渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

彫り

2021年12月25日 | open
 


私が作った武用刀剣用の鉄目釘。
滑り止め笹模様の彫り入り。
なました鉄を旋盤でコンマミリ
単位の精度で加工。この後、防
錆の為に黒で色あげして依頼者
に渡した。




この特製鉄目釘の彫りは脱落防止
の食い込みの実用性を付与する為
に鑽(たがね)枕を立たせている。
彫りには彫金用の鑽は使ってい
ない。
銘切り鑽を独自に研いで刃先を
造形させて使用した。
ツルツルの鉄目釘は脱落の危険性
があるので要注意。
私は刀工小林康宏作品直営工房
日本刀探求舎鍛人(かぬち)の
法を引き継ぐ者として、日本刀
探求苑游雲会の一人としてこの
鉄目釘を製作した。
丸棒のブランクのベースは自動車
製造メーカーの生産工場で使用
ている鋼材で私が厳選して
調達、
私が焼きなましをして調質
した。
旋盤加工の細部工程はプロの熟練
旋盤工が目黒区内の工房で加工し
た。彫りと色あげは完全に全行程
私の手。


打ち込み予定の康宏刀身の穴の実
寸から適切な数値を割り出して設
計したのも私。


タガネは良く切れるように専門的
に私が研いだ。ベタ研ぎでは鉄を
切る鑽の刃先は形成できない。
特殊な知識と研ぎの技術が要る。
彫り物は彫りだけ出来ても駄目
だ。
刃物を任意に狙った通りに研ぎ
上げ
技術が無いと仕事になら
ない。
 
刀などの銘切りは専用の銘切り
タガネでなくとも代用できる。
特殊鋼のドリルでさえも、それ用
に研ぎ上げれば刀銘は切れる。
刀の銘は彫るのではなく「切る」
のである。
彫金のように掘って、彫りクズ
捨ててはいないので、鑽跡を
寄せ
て埋めて鑢(やすり)で均せ
ば刀の銘
は無銘になる。
それに時代錆を巧くつけたら無銘刀
のナカゴとなるが、賢者には容易く
見破られる。刀剣工作での邪な悪事
はよくない。



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