前回はデータドリブン脱炭素経営のスタートラインに立つためのインフラとして、EMS(エネルギーマネジメントシステム)導入の必然性を説いた。
ここで最近注目度が急速に上昇してきた「データサイエンス」に関して言及しておく。
そもそもデータサイエンスとは何か?その分野を専門家として操るデータサイエンティストとは、なにをするのか?私なりの考えを記しておく。
ある時、データサイエンスの概要を知りたいと思い、某大学の連続講義プログラムを受けようと申し込んだことがある。
その第一回目の講義でプログラムの全体像を聞き、即その後の受講継続をキャンセルした経験がある。
なぜなら全ての講義が、データの統計的な分析処理手法の解説に偏っていたからである。
もちろん、データサイエンスの中核的なテーマの一つは統計学的なものであろう。
しかしながら、自分自身の実務経験上の感覚からは、なにか大きく欠けるものを感じたことを記憶している。
私なりにデータサイエンスの全体像を整理すると、以下のように三つの段階に分かれると思っている。
第一に、対象となる現場から、あるいは対象とする事象から、各種データをどう収集するかである。
現状のデータがどう存在するのかなどを正確に把握すると共に、そのデータをいかにデジタライズし、継続的にかつ経済的に収集できるか。そのためには通信に関する技術的な知見が不可欠である。また、昨今ではデータセキュリティをどう確保するのかも、重要な問題となる。
そして第二段階が、収集したデータをどう料理するかであり、ここで初めて統計学など各種分析手法の知見が不可欠となる。前回紹介したBIツールなどを使いこなすことも必須の能力であろう。
最終の第三段階は、様々な分析により見えた状態から、分析結果の意味を読み解き、問題や課題を抽出し、それらを解決するためのソリューションを考え、分かりやすく提案し、実行し、改善結果を出すことである。
第一段階がエンジニアリング(理系)、情報通信工学であり、第二段階が数理科学(理系)、数理統計学であり、第三段階が社会科学(文系)、ビジネス・経営学となる。
実に学問分野横断的な総合科学ではないか。
こんな全ての領域に長けたスーパーマンなど実際に存在するのだろうか、とも思うが、それほどデータサイエンスティストとは魅力的で価値の高い職能である。
今後、多くの若者にこのような人材像を目指して欲しいものだ。
プロのデータサイエンティストは、データドリブン脱炭素経営には不可欠な存在であり、特に経営者は中長期的な視点に立って、このような人材を育成するための戦略立案と実行を期待したいものである。
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