目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

紅の豚 ★★★★★

2005-04-22 23:43:33 | ★★★★★
 1920年代のアドリア海を舞台に、大空をこよなく愛する豚の姿をした一人の賞金稼ぎの活躍を描いた宮崎駿原作、脚本、監督で贈る一大航空活劇。
 いやー、とっても好きですね。子ども向きの映画が最近多い中でこの「紅の豚」は非常にオトナ向けの出来です。今日地上波でやっていたので見ました。以前から見ようとはおもっていたのですがいかんせん何度も途中から見てばかりで中々フルサイズで見る機会に恵まれませんでした。今日は最初からしっかり見れました。子どもの頃からジブリは欠かさず見ていましたが、この作品はとっつきにくいイメージでした。主人公は豚の格好をしたオッサンですし、少年少女が主人公の冒険活劇ばかりに目がいってました。「天空の城ラピュタ」だったり、「魔女の宅急便」だったり、「風の谷のナウシカ」だったり。

今回はややネタバレしながらキャラクターについて言及してみます。
 私ももう子どもではない年齢に近づいて改めてこの作品を見ると非常に心惹かれるものがありました。素敵な話です。魅力溢れるキャラクターが生き生きと作品の中を動き回ります。しかも、この作品にはいわゆる「敵」であったり「悪役」はいません。言わばカタキ役はいますけどね。
 豚になってしまった賞金稼ぎポルコは真紅の飛行艇を駆り、空を愛し殺人を嫌い、信念を持って生きています。空賊と敵対していても、歌手のジーナのいる酒場で出会っても誰一人として戦いを始めることなく酒を飲み、話もするし、挨拶もするわけですから。仲良くはしませんけどね。
 ポルコが豚にされてしまった理由であったり、最後は人間に戻れたのか、戻れた理由はやっぱりベタにキス?ジーナさんは賭けに勝ったの?といった観客に色々考えさせる材料を残してあるのは心憎い演出だと考えます(苦笑)
 ポルコの飛行艇のメカニックとして登場するフィオが個人的には一番好きなキャラですね。17歳で飛行艇のメカニック、テキパキと仕事もするし空賊相手に一歩も引かなかったり、ポルコに対する憧れであったり恋であったり・・・。一途な感じであったり仕事に対する一本気な姿勢、目が輝いてますよね。空賊の男性諸君がみんなデレデレしてしまうのもわかる気がします。ジーナは落ち着いた感じの「待つ女」といった感じでしょうか。こちらも非常に素敵なキャラクターです。随所でポルコのことを想っていることがよくわかります。フィオのまっすぐな感情表現とは違いますが、いまだに少年の心を持つオトナであるポルコには余裕のあるジーナの方が楽なのかもしれませんね。
 作中で当時の世界情勢が語られたり、各人物にきちんとした背景が作られた上で深みを持たせたり、と物語に一定のリアリティを持たせています。SFというかファンタジックなのはまさに紅の豚だけだったりして。人も死なないし、怪我もしないし、とても平和な感じです。1920年代(作中では恐慌が示唆されているので後半でしょうね)は戦争などが最も身近な年代だけに救いがあるように想います。
 宮崎監督は作品の対象年齢を毎回考えてあんまり重複のないように作っているそうなので(千と千尋のパンフより)こういった作品を今後宮崎映画で作られるかどうかはわかりませんが、対象年齢高めのファンタジーもたまには製作してほしいものです。「ハウルの動く城」のような作品もいいんですけどね、もう少し面白みを出してほしいものです。

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