目指せ!映画批評家

時たまネタバレしながら、メジャーな作品からマイナーな作品まで色んな映画を色んな視点で楽しむ力を育みます★

アンストッパブル ★★★★

2011-01-18 00:28:56 | ★★★★
トニー・スコット監督、デンゼル・ワシントン主演のアクション映画。
アンストッパブル、中々の快作でした。お話としては発端からして鉄道会社の責任的な話なので、鉄道会社のマッチポンプ的な部分は否めないんだけど、そう感じさせない工夫が随所に配置されている。 アメリカにはああいう不真面目な労働者ってたくさんいそうだしね。ちょっとしたミス、気の緩みが少しずつ不穏な空気を持って大惨事に繋がっていく、という描写は非常に緻密に作られていたと思います。そもそも、タイトルバックが何とも不穏ですよねえ。777というラッキーナンバーが車両番号なのに下から煽るように列車を撮影する事で、無機質な不気味さ、暴力性をこれでもかと表現出来てましたね。
デンゼル・ワシントンはベテラン機関士を演じているのだが、こういう役柄ぴったりですね。また、音楽の緊張感演出がお見事。電車のスピードと重量感演出と撮影の仕方も上手でした。
トニー・スコットのいい仕事を観ました。ニュース映像を随所に挟みながら進むのもテンポ良くてナイス。
機関士と車掌の二人の家庭生活がうまくいってない演出と車掌の仕事への姿勢がトラブルシューティングを経るごとに変わっていく様をデンゼルのセリフ、He is different.と表したのは中々面白かったです。
アンストッパブル、序盤で大惨事が‥のシーンは予告編含めて見事なフック。あのシーンは本当にドキドキしました。見せ方が上手いと思いますね。話の流れから言えばいつでも起こりうる大惨事を描いてるわけでそこは背筋がゾッとする話でもあります。
撮影の都合と思いますが実際にはあの暴走機関車は高速では走ってない事がなんとなく予想されます。当然でしょうけど・・。ゆっくり走ってるように見えてしまうカットもいくつかあったように思います。特にヒキの絵でそれを如実に感じさせました。全体像把握のために仕方ない事とは言え少々テンションが下がる画面でした。

アンストッパブル、英単語だとunstoppable、になるわけですがこのタイトルは秀逸と感じました。途中、車掌のセリフで一度ほつれた糸はどんどん広がって止められない‥というセリフがありますがデンゼルはそこで必ず直せる、と言うわけですがこのやり取り自体が暴走列車の暗喩で面白かったですね。

映画中盤以降に出てくる脱線器のくだりは中々興味深い描写でした。他の映画ではあまり観た事がなかったですね。馬のケージも吹き飛ばし全て粉砕する様は迫力ありましたね。現場vs管理職というのは日本映画では踊る〜などで散々語られてはいますがハリウッドでは中々ああいうお話は少ないかもしれませんね。二人が決意するシーンが燃えました。

また、幾人かのご指摘でこの映画は怪獣映画だ!というお話がありましたが、それは確かに同意です。暴走機関車が怪獣で、車掌と機関士の2人はそれに立ち向かう社会で辛酸を舐める生活をしている2人。途中、地球防衛軍ならぬ鉄道会社があれやこれやと策を講じても一向に事態は好転せず、最終的には2人の活躍で怪獣に町を破壊されずに済む、といった具合でしょうか。鉄道そのものは一本の線で町まで一直線なわけですが、途中には寄り道のような複線があったり、困難に立ち向かわず逃げられる線もある。そういう安易な道を選ばずに自分たちの人生を賭けて守りたい家族のために、自分たちの命を捨てて家族を守るために困難に立ち向かう、うーん、非常に燃えるシチュエーション。

新年最初の映画としてはまさに小粒なれど「アタリ」の映画だったと感じました。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿