ミツバチは蜂群毎に性質が異なります。蜂蜜を集める力、女王蜂の産卵力、攻撃性、耐病性
などが異なるようです。養蜂家の立場としては、おとなしくて、繁殖力が強く、よく蜂蜜を集め、
病気にも強いなどの蜂群がありがたいことになります。
数群しかいない我が家の蜂場でも、やはり蜂群毎に皆特徴が異なります。そんな中、昨年
から比較的優良な蜂群が出現しましたので、今年はこの蜂群の系統を増やすことにしました。
従来は、人工分割といって、対象の蜂群から幼虫や蛹のいる巣板を数枚取り出し、それを別
の巣箱に収めて、そこで新たな女王蜂を誕生させるという方法を取っていました。しかし、この
方法では対象となる蜂群から幼虫を取り上げるため、負担が大きく、また巣箱の数も増えてし
まい、限られた狭い蜂場で飼育している我が家としては、これ以上巣箱を増やすことは出来な
いので、移虫により女王蜂を育成する方法にチャレンジすることにしました。
使ったのは、上の写真のような「蜂児移虫器」という市販されている器具です。この中に女王
蜂を収容し、産卵をさせ、その卵を利用して新女王蜂を作成するというものです。穴の開いた
黄色いプレートは「仮巣」というものです。
これは「卵受け」というものです。このお椀の底のような部分に産卵させます。
この「卵受け」を 「仮巣」の裏側から穴に差し込んでいきます。
これが「卵受け」を差し込んだ「仮巣」の表側です。これに一番上の写真のようにスリットの
入った蓋をします。このスリットは、女王蜂は出られませんが、働き蜂は出入り出来る間隔
に仕上げられており、中に入れた女王蜂のお世話はそれらの働き蜂が行います。
蜂児移虫器はこのように、巣板と巣板の間につり下げます。今回は、対象となる蜂群の女
王蜂を蜂児移虫器に移し、同じ蜂群の 継箱内に設置しました。巣箱と継箱の間には隔王
板を挿入しておきました。
蜂児移虫器設置後、5日目に「卵受け」への産卵を確認した上で、「卵受け」を取り外し、
「王碗」というキャップを「卵受け」に取り付け、「王乳枠」という枠にはめ込み、巣箱に入
れました。同時に「蜂児移虫器」から女王蜂を開放し、巣箱に戻しました。
「王乳枠」は2枚準備し、予め無王にしておいた蜂群に挿入し、それらの蜂群に女王蜂
を養成させました。
「王乳枠」挿入後6日目の写真です。王台がいくつか出来ていました。その後「王乳枠」挿
入後10日目に王台の選別を行い、形の良い大きな王台2個を残し、他を潰しました。なお、
無王群が作ったこの蜂群由来の王台も全て潰しました。
「王乳枠」挿入後16日目の王台です。右手前の王台の底が綺麗に穴が開いていますので、
この王台から女王蜂が出たと思われます。その左隣の王台は王台の横側が壊されたよう
に見えます。これは恐らく先に出房した女王蜂が壊したものだと思われます。
写真中央に移っているのが、新しく誕生した女王蜂です。まだ未交尾ですが、数日後には
交尾飛行に出かけ、首尾良く交尾が出来て帰還出来れば1週間から10日後位から産卵が
始まると思います。
始めて「蜂児移虫器」を用いた、新女王蜂の育成にチャレンジしましたが、これで産卵が
始まれば成功ということになります。無事育って欲しいものです。
自宅近くの公園に2本のキリの木が植わっていますが、今まで花の咲いた状態を見た記憶
がありませんでした。しかし、今年始めて花を付けているのに気付きました。と、同時に花の
周りを沢山のミツバチが飛び交っているのも見ることが出来ました。調べて見ると、フジと並
びこの時期の重要な蜜源植物だということが判りました。
花蜜を吸うミツバチの写真を取りたかったのですが、花の位置が高くて無理でした。
キリの話題からは外れますが、昨日1匹のミツバチが3匹のツバメを追い回しているのを
目撃しました。ツバメは昆虫(害虫)を補食する益鳥とされていますが、養蜂家はあまり
歓迎していません。それは、結婚飛行に出かける新女王蜂なども襲われる可能性があり、
厄介な存在だからです。しかし、そのツバメが昨日は小さな昆虫に追いかけられているの
が目に入りました。よく見るとミツバチが執拗に追いかけているのです。蜂場の近くだった
ので、縄張り意識を持ってツバメを撃退していたのでしょうか。珍しい光景でした。
五月晴れの昨日午前11時頃、我が家のミツバチの一群から分封群が飛び出してしまいまし
た。多数のミツバチが乱舞し、雲のようになってしまいました。蜂場は住宅地内ですから、分
封群を飛び出させると近所迷惑となりますので、可能な限り分封はさせないよう注意して飼
育しています。しかし、数日前の内検でその兆候を見逃してしまったようです。
分封を防ぐには、女王蜂が分封群と一緒に飛び出せないよう羽根を切っておくのが良いと
されており、そうすると巣箱から飛び出した分封群は、仕方無く引き返してくるといいますが、
昨日はまさにその通りになりました。
これが戻ってきた分封群の様子です。わかりにくいですが、みんな巣門に向かって歩いて
います。やはり女王蜂の羽根を切っておくのは有効であることを経験しました。女王蜂の
羽根を切っているところはこちらです。 この後、この蜂群に大きな王台が出来ているのを
見つけましたので、女王蜂の更新処置を施しました。
「人工キンリョウヘン香」の実証実験に参加してみました。人工キンリョウヘン香は、日本在
来種みつばちの会から入手しましたが、製品化したのは京都学園大学の研究グループだ
そうです。日本ミツバチが好むキンリョウヘンの花の香りを合成し、すぐに蒸発しないよう徐
放処理をしているようで、一ヶ月半程度は有効だそうです。
上の写真は、待ち箱の巣門上部に取り付けた状態です。この場所は、かなり以前豚舎とし
て使われていた場所だそうですが、昨年日本ミツバチの営巣が見つかった場所でもあり、
ミツバチが嫌う臭いは消えている場所と思われます。
人工キンリョウヘン香をセットした待ち箱から20m程度離れた同様の豚舎跡に、比較のため
に実際に花を咲かせているキンリョウヘンの鉢をセットした待ち箱を置きました。
これが、実験に用いたキンリョウヘンです。昨日から咲き始めたものです。さて、どちらの
待ち箱に日本ミツバチは入ってくれるのか楽しみです。
ミツバチの繁殖の時期がやってきました。ミツバチは新女王蜂が誕生する直前に「分封」
という巣別れ現象を起こします。「分封」が起こると、働き蜂の半数と一緒に女王蜂が外に
飛び出し、新しい住処に移ります。「分封」が起きると半数のミツバチが失われ、養蜂家と
しては損失となりますし、何よりもご近所迷惑となります。そのため、旧女王蜂が飛び出し
てしまわないよう、かわいそうですが女王蜂の羽根を切っておくと分封を防げると言われ
ています。
この作業はアマチュア養蜂家としては、おそるおそるの作業です。それは、下手に女王蜂
の腹を押してしまったりすると、産卵しなくなるためです。そのため、作業は慎重に且つ手
際よくやらなければなりません。私は、右手の親指と人差し指で女王蜂の羽根をつまみ、
捕まえた女王蜂を左手の親指にとまらせながら、左手の人差し指で女王蜂の胴を優しく
挟み込み、右手に持ったハサミで切ります。
女王蜂の胴は滑りやすいので、優しく固定するのが少し難しいですが、お腹は絶対に触ら
ないようにします。この状態で片方の羽根の半分程度を、小さなハサミで切り取ります。無
事切り取ったら、そっと巣箱に返してあげます。これで、ひとまず分封のリスクは小さくなり
ました。でも羽根を切るのは少しつらいですね。
柴犬の「小太郎」の水入れに水を飲みに来るミツバチが、時々溺れてしまいます。その都度
見つけては、以前紹介したように 掬い上げて、手のひらのぬくもりで蘇生させています。あ
る時、一体どの巣箱のミツバチがここに水を飲みに来るのかを調べて見ようと思い、蘇生さ
せたミツバチを蜂場内で手のひらから自力で飛び立たせ、戻っていく巣箱のチェックをする
ようにしました。
写真のバックに3箱の巣箱(巣箱には越冬用のビーカバーを被せています)が映っていま
すが、蘇生したミツバチは迷わず、それぞれの巣箱に一直線で帰って行きます。この蜂場
では4群を飼育していますが、そのうち3群から「小太郎」の水入れに水を飲みに来ている
ことが判りました。ちょっと面白い実験になりました。
昨年の秋の終わり頃から、我が家の柴犬「小太郎」のステンレス製の水入れに、ミツバチが
水を飲みに来るようになりました。暖かい昼間にはこの時期でもやって来て、水を飲んでい
ます。庭には、他にも水場を作っているのですが、何故だか小太郎の水入れがお気に入り
のようです。
今日の夕方、小太郎を散歩させて帰ってくると、3匹のミツバチが小太郎の水入れの中で
浮かんでいました。いつものように手ですくいあげ、しばらく手のひらに乗せていると、ゴソ
ゴソと動き出し始めました。一度に3匹を同時にすくい上げたのは始めてだったので、写真
に撮ってみました。
溺死したのではないかと思われるミツバチも手のひらに数分間載せて暖めてあげると、私
の経験上は100%蘇生します。そして、いつもは日の当たる場所にそっと置いておくと、い
つの間にか居なくなっています。いつも発見するのが早いから助けられるのだと思います
が、命が助かったのが判るとホッとします。
今朝も暖かく、水入れの様子はこんな感じです。この撮影をしている時も丁度1匹水に落ち
ました。小太郎はこんな状態でもこの水入れから水を飲みます。きっと過去に痛い目にあっ
たのだろうと思われますが、共存してくれて安心です。
昨日の朝は、蜂場の寒暖計が-2℃を示し寒い朝でした。しかし、その後お昼過ぎには+17℃
まで気温が上がり、ミツバチ達も巣箱から元気に出入りをしていました。しかし、その中の1群
の巣箱の前には、沢山のミツバチが死んでいました。
灰色の物体は、巣箱に被せている保温カバーです。この中に巣箱が入っています。カバー
の前に転がっているこれらの死骸は朝にはありませんでした。何故急に死んだのか。巣箱
の中で何かが起こっているのか。ちょっと気になりました。
死骸を調べて見ると、大半のミツバチはこの写真のように舌を出した状態で死んでいます。
越冬中のミツバチが舌を出して死んでいれば、貯蜜切れで餓死した証拠だと教わった記憶
があります。他の巣箱の前でも数匹のミツバチが死んでいましたので、確認しましたが、舌
は出ていません。どうもこの巣箱のミツバチだけが舌を出して死んでいるようでした。
気温が+17℃と比較的高かったため、思い切って巣箱の中の貯蜜状態を確認することしま
した。ミツバチは中央付近に多く、周辺には少なかったので恐らく蜂球を作っていたのだと
思います。しかし、一番端の巣板にもミツバチが付いていましたので、それ程数が激減して
いるという感じではありませんでした。
巣箱の一番端の巣板の状態です。穴の空いた部分はミツバチが貯めていた蜂蜜を食べた
跡で、穴の開いていない部分は蜂蜜が貯蔵されている部分です。まだ十分に蜂蜜があるこ
とが確認出来ました。そのため、そのまま巣箱の蓋を閉めることにしました。
しかし、舌を出して死んでいた原因は不明なままです。その後、何故だろうと考えていて、ふ
っと蜂球の中心部付近の貯蜜が無くなっているのではないだろうかとの思いに至りました。
正解かどうか判りませんが、再び同じような現象が起こるのであれば、暖かい日に再び巣
箱を開けて、中央部分の貯蜜も確認し、場合によっては貯蜜枠の場所替えをしてみようと
思います。冬も何かと気を揉ませてくれるミツバチです。