渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

組み木の不思議

2022年09月26日 | open

 




ごく当たり前の事だが、ビリヤード
キューに使う木材は十分に乾燥され
た材が使われる。
そしてインレイやハギなどのいわば
組み木の技法が施される。

十分に乾燥してあっても、天然木は
呼吸をするので、大気中の湿気を
吸ったり吐いたりする。
結果として曲がりや歪みが出たり
する事もある。
私が不思議に思うのは、そうした
膨張収縮歪み発生の際に、接着部
は果たしてどうなるのであろうか
という事だ。
ビリヤードキューでは一本物は
経年変化で音鳴りの異音等が発生
しにくい。これは接着部分が少な
いからだ。
リングや組み貼り部分が多いキュー
ほど音鳴り異音が発生しやすい。
大抵は接着部が浮いたりしてビビリ
音を発生させる。
接着剤自体が痩せる事もあるが、
木部の膨張収縮に対して接着部
が何らかの悪影響を惹起させて
いる事が推測できる。

木材の曲がり防止の為にハギは
発明されたし、その後の加工技術
の飛躍的進化によりハイテクノロ
ジーともいえるセンターコアや
複合構造のバット製作が成される
ようになった。
だが、接着部が面積として増え
れば増える程リスクも増すのでは
なかろうか、という疑問が私には
ある。
もちろん、カーボンシャフトに
カーボンバット等のキューならば
全くそうした経年変化や気候気圧
湿度問題から解放されるだろう。
グラファイトの釣り竿のように。

それでも、フライフィッシング
などは、21世紀の現代でもバン
ブーロッドが最高の釣り味と
いわれている。
それは単なる懐古趣味や高級品
嗜好ではなく、天然のトンキン
ケーンという竹の親戚の植物を
使った毛鉤竿が最高なのだ。
これは釣り味だけでなく性能に
おいても。
なので、全天候型の耐久性を持つ
グラスやグラファイトカーボン
の竿では、素材で耐久性と耐候性
を持たせつつバンブーと同じ能力
と釣り味を出そうと各メーカーが
日々開発している。
ビリヤードキューもフライロッド
に似ている面もある。
カーボンシャフトやバットは全天
候型で耐候性が著しく強い。
また、カーボンシャフトなどは
音も良い。手工業品ではなく工業
製品なので品質のバラつきも無い。
唯一の欠点は、暴利でカーボンシャ
フトが業者によって販売されている
事だ。原価計算の損益分岐点から
するととんでもないカルト邪教の
壺売り詐欺に等しい暴利なのである。
カーボンシャフトは5000円以下で
販売してもかなりの利益が出る工
業製品なのだ。
だが、現在はその10倍~20倍相当
でごく普通に売られている。
また、飛ぶように売れている。
カーボンシャフトの最大の欠点は
そこだ。
カーボンシャフトは「戦略商品」
なのである。
雨後の筍のハイテクシャフトが
飽和状態になったので「次なる
ドジョウ」として作られたのだ。
道具の発達史としては健全とは
いえない。
路線に変更はないので、そのうち
カーボンさえ捨て去られて、次
なる「今度の製品は従来品を大
きく上回る」との宣伝文句で新
商品が確実に登場する。
そしてまた、現在のグローブや
カーボンシャフトと同じく、大衆
はそれに飛びつくのだ。

人の思考が本筋から大きく外れて
いる。
それはキューの接着面の緩みなど
比較にならない。



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