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理解されにくい難病「重症筋無力症」のはなし

2022-08-15 10:30:54 | 健康・医療
普通にしていても片方のまぶたが下がったり、右目と左目の視界がずれて距離感が狂うなどの症状は「重症筋無力症」の恐れがあり、専門医を受診すべきのようです。

この病気は末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患です。

全身の筋力低下や易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂や複視などの眼の症状を起こしやすいことが特徴です。重症化すると嚥下がうまくできなくなったり、呼吸器のマヒを起こし呼吸困難をきたすこともあるようです。

2018年の全国疫学調査では患者数は29,210人で人口10万人当たりの有病率は23.1人と報告されています。2006年の全国調査の患者数は15,100人でしたので、ここ10年で患者数は約2倍に増えていることになります。

脳の運動野の電気刺激がアセチルコリンという物質を介して運動神経の先端に行き、筋肉に伝わります。アセチルコリンの授与体を攻撃する異常なタンパク質が筋無力症を引き起こし、患者の85%にこのタンパク質が見られます。

重症筋無力症の症状は、単に筋肉が疲れ安いということとは意味が異なります。健康な人でもある時間作業すれば筋肉は疲れてきますが、急な筋力低下と「日内変動」といって1日のうちに症状が変わるのがこの病気の特徴です。

胸腺に異常があるかどうかのチェックも大切です。胸腺は免疫を司るリンパ球に、異物が敵かどうかを教える役目を担っています。通常10歳以降はどんどん小さくなりますが、重症筋無力症の患者はなぜか残るケースが多いようです。

したがって治療の一環としてCTで胸の検査を行い、必要であれば手術で胸腺を取ってしまうケースもあるとしています。

この病気の治療法としては、対症療法と根治的な免疫療法があります。対症療法として使われるのは、コリンエステラーゼ阻害剤といって神経から筋肉への信号伝達を増強する薬剤です。

治療の基本は免疫療法で、この病気の原因である抗体の産生を抑制したり、取り除く治療になります。抗体の産生を抑制するものには、ステロイド薬や免疫抑制薬があり、ステロイドは飲み薬としても点滴としても使われています。

そのほかには抗体を取り除く血液浄化療法、大量の抗体を静脈内投与する大量ガンマグロブリン療法、モノクローナル抗体療法などが実施されています。

この病気の問題点は、学校や会社で筋無力症の患者が周囲に理解されることが少ないといわれています。例えばある時間急に作業のスピードが退化すれば、「サボっている」「やる気がない」とみられがちなようです。

治療法もある程度進んでいる現在、こういった病気の啓発が重要なのかもしれません。


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