
「鬼押し」とか「鬼引き」と呼ばれ
る強烈な手玉の動きの撞き方が
ビリヤードにはある。
手玉が一種止まったように見えて
その後ギュイーンと加速するよう
に走り出す撞き方だ。
だが、これは手玉が止まったよう
に見えている時は、実は手玉は空
中に浮いているのだ。
かつて、2000年初頭あたりまでは、
強烈な押し玉や引き玉は手玉がラ
シャの上で接地したまま空滑りの
スピンをしていると思い込まれて
いた。
しかし、日本人がラボでの科学検
証で高速度カメラを使って物理
現象の真実を発見した。
ビリヤードにおいては、球体は
ラシャの上で空滑りの回転はマッ
セ以外では発生しないのだ。
つまり、押し玉のフォローショット
は、すべて手玉の全周円周距離と
同じにしか前進しない事が発見さ
れたのだ。空スピンなどしていな
い。一切。
この発見は驚異的だった。
手玉が止まっているように見えて
いたのは、全て空中に玉があった
のだった。
それまで全世界に存在したビリヤ
ードの教則本は、誤りだった事が
判明したのだった。
だが、マッセのみは、手玉がラシャ
に接触したまま空回転をする。
この事も判明した。
そして、その回転と玉の突き出し
の力のバランスが転換する点から
は、あたかも手玉が加速(実際に
加速する)するかのような動きを
見せる。
平撞きでもヒネリを使うと、手玉
がゆっくり進んでいたのに、クッ
ションに跳ね返った瞬間にグンと
加速する事があるが、マッセの
場合は、手玉が単独でクッション
に接触以前に平場で速度の変化が
起きたりもする。
それは手玉の回転と玉の勢いの
バランス配分が変わる地点から
その加速や逆に急ブレーキで減速
するような現象が起きる。
玉筋を知る巧者は、それの知識を
技法と合体させてミラクルな手玉
の動きのショットをする。
ビリヤードはすべて物理的な球体
の動きを人間が制御して駆使する
スポーツだ。
知識だけの頭でっかちではできな
いし、また知見があっても技法を
保有していないとショットの実現
はできない。
玉を転がして玉をいくら入れても、
そのレベルでは駄目なのだ。
それは、巧者でも達人でも名人で
もない。
かつてエフレン・レイエスが名を
馳せた頃のアメリカン・ポケット
競技の時代は、世界のトッププロ
は超絶技法を駆使して試合を展開
していた。
だからこそ、観客も大いに沸いた
し、熱狂した。
それは、観る側も観戦者としての
レベルが高かった事を意味する。
玉入れだけが数入れできれば上位
上級ではない世界が展開されてい
て、プレーヤーと観戦者が一体化
していたのが往時の最大のビリヤ
ードの魅力だった。
最近は、撞く側も観る側も様相が
異なるようだ。
非常に観ていてもビリヤードが
つまらない。
これはMotoGPにもいえる事だが。
あの黄金の80年代、90年代のよう
な熱狂レースシーンは今は一切
無い。まるで無い。
観ていてつまらん。これ最悪の
スポーツかと。否、スポーツの
最悪の状態かと。
なんてのか、こじんまりとして
ショボい。
野球やサッカーは、まだダイナ
ミックさを失っておらず、時代
を超えて観客を熱くさせるプレー
を選手が展開している。
当然、熱狂的ファンも多く、隆盛
を見せている。
手玉の動きが魅力的である事を
知らせるエキジビション動画。

世界チャンピオンのサエギナール
はインタビューで、「マキシマム
で撞けば、エブリバディキャン
ドゥーイット」と言っているが、
誰でもできるわきゃないだろ、
てなショット。
Billiards Trick Shots Roberto Rojas Miguel Torres Semih Saygıner