渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

ハスラー・キュー 「スニーキー・ピート」

2022年04月21日 | open



このスニーキー・ピート、めちゃ
くちゃ綺麗だ。
まるで、カスタムキューみたい。

ハンドルとハギはゴンサロアルベス。
別名タイガーウッド。
タイガーウッドは二種あるが、これ
はウルシ科のゴンサロアルベス
(ポルトガル語)のほうだ。ブラ
ジル産。

タイガーウッドは派手だが華麗な
色彩と木目を見せる銘木だ。


ただ、こうした銘木を使うとハウス
キューもどきのハスラーキューとし
てのスニーキー・ピートの意味が
無い。
スニーキー・ピートとは「小ずるい
ピート」という意味で、ペテン師の
イカサマ師の事だ。
下手くそな初心者を装ってマグレで

勝ったようなふりをして、最後には
がっつりと勝って店を出る。たま
たま勝ててラッキーでした~、みた
いなフェイクポーズで。
だが、絶対に自分より強い相手とは

対戦しない狡猾な撞き屋がプール
シャーク=ハスラー(ゴト師)だ。
基本的にノーマネーのスポーツ対戦
などはしない。真っ向勝負の対決に
挑戦するというスポーツ選手など
では
ない。撞球を利用した博徒だ。

こういう上下メイプルで塗装での
ハギ風の物が本物のスニーキー・
ピートだといえる。

この騙すためには騙し無しのキュー。
なんともいえない妙。
これでボッコボコに勝つ。
だが、今の時代、大昔のそうした
映画のようなハスラーなどはいない。
人騙しのゴトかましよりも本気勝負
での博打玉がアメリカでは多いの
ではなかろう
か。

スニーキー・ピートの妙は、まさに
ハスラーキューとしての妙味であり、
最近出て来た傾向として、銘木の
超高級木材を使用してデザインのみ
スニーキー・ピート風にするのは、
なんだか本旨が根本から違うよう
に思える。
なんというか、金持ちがドヤ街の
定食屋に行って、あえて「自分ら
とは違う世界の風味を体験して楽
しむ」というようなブルジョアの
猟奇趣味的な享楽主義の嫌味の
匂いを感じる。
そうやって作られたキューは外連味
がありすぎで、てんでスニーキー・
ピートぽくない。


知り合いが有名アメリカンビルダー
に直に製作依頼したスニーキー・
ピートは見た目もハウスキューの
ように仕上げていて、かつ撞球性能
はそのビルダー特有の優れたキュー、
という手の込んだ一品だった。
そういうのがスニーキー・ピート
の中核のキモを押さえたキュー作り
だと感じる。実際に金額も「え?」
というような価格。あの作者でその
値段?というような。
見た目ノーマル(というか安物の
ボロに見える)キューながら、実は
超ハイチューンナップされた物。
こういうのはバイクにしろ車にしろ
プールキューにしろカッコいい。
見掛け倒しの真逆だからだ。

キュー単体として俯瞰するとその
ようなフィロソフィアが成立する
が、実際のところは、ハッスルを
かまさないプレーヤーがスニー
キー・ピートを持つ理由は無い。
それでも持つならば、それは好み
の問題に属し、やはり金持ちの
ドヤ街定食屋訪問と同一軸にある
事は否定できなくなる。
でも、なんというか、自覚の問題
だろう。
「この銘木の木目素晴らしいで
しょ?それでスニーキー・ピート
作ったの。どう?」なんてのは
てんで大滑りかと思う。
ルイヴィトン製の戦闘迷彩服を
自慢するようなものだからだ。

 

 

 


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