外の男物は何一つ持参しないことにした。ともすると気が弱くなって男に戻りたくなることを拒否する為。

夜8時、念入りに化粧する。夜だからという気もするが、化粧の手技きをするほどベテランではない。黒地に白の水玉模様の袖なしワンピースに、白地のボレロを重ね、黒の夏物オシャレ麦わら帽子、白のパンプスと、中年の旅行好きオバサンをイメージする。15分前に出発点へ。次第にどきどきしてくる。大丈夫だろうか。同じバスの利用者が集まるにつれ、口の中が渇き、視線がどうしても下を向いてしまう。夜だというのに、ついサングラスをかけてしまう。

搭乗券のチェックが始まる。案ずるより産むが易し。荷物をあずけ、座席へ。29人乗りの大型バスは満席。座席はリクライニングで、隣とは通路をはさんで独立している。隣の女性は、早々にねむりはじめる。誰も周囲の人を気にすることはない。安堵のため息。暗い窓ガラスに映る自分にむかって、「さあ、肩のカを抜いて。もう後戻りできないのよ。貴女は紘子なんだからね」と、声をかける。雨粒が重なって、窓ガラス、紘子、顔がにじんでくる。

第二日。まんじりともせぬうちに、早朝、京都駅につく。
そう、祇園祭、京都、これが目的。
午前6時10分。まだ殆ど人のいない駅のトイレで着がえてから、お化粧を直す。
雨はあがって、暑くなりそうな空模様。午後一時のホテルのチェックインまでの間、大原の寂光院と三千院にゆくのが、午前中の予定。コインロッカーに荷物を入れて、サァー、紘子、レッゴー。

上下の白づくしの夏物に、黒の帽子とサングラス。ハンドバッグにでカメラだけの軽装で、大原行きの始発バスを待つ。どこもお店は開いていない。用意したサンドイッチを口にする。意外なことに落ちついている。ふーん。結構やるじゃない。

定期バスの一番前に席をとる。見晴らしは良い上、地元の人達の乗り降りを見るだけでも楽しい。途中、並走するトラックの運転手にじっとみつめられるが、ニッコリすると安心したような顔となる。

三千院には、今迄二回来たことがある。観光客のいない早朝、静かな三千院の木々の間にふりそそぐ陽光は金色にみえて、心をゆさぶる。今回は、例の平清盛の娘の巡礼門院のついのすみかとなった寂光院が主目的。

終点、大原まで約一時間。おだやかな山村の風景が広がる。寂光院はバス停から歩いて十五分。バス通りを中心に三千院とは反対側の山懐に抱かれるようにあった。小さいけれど、素晴らしい建物と庭。石段を登りつめたところの山門から、山の傾斜にあわせて庭がある。寂光院からみると、三千院ですら豪華にみえてしまう。歴代の尼憎たちの信仰した地蔵尊のわびしさが尊くみえる。女性として参拝すると、昔の人々の心が伝わってくるよう。

 ところで、始発で来たというのに私の前に既に観光客がいる。自家用車という  手があったのを忘れていた。3組の老夫婦と京都の青年と私。この八人を本堂に  入れて、寺の方が一五分程、話をしてくださる。しめ切った暗い本堂のタタミに正座しての快い緊張感。開放されて外に出ると、女一人の私は目立つのか、色々な方が話しかけてくる。困る。
 「お一人ですか」
 「ええ」
 「どちらからですか」
 「新潟」
 「大原ははじめてですか」
 「いいえ」
 「前にも来られたことがあるのね」
 「ええ」
 「寂光院も?」
 「いいえ」
 イエスとノーの笞を続けているうちに、段々腹がすわってくる。
 「鞍馬へ行ったことがありますか」
  一組の老夫婦の案内をしているという男性が声をかけてくる。
 「いいえ、でも是非行ってみたいと思っています」
冷汗が背中を流れる。もしかして、わかっていて声をかけているのではないかしら。逃げ場もなく、グループのようになって石段をおりる。三千院への道で老夫婦に別れを告げ、バス停に戻る。三千院には行きそびれてしまった。





紘子さん

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