渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

エイトボール

2022年04月11日 | open



エイトボールは米国人にとっては
ただの1個のボールではない。

特別な意味を持つ。
それは、無論アメリカンポケット
ビリヤードから来ている。

米語の喩え表現にこんな言葉がある。

" behind the eight ball "
日本語直訳だと「まずい」「困難」
「窮地」「後が無い」となる。
「切羽詰まる」とはニュアンスが
違う。もう待った無しの後ろが
無いような窮地といえる深刻な
状況の事。万事休す、のような。

behind the eight ball とはエイト
ボールの後ろ方という事。
この諺というか言い回しはアメ
リカンポケットビリヤードから
来ている。
8番は15個の玉の中心にあり、

8直下の7から下が単色7個、
上をスト
ライプ7個で分けて
いる。

8のみ黒一色。プールボール
に一色
のみというのは8番玉
と手玉だけで、
特別な的玉
全体の中心にあるボールが
8番玉だ。
7から下は単色で、10より上は

そのストライプカラー=単色
玉の番号に8を足した
番号の玉
が単色玉の色と同じ色に
白帯
を加えてストライプと
なって
いる。8番玉のみが独立した
単独の特別な中心玉なのである。
かなり数学的にも哲学的にも
深い。

そして、その8番玉を点数玉と
するエイトボールゲームでは、
8番がラストボールになる。
途中で8番を落としたら負けに
なる。単色かストライプかどち
らかを自分の持ちグループと
決めて、そしてすべての自分の
持ち玉を落とした最後に相手と
の共通点玉である独立した特別
玉の黒のエイトボールを落とす。
「8番玉の後ろ」という英語表現
は、「もうその後は無いよ」と
いうこと。

つまり、ラストボールの点玉で
あるエイトボールがポケットに
向かう8番玉の後ろにある手玉を
撞く場所に敵に立たれたらもう
おしまいだ、という
意味。
もう負けは目の前、斬首直前、
というような状況。
日本語ではラストの点玉の前
立つ、という表現だが、玉が
進む向こう側が本当は前なので、
玉位置からみた撞球者の位置は
「玉の後ろ」になる。

前方後円墳と同じ。鍵穴型の
丸い部分が前。方形の台場に
立って見渡して自分より向こう
側の円形のピラミッド形の丸い
小山が
前という方位概念。
自分がどちらに向こうが自分
側の手前の事を「前」とか言う
のではではない。対象物を中心
に概念化するのが方位確定の

基本だ。

ただし、建物の目前に立つ場合

等は「建物の前に立つ」と言う。
だが、ビリヤードのボールは
定位置に無く台上のどこにある
のか分からない。そして、的球
進む(進めさせる)方向は決ま
っている。的玉は穴に向かう。
穴を位置の定点としてボールを
見ると、穴と的玉からみたら
手玉と自分は点玉の進行方向の
後ろ側にいる事になる。
そして、手玉を撞いて点玉に
命中させて点玉を弾かせて前に
進めてポケットインさせる。
撞く人間が後ろ、点玉が前、

なのである。bihind は何の
後ろか、その後ろ側とは点玉

と穴の位置から俯瞰すると
どちら側が後ろなのか、という
事。

ゆえに、” behind the eight ball ”
のその状況は、相手がそこに立
ようになった時は、もう死刑
執行寸前、というような意味を
表現しているのである。
そして、実際のプールゲームでは

嫌な奴は「顔見(がんみ)ショ
ット」というマナー悪い撞き方
をしたりする。
それは、ラストの点玉と手玉の
後方で構えてから手玉を見ずに
対戦者のほうに顔を向けて、
そのまま撞いて点玉をポケット
させる。極めて無礼なショット。
試合などでやったらルール上
「スポーツマンシップにもとる」
という違反事項に該当し、即
その場で退場処分になるが、賭け
玉野郎たちはよくやったりする。


behind the eight ball はポケット
ビリヤードから来る言葉で、米国
人が日常でもよく使う言い回しだ。
しかし、この言い回しの日本語

解説では多分ビリヤードをやら
ない精通していない人たちだろう
が、非常に誤説明がネット上では
多すぎる。出鱈目。
エイトボールの後ろに立っては
ならないとか、エイトを落とし
てはいけないから、とか。
多分プールに無知な人たちの
テケトン思い込み思い付き解説。


人生 Behind the eight ball の状況
であっても、絶対に最後の最後
まで諦めるな、との教えもある。
その言い回しは Never say never.

「馬鹿と言うな、この馬鹿!」
みたいなもんだが、絶対に諦め
るな、という言い方だ。
事実、プールゲームではハード
ショットをすると一度ポケット
インして落ちたのにグローブ内
で回転しながらせり上がって来
て穴外に玉が飛び出す事がある。
上級者ではそれはあまり無い
(時々ごくたまにある)が、
そういう事もあるので、プール
でも絶対に最後の最後まで諦め
ない性根が大切。
プールゲームだけでなく、生き方
にはそれが大切。

さすれば、道は開ける。
開けなくとも何とかなる。


ちなみに、ポケットビリヤード
のナインボールゲームのTV解説
で、フィリピンのブスタマンテ
選手のハードブレークがもの凄い
パワーで3個を落とす事を指して、
おバカな事を言ってる解説者が
いた。
「ブレイクで大抵3個入れるので
彼のプレーはナインボールでは
なくシックスボールだとか言う
人もいます」
と。台上の残り玉が6個しかない
からなのだそうだ。

それを言った奴もそれを例として
挙げてる解説者もてんで解って
ない。穴前カタカタどころか大的
外しのど素人並みのトバシ玉だ。

「ナインボール」とは「9番玉」
の事である。玉数の事ではない。
玉数だったらボールズだ。
ナインボールゲームとは「9番玉
ゲーム」の事なのだ。点玉がどの
玉かを指している。
14.1ラックの事を「フォーティワン」
と呼ぶ人たちは困ったもんだ。


この記事についてブログを書く
« 東北 | トップ | スタヴィライズドウッド・キュー »