渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

映画『ワイルド7』

2021年12月28日 | open

『ワイルド7』(2011)

なぜ何度も観るのだろう。
と、思っていた。この映画を。
痛快駄作とか言いながら、何度
何かに吸い寄せられるように。

最後のテロップを見て気付いた。
この映画、私をあの世界に引き
ずり込んだ男がお偉いさんをや
っていた会社が製作に噛んでる。
テロップで目が点になった。
これまでそれには気づかなかった。
彼が私をあの世界に投入した。
彼は原作「ワイルド7」の熟読者
だった。
そして、原作漫画のヘボピーによく
似ているからと高校時代は「ヘボ
プー」と呼ばれていたそうだ。
大分県で一番の進学校出身だった。
彼が私をメット被って死地を行く
昭和浪士の世界に引きずり込んだ。

だが、彼はこの映画『ワイルド7』
(2011)の製作には噛んではいない。
彼は白血病になり、2006年に入院
先の病院で他界した。
数十年ぶりにかつての仲間が全国
から集まった。
静かに彼の自宅で手を合わせた。
彼は「病気が治ったら、バイクの
免許を取りに行く」と私に笑いな
がら言っていた。
もう何十年もそんな事聞いてるよ、
と私は笑って答えた。
ドナーが見つかり、手術も成功し、
全快治癒するとドクターから言われ
ていた。
だが、突然、病室で脳梗塞で倒れ、
心肺停止となり、そのまま眠るよ
うに死んで行った。
彼は、ほんとにバイクを駆るヘボ
ピーになる事はなく、映画『ワイ
ルド7』を観る事もなく、ほんと
のヘボピーのように本当に死んで
しまった。
それじゃ、ヘボプーのままじゃない
か。あんた、なにやってんだよ。
早すぎるだろ、そういうの。

私が持っていたMGCのコルトウッ
ズマンマッチターゲットは、彼が
昔、私の部屋から「これくれ」と
持って行った。ヘボピーの銃だ。
一升瓶の白ワインという妙な物を
二人でよく飲んでいた頃の事だ。

毎年、彼が死んだ頃になると、
私は黙したまま二輪で鎮魂の走り
をする事にしている。


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