渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

横切り

2021年12月25日 | open


刀での斬撃は、一切、力任せには
振らない。
横切りもブーンではなくプッと切る。
 
逆胴横薙ぎ (1993年)
 
袈裟や真っ向もブーンではなく、
徐々に加速してピュッと切る。


この日本刀の使い方は、他の刃物
とは全く身体運用と理論が異なる。
抜刀斬撃が「序破急」であるよう
に、真っ向も袈裟も逆袈裟も横薙ぎ
も、日本刀での全ての斬撃は序破急
で行なう。
最初からホイルスピンをさせての
スタートではなく、徐々に加速し
て敵の斬撃部位の直前でマックス
になる。
斬切後はすぐに勢いを収束させる
抜重操作をする。
エアが圧縮されて物が止まるよう
な感じの動きを作り出す。
 
振る稽古は樋がある刀身が判断
しやすい。
ドビューッという長い音をさせて
いる振り方は、どんなに派手な音
をさせていてもてんで駄目。全く
それでは切れない。
敵の斬撃部位の手前で短くビュッ
と鳴るのが正しい斬刀法での音だ。
ブーンは論外だが、刀を使うエア
切りの試合人がよくやる長い音で
ドビシューーーッというのは、刀
の実戦刀法とは大きく乖離してい
る。お芝居じゃないんだから。
 
全ては「力」によっては出来ない。
振りもそうだが、刀を力で急に止
めようとすると、それは走行中の
クルマが壁に激突するようなもの
で、刀も人体もただでは済まない。
練習のやり方はある。
曲がりやすい傘を使って、思い切り
の勢いで刀で切るように振るのだ。
そして、水平に止める。
この時、一切傘の軸が折れ曲がら
ないような振り方を覚える。
ゆっくり振るのはだめ。
刀で切るように勢いよく振る。
そして、ぶれずにビタリと止める。
細い軸は一切曲げないように。
出来るようになると「抜重」は
できている。斬撃の振り方も出来
ている。
斬撃までが序破急となり、切った
直後も短い区間で慣性を完全に徐々
に殺す刀法が実行できている筈だ。
 
そして、嘘を見抜く事。
刀は円運動では切らないし、切れな
い。円運動はブーンになるからだ。
切先と刀線はスクエアの軌跡を描
くのである。
そして切開ではない時の刀法、つま
り切断目的の刀法では、斬切区間で
はギロチンのような動きになる。
 
(「刀法」を使えば刃引き刀でも
畳表は切断できる。これは刃引き
刀による稽古の画像。しかも畳表
は台に刺してはおらず、水平切り
した畳表の上に置いている「置き
斬」である。力ではなく刀法を使
う事により可能となる。踊りでな
ない実戦剣戟ではこの刀法の技術
の習得は必須だ)


いずれにしても、刀法における刀の
運刀方法は、肘と肩と肩甲骨を円滑
に最大に使う。それと手の内。
私の師匠はそれを「パンタグラフ
理論」と呼んでいた。
簡単ではない。
奥は限りなく深い。
 
 

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