…それはまるで甲羅をへた怪物のような
鋼鉄のキャメラだった
「ミッチェルNCサウンドというてな、
トーキーの時代を開いたキャメラや。
毎秒二十四コマの定速同時録音がでける、
今なら当たり前のことやけど、
それが輸入された昭和の初めには、
絵と音がいっぺんにとれるいうのんは、
魔法のようやった」
まるで国宝級の仏像の手入れでもするように、
辻老人は柔らかな絵筆と布とで
キャメラの埃を拭いながら説明を続けた…
…毎秒二十四コマの定速撮影のほかに
、
モーターの交換によって毎秒四コマから
三十二コマ変速回転ができるという、
しかもフィルム面のあるアパーチュアと
ルーペが後部のハンドルによって正確にシフトし、
撮影画面とピントが
ひとめで確認できるという、
当時としては画期的な機能を備えていたそうだ…
と小説「活動寫真の女」では
撮影所のキャメラの説明を
詳しく述べられています
当時の撮影所にはNCミッチェルのほかに
サイレント・ミッチェル、
ミッチェル・スタンダード
などありました
日本製のキャメラとしては
土井ミッチェルとか精機ミッチェルと呼ばれた
撮影機が作られていましたが。
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