気ままにかしまライフ

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イブキジャコウソウが西洋ミツバチに寄生するミツバチヘギイタダニ駆除に効果?

2020年08月20日 | 日記

イブキジャコウソウは、佐々木正巳著「蜂からみた花の世界」で、日本の山地から高山帯に自生し、タイムに近い仲間と紹介されている。草姿はクリーピングタイムに似ている。このタイムはハーブの一種で優れた蜜源植物としても知られているばかりか、その精油の主成分であるチモールは、ミツバチヘギイタダニ駆除剤に使われており(例えばアピライフバー等)、今年発売が開始された寄生ダニ駆除剤「チモバール」の主成分もチモールとされている。因みにチモバールのパンフレットには、チモバールは「タチジャコウソウやタイムに含まれる植物オイル成分由来の化合物」と表記されている。

 栽培しているイブキジャコウソウ (恐らく園芸種)

今回イブキジャコウソウにミツバチヘギイタダニの駆除効果があることを確認したのは、ダニ駆除剤アピスタンで駆除出来ずミツバチヘギイタダニが広がってしまった蜂群(8枚群)。恐らく寄生していたミツバチヘギイタダニがアピスタン耐性を有していたものと思われる。

この問題蜂群から入れていたアピスタンを抜き取り、それに代わりにもう1種類のダニ駆除剤アピバール2枚を挿入すると同時にイブキジャコウソウを巣板上部に置いた。その際のイブキジャコウソウの量は計量しておらず、両手にふっくらと乗る程度の量と表現せざるを得ない。

イブキジャコウソウを入れる判断に至った経緯は次の通り。手元にあるもので早急に広がったミツバチヘギイタダニを駆除するには、まずアピバールの利用が考えられる。しかし、アピバールの投与時期は春秋が推奨されており、夏場の使用を薦めていない。そのため、この時期投与しても十分に薬効が発揮されるかの疑問が残った。そこで考えられる手法がIPM(Integrated Pest Management)技術である。つまり非農薬系駆除剤とアピバールの併用で薬効を高めるという手法である。そのため、まず非農薬系駆除剤としてチモバールの投与を考えた。しかし、チモバールは気温15℃~30℃でないと使えず、毎日のように30℃を超えるこの夏場には使えない。そこで身近で栽培していたチモール成分を含んでいるイブキジャコウソウを利用してみようということになった(イブキジャコウソウ入手の経緯)。

 

処置後4時間経過した時点で、下の写真ように巣箱前に置いている滑走路に多数のミツバチヘギイタダニが出ているのが確認出来た。これらは、ミツバチが運び出したのか、それとも自ら外に出てきたのか定かではない。ほとんどのミツバチヘギイタダニは動いていないが、数匹は動いていた。なお、滑走路とは巣箱の巣門から地面までの高低差を埋めるために渡した板を滑走路と称する。

 処置4時間後

この滑走路上のミツバチヘギイタダニを全て除去した上で再び設置し、その5時間後に観察した際の様子を下の写真に示す。再び多数のミツバチヘギイタダニが観察された。これらを全て除去し、滑走路を設置し直し翌朝観察したところ、滑走路上で数匹のミツバチヘギイタダニが観察された。しかし、その後滑走路に出ているミツバチヘギイタダニは観察できなかった。

 処置4時間後のダニを払った後5時間後

アピバールとイブキジャコウソウとを投与してから5日後に内検を行い、女王蜂も産卵も確認出来たので、短期的にはミツバチへの影響は無いように思われた。なお、この内検の際、ミツバチヘギイタダニが多数寄生している有蓋蜂児枠を全て抜き出し破棄し、幼虫枠と蜜枠4枚群として整理し、アピバール(今まで垂下していたもの)と新しいイブキジャコウソウを前回と同じ程度入れ、給餌を行った。この時、(1)最初に入れたイブキジャコウソウの香りはほとんど無いこと、(2)巣箱の底にはミツバチヘギイタダニの死骸が10匹程度確認出来、中には数匹動いているものも認められたことなどが判った。余談だが、その動いている1匹のダニの上をミツバチが通り過ぎた後にその個体の姿がなく、ミツバチに乗り移ったものと思われる珍しい場面を目撃した。

これらの事実から(1)イブキジャコウソウがミツバチヘギイタダニ駆除にある程度の効果を有すること、(2)その効果の持続性は短期間であろうこと、(3)ミツバチから脱落したミツバチヘギイタダニをトラップするための巣箱底への粘着剤の配置で効果が高まる可能性があること、(4)短期的にはミツバチへの影響は認められないだろうことなどが判った。しかし、このダニ駆除効果がアピバールとイブキジャコウソウの相乗効果だったのか、イブキジャコウソウ単独でもダニ駆除効果があるのか、ミツバチの幼虫に与える影響の程度などは今後の課題と思われる。また効果の持続性についてもさらなる解明が必要と考えられる。

次に、今後のイブキジャコウソウに関する展開の可能性について考えてみる。イブキジャコウソウは2014年に入手して以来蜜源植物として栽培しているが、株分けや挿し木で簡単に増やすことが出来、花にはミツバチが沢山集まってくることを観察している。花は5月頃から7月頃に咲くが、夏場に蒸れて葉が枯れることがあるため、花が終わった頃に刈り込む必要ある。この花が終わった時期が丁度ミツバチヘギイタダニがミツバチの巣箱の中で大量に増殖し始める時期と重なるため、刈り込んだイブキジャコウソウの有効利用でダニ駆除が出来ることになる。

また、ニホンミツバチで近年問題となっているアカリンダニ駆除にはミツバチヘギイタダニ駆除剤が有効と養蜂技術指導書にも記載されている。このことから、イブキジャコウソウでニホンミツバチに寄生したアカリンダニ駆除にも期待したいところである。

養蜂場の周辺でイブキジャコウソウを栽培し、ミツバチに花蜜を提供してもらい、花の終わったイブキジャコウソウを栽培管理の一環として刈り取り、それを巣箱に入れてミツバチヘギイタダニやアカリンダニ駆除に利用するという環境が整うことで優しい養蜂が出来るのではないかと夢見ている。

たった一度しか確認出来ていない状況のため、イブキジャコウソウでミツバチヘギイタダニが確実に駆除出来るとは断定し難い現状ですが、今後趣味の養蜂家などでお役に立てればと思い早々と公開することにしました。多くの方々に試して頂ければ幸いです。


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