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「ブルー・セーター 引き裂かれた世界をつなぐ起業家たちの物語 」

2010-05-26 20:10:21 | 
 「ブルー・セーター 引き裂かれた世界をつなぐ起業家たちの物語 」(ジャクリーン・ノヴォグラッツ)を読みました。ジャクリーン・ノヴォグラッツは、貧困層のためのベンチャーキャピタルとして、世界で注目を集めているアキュメン・ファンドのCEOです。アキュメン・ファンドの活動について、筆者は次のように書いています。

 「私は、自分たちが始めようとしているものを、貧困層のためのベンチャーキャピタルファンドと考えるようになった。慈善資金を集めたうえで、出資、貸付、資金援助―必要なことを何でも―行って投資する。投資先は、低所得層に安全な水、医療、住宅、代替エネルギー源などのサービスを提供する、ビジョンを持った投資家の率いる企業だ。さらに、基本的な事業計画から経営陣の雇用にいたるまで、多岐にわたる支援を提供して、そうした起業家と市場の結びつきを支援する。」

 アキュメン・ファンドは、インドで25万人の貧困層に安全な水を提供している起業家、遠隔治療を行う医師、27万人以上の農民の収入を倍増させた農業用品デザイナー、アフリカで年間2000万人もの貧困層にマラリア対策の蚊帳を提供している起業家などに投資し、大きな成功を収めているそうです。

 著者のジャクリーン・ノヴォグラッツは、25歳でチェースマンハッタン銀行を退職し、アフリカにわたりました。ルワンダで貧困層の女性のためのマイクロファイナンス(銀行)を設立し、貧困女性が自立して働ける場として、「ブルーベーカリー」を立ち上げました。

 「ブルー・ベーカリーをビジネスにする前、女性たちは自信がなく、人頼みで、長いあいだ絶望的に貧しかった。援助金が大量に流れ込むと、変化につながるのと同じくらい、腐敗と不正につながるきっかけも生まれた。」

しかし、

 「大くの実験、失敗、挫折を重ねたが、小さなベーカリーはプリスカのリーダーシップの下で繁盛しつづけた。彼女は、ニャミランボに少なくとも一つ、自らの価値によって運営される場所を創り出した。商品を売ってコストをカバーし、女性たちに自分で人生をコントロールできると教える場所。」

 「ベーカリーの物語は、人間が目をとめられ、責任を求められ、成功しているときに起きる変貌の一つだった。私は、自立する手段を提供された女性たちが、尊厳を獲得していくのを目の当たりにするという特権に恵まれた。ほんとうに責任をともなうビジネスを起こすことが、どれほどの力を持つかを発見した。」

 職場の主人公となることで、自信と尊厳を獲得していく・・・このあたりは、倒産からはじまった僕たちの経験と相通じるものがあって、とてもよくわかるのです。しかし、このブルーベーカリーも、80万人が犠牲となった「ルワンダの虐殺」で崩壊してしまいます。メンバーのある者は虐殺者となり、ある者は犠牲者として命を失います。人間の尊厳を取り戻すという同じ目的をもった仲間が、なぜ、互いに殺し合わなければならなかったのか?かつての仲間を訪ねながら、筆者は問い続けます。

 ルワンダの悲劇が二度とおこらないように、そしてすべての人が尊厳をもって生きていける世界になるように。「貧困のない世界」を目指して、数々の困難にもめげす前進していく著書の姿がとても印象的な一冊でした。







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