






























須賀敦子さんのエッセイ、『ミラノ 霧の風景』を読んでいます。1991年「講談社エッセイ賞」と「女流文学賞」の受賞作品で13年間を過ごしたミラノと、“いまは霧の向こうの世界に行った人々”への溢れる想いを、類いまれな美しい文章で蘇らせています。集められたエッセイ12編は、敗戦後まもないイタリア人の生活やミラノのコルシア書店に関わる人々を懐かしく偲び、其処此処に亡き夫ペッピーノや彼の友人・家族たちが登場して、まるで古い映画か小説のようなセピア色に彩られたシーンが愛おしく心に迫ってきました。
先に読んだ『ヴェネツィアの宿』に続く2冊目の本でしたが、よくいう“珠玉のような…”という言葉は、須賀さんの文章にこそ相応しいのではないかと思います。その当時の人々の息遣いや匂いまで伝わってくるような、繊細な文章に、もっともっと著者を知りたくなりました。遅まきながら此のような良質な本と出会えたことに心から感謝しています。