日本の伝統的な文様に「猪目(いのめ)」というものがある。ハート形の模様で、この文様は歴史が非常に古い。奈良時代ならず古墳時代の倒卵形鍔にもみられ、日本の歴史の中で最も古い文様のグループであるといえる。器具などの飾り文様として使われたこの日本のハートマークは刀装具でも鍔などに透かし技法としてあしらわれることが多い。猪目があしらわれる器物としては建築装飾の懸魚(げぎょ)がある。懸魚とは神社仏閣などに多く用いられる装飾板のことで、掛魚とも記すこともあり、「ゲギョ」と読んだり「ケンギョ」と読んだりする。大抵は彫刻によって表現されていて、破風(はふ)板の下に装飾のために取りつけられる。懸魚は単なる装飾としてだけではなく、建築の部分板としては物理的な意味も持つ。それは屋根の重要部分である傾斜の合流点(左右から合わさるので建...日本のハート~懸魚(げぎょ)と猪目(いのめ)~