稽古なる人生

人生は稽古、そのひとり言的な空間

№131(昭和63年3月8日)

2020年10月13日 | 長井長正範士の遺文


自分では「シ」と書いているつもりでも、他人から見れば「ツ」と読めるのである。無意識のうちに、このようなクセがあらわれるので、クセ字を書く人は、いまのうちに徹底的に訓練して、正しく読んでもらえるような文字を書けるようにしなければならない。

次に、文末の「。」の打ち忘れや、文中の「、」の位置を、いいかげんに打っている答案も少なくない。「。」や「、」を正しく打つことも、答案づくりでは大変に重要なポイントなのである。このようなことは、たいしたことではないと思っている生徒も少なくないだろうけれども、入試では、これらはすべて減点の対象となる。とくに英語の問題では、文末のピリオドや「?」の書き忘れは大幅に減点される。日本語が正確に読み・書きできないようでは、英語でも、このような書き忘れが起こるのである。文字の下手な生徒は、小さめに書くと、きれいに見られる。もちろん、あまりにも小さすぎて読みづらいというのでは困るから、そのことも考えながら、やや小さめに書くことをすすめたい。エンピツはHB、少し濃いめの方が書きやすいし、読みやすい。硬くて、薄いエンピツを使っている生徒諸君は、このさいHBに切り替えてほしい。薄い文字は読みづらく、採点をイライラさせる。

京阪神の私立高校のほとんどが、二月十五日に入学試験を実施する。この季節は一年中でいちばん寒い時期である。数多くの生徒がカゼなどをひいて体調を崩し、日ごろの勉強の成果を十分に発揮できず、不幸な結果を招いている。どうか、入試まではカゼなどひかないよう十分に気をつけていただきたい。カゼだけではない。きびしい寒さの中で、コンディションをととのえるために、外出先から帰宅したらウガイを励行し、手を洗うなど、病気にかからないための注意を怠ってはならない。これも受験勉強のひとつなのである。ここでもいえることだが、ダイタイ人間は自分の健康管理にも、そんなに気をつけず、試験当日、鼻水をながして受験する。これでは持てる力をフルに発揮できるわけがない。これから入試まで、体調をいかにしてベストな状態にととのえていくか。これはキミに課せられた大きな試練といえよう。
以上をわれわれの“剣道”に置きかえて反省してみるに、なるほどと教えられるのであります。

〇次に笑うに笑えぬ電報文を紹介しましょう。
東京の大学へいった息子から親元へ電報がきました。「金をくれた飲む」と親爺は読んでびっくり、誰からか知らんが、金を貰ったからといって飲むとは学生のくせにけしからん。とおこって早速返電を出しました。それには「誰くれた飲むな」と書いてあったので、息子はそこでハッと気がついて、再び打電しました。“カネオクレ」タノム”と」を入れました。」の一つを段落を省いたがために、とんでもない誤解をまねくものです。

又、ある旅館の玄関に、ひらがなで書いた注意がきに、“ここからはきものををぬいで通って下さい。”とあるので、これを見た妙齢の和服のお嬢さんが、真赤な顔して恥ずかしそうに、そこでもじもじしておりますので、案内人は、どうかされましたか?と心配顔で近寄ってきましたところ、“でも、ここからは着物をぬいで通って下さいて、書いてあるもん。わたし、どうしよう。”と答えましたので、案内人は平身低頭しておわびし、“ここから”の、らの右下に、句点「、」を入れて、スリッパを出して奥の間へ案内したという話です。続く。
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