ほとほと通信

89歳の母と二人暮らしの61歳男性の日記。老人ホームでケアマネジャーをしています。

我が魂のベスト5

2013-06-04 | 映画
今日は仕事が休みで、いつものように午後から映画を観た。

毎月一回、友人二人と食事会をしているが、先月の食事会で「今まで観た映画のベスト10は何?」というような話になった。
私は映画に入れあげていた時期がかなり長いので、今までに観た本数もそうとうなものになると思う。
その中から10本だけ選ぶのは無理な作業だ。
でも、「魂が震撼した作品」なら、恐らくもう決まっている。
それはほとんど、十代のときに観た作品になってしまうからだ。


『道』1954年イタリア映画
これを初めて観たのは中二に上がるときの春休みだったと思う。
NHK教育テレビの吹き替え版で、ジュリエッタ・マシーナを市原悦子、アンソニー・クインを小松方正、リチャード・ベイスハートを愛川欽也がやったが、この吹き替えが良かったことも私にとっては運命的だったかもしれない。
それまで『荒野の七人』『大脱走』のような活劇が好きだった私にとって、初めて触れたような質感の映画だった。
途方もなく哀しく切ないのに、なぜか魂の救いがある…。
その後、そういった傾向の映画を求めていくことになる。

『スケアクロウ』1973年アメリカ映画
これも中二の頃、吉祥寺ムサシノという二番館で観た。
そのころはロードショー公開を終えたばかりの作品を二本立てで上映する名画座が都内のあちこちにあった。
今考えると、とても豊かな時代だったとも言える。
初見のときはアル・パシーノに肩入れし、数年後に観たときはジーン・ハックマンがカッコイイと思った。
『明日に向かって撃て』『真夜中のカウボーイ』などアメリカンニューシネマには男同士の道行き物が多いが、その中でも哀切という点ではこの作品が抜けており、観た後、私はしばらく興奮していた。

『タクシードライバー』1976年アメリカ映画
これは高二の最後か高三の初め頃、千葉駅近くの二番館で観た。併映が『追憶』だった。
あまり予備知識もなく観た作品だったが、ロバート・デ・ニーロ演ずるトラビスに全く肩入れしてしまい、『追憶』を挟んで二回(つまり続けて三本)観てしまったのを覚えている。
それにしても、もっとも青春を謳歌してよい17、8歳の頃に、孤独感から妄想に囚われ大統領候補者をテロろうというタクシードライバーに肩入れしてしまうあたり、私の青春の質が偲ばれる…。

『大人は判ってくれない』1959年フランス映画
トリフォーのこの長編デビュー作を観たのがいつだったか良く覚えていないが、恐らく高校三年くらいだったと思う。
場所は京橋のフィルムセンターだったように思うが、もしかすると名画座かもしれない。
その頃の私はかなり熱心に国内外の古い名画を観ていた。
その中にはあまり面白くないものもけっこうあったが、半ば義務のようにせっせと観ていた。
ところがこの作品は、その映像感覚の瑞々しさに驚かされた。
その後しばらく「映画青年」を続けていくキッカケの作品のひとつだったかも知れない。

『ミツバチのささやき』1973年スペイン映画
これは飯田橋佳作座という当時都内屈指の名画座で観た。大学を出て印刷会社に勤めていた頃だ。
併映が『風の谷のナウシカ』で、どちらの作品も私の魂を震わせた。
その頃の私は初めての会社勤めが苦しくて気持ちがクサクサしていた。
このままこの会社でやっていけるのか?といつも煩悶していた。
そんな私にとって、『ナウシカ』と『ミツバチのささやき』の組み合わせは、全く持って魅惑的な「萌え」の合わせ技だった。


こんな風に書いてきたけれど、これは決して「私のおすすめベスト5」というのではないのである。
黒澤明は外すわけにはいかないし、『ガープの世界』や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』はどうか、小学校3年のときの『サウンド・オブ・ミュージック』の大感動は?…。
まだまだ好きな映画はたくさんある。

でも「芯から震えた」という点では、やはりこれらの作品が上がる気がする。
若く感受性が強い頃に、運命的に巡り合った映画だ、
それは、人との出会いに似ているのかもしれない。