1日1日感動したことを書きたい

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人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「ぼくたちが聖書について知りたかったこと」(池澤夏樹)

2010-05-22 23:02:31 | 
 「ぼくたちが聖書について知りたかったこと」(池澤夏樹)を読みました。聖書の研究家秋吉輝雄と作家池澤夏樹の対談集です。日本という島国にうまれ、広大な砂漠も見たことがない僕にとって、「へぇーそうだったんだ」という指摘がいっぱいでてきます。いくつかを箇条書き。

①ヘブライ語には過去形がない。
②ユダヤ人にとって歴史というのは過去から現在に縦に連なるものではなく、並列的に横軸としてとらえている。「すべての時代」が今に同居している。
③ユダヤ人がディアスポラ(離散状態)でなかった時期というのは、紀元前1000年のダビデの時代から現在までの3000年間で、長く見て400年ぐらいしかない。
④従ってパレスチナがユダヤ人の永遠の故郷だというのは歴史的事実というよりもむしろイデオロギーの産物である。
⑤ヘブライ語の「おとめ」は「若い娘」という意味で、「処女」という意味を持たない。マリアを処女だとしたのは、ヘブライ語をギリシア語の翻訳するときに、「パルテノス」と訳した誤訳にはじまる。
⑥紀元前二世紀のユダヤ人にとって、聖書というのは、まさに完璧な民族文学全集だった。自分たちに関する文献をあれだけもっている民族はほかにいなかった。
⑦文字、言葉を尊重するということがユダヤ人の生き方の土台としてあっただろうし、その力でいままでそれが続いてきた。ユダヤ人のアイデンティティーの基礎というのは、結局すべて聖書によるのではないか。

 現代の世界で大きな影響力を持っているユダヤ人のアイデンティティーの土台としての聖書・・・とても大胆な仮説です。ユダヤ人を知るために、聖書もよまなあかんなぁと思った一冊。おもしろかったです。