今日は、瀬川拓郎さんが書いた「アイヌの歴史 海と宝のノマド」という本を読みました。目から鱗、お薦めの一冊です。筆者は、「自然との共生」「平等」「平和」「縄文文化で歩みをとめてしまった人たち」という、アイヌに対する私たちの常識を相対化し、考古学の実証研究の成果をもとに、アイヌの側に視点を置いたリアルなアイヌの歴史を明らかにしていきます。
アイヌの文化やアイデンティティーは、自閉的な環境ではなく、戦争・対立・同化といった異文化との接触・関係の中で作られてきたこと、11世紀以降近代まで、宝(ワシの羽)の交易の主体として、東北からサハリン、大陸にまでアイヌの民が往来していたこと、宝をめぐる対立と格差の発生などなど、矛盾に苦しみながら前進してきたアイヌの姿がほんとうによくわかります。
そして筆者は、アイヌを辺境・周辺の民とする私たちの常識は、天皇を中心とする単一民族・単一文化という「虚構=フィクション」のなかでのみ成立するのだという鋭い指摘を行っています。世界地図を見ながら、東北、北海道、サハリン、中国大陸と広範囲に移動していたアイヌの民の姿を思い浮かべると、日本こそ辺境=周辺だったのではないかと思えるのです。
単一民族・単一文化という「虚構」の世界観から、今の私たちがどれほど自由になりえているかということを振り返る上でも、とても有益な一冊でした。
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