ほとほと通信

89歳の母と二人暮らしの61歳男性の日記。老人ホームでケアマネジャーをしています。

やり切れなさ

2016-07-27 | ほとほと日記
今日は仕事はお休みでした。


朝から戦後最悪の殺人事件のニュースが目に入り、憂鬱になりました。
救急搬送され、命が助かった入所者の方々のコメントを読み、20年前に職員として接していた知的障害者の顔が頭に浮かびました。
私が働いていたのは、自宅から通所する障害者が働く「通所授産施設」と言うものでした。
一般に入所施設は通所施設より障害程度が重い…と20年前は言われていましたが、今は家庭環境の変化もあるでしょうから、一概には言えないかも知れません。
いずれにせよ言えるのは、障害は重くても喜怒哀楽の情緒面は失ってない…と言うこと。
どれほど怖かったでしょうか。


障害者施設、老人ホームと働いてきて、職員にとってもっとも大事な資質は?と問われれば、ためらわず「本質的な優しさ」と答えます。
これは「どんな嫌なことやツラいことがあっても、対象者に絶対に危害を加えない」と言う資質です。
これはほとんど生まれ持っての資質ではないか…と考えています。
今回の犯人はあまりに異常で論外ですが、ケアスタッフに必要な基本的な優しさに欠けている職員が、けっこう現場に紛れ込んでいます。
人出不足が常態化している業界なので、どうしても就職の際の敷居が低くなってしまうのです。

ただ、今年初めの老人ホームの事件でもあった「労働条件の悪さが犯行の引き金になった」と言うような議論を読むと「冗談じゃない!」と思います。
まともな職員は、どんな劣悪な労働環境でも相手を傷つけたりしません。


歪んだ自己愛。異常な承認欲求の強さ。黙々と働くことへの耐性の低さ。
そういった断片的な犯人情報と、SNSと危険ドラッグと言う今どきの因子を掛け合わせて浮かびあってくるのは「他人事ではない」と言うやり切れない感覚です。

しばらく後を引くだろうな…と思います。