22の短編集です。せつなくて、どこか悲しい物語がたくさん出てきます。でも、読者の心に重くのしかかってこないところが川上弘美の魅力なのでしょうね。人間の心というのは、右か左にすっぱり割り切れるものではなくて、残余をいっぱい抱えてゆらいでいるのだなぁと納得させられる文章もたくさん出てきます。二三紹介。
「わたしは、さびしがっているんだ。正確にいうなら、さびしがっていることを、ふだんはほどんど気にしていない、ということ自体を、さびしがっているのだ。」
「好き、とはほんのわずかだけちがう、でも、好き、にすごく近いもの。」
「45年。自分で大事なことを決断できる自由を得られるようになるこの時まで、ずいぶん長かったようだけれども、でも、そうでなかったかもしれない。まだまだこれからも、ちゃんとあたしの人生は続くのだから。」
「大声で「ばかやろう」と叫び、壁にお皿を投げつけた。投げつけたけれど、力は加減していたので、お皿はわれずにころんと落ちた。」
「自分には、濃い感情や、濃い存在理由やらがないことが、悲しかった、世界でいちばんだめな女かも。今この瞬間は少なくとも。
そうでないことは知っていた。でも、いっそのこと、世界でいちばんだめなほうが、まだよかった。薄いのだ。薄くて、その他っぽくて、何もなくて。
少し、泣いた。涙は出なくて、洟ばかりが、出た。」
「力は加減した」とか、涙ではなくて「洟ばかりが、出た」とか、こういった文章が効いてるんだろうな・・・おもしろかったです。
「わたしは、さびしがっているんだ。正確にいうなら、さびしがっていることを、ふだんはほどんど気にしていない、ということ自体を、さびしがっているのだ。」
「好き、とはほんのわずかだけちがう、でも、好き、にすごく近いもの。」
「45年。自分で大事なことを決断できる自由を得られるようになるこの時まで、ずいぶん長かったようだけれども、でも、そうでなかったかもしれない。まだまだこれからも、ちゃんとあたしの人生は続くのだから。」
「大声で「ばかやろう」と叫び、壁にお皿を投げつけた。投げつけたけれど、力は加減していたので、お皿はわれずにころんと落ちた。」
「自分には、濃い感情や、濃い存在理由やらがないことが、悲しかった、世界でいちばんだめな女かも。今この瞬間は少なくとも。
そうでないことは知っていた。でも、いっそのこと、世界でいちばんだめなほうが、まだよかった。薄いのだ。薄くて、その他っぽくて、何もなくて。
少し、泣いた。涙は出なくて、洟ばかりが、出た。」
「力は加減した」とか、涙ではなくて「洟ばかりが、出た」とか、こういった文章が効いてるんだろうな・・・おもしろかったです。
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