1日1日感動したことを書きたい

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人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「世界を不幸にするアメリカの戦争経済」(ジョセフ・E・スティグリッツ リンダ・ビルムズ)

2008-10-06 21:46:54 | 
「世界を不幸にするアメリカの戦争経済」(ジョセフ・E・スティグリッツ リンダ・ビルムズ)を読みました。ジョセフ・スティグリッツは、ノーベル賞を受賞した経済学者です。
 2003年にアメリカがイラクに侵攻して5年。イラクの混迷は、ますます深まっています。2010年までアメリカ軍が駐留した場合、イラク民衆の死者は100万人を超えるという試算さえあります。2001年以降イラクとアフガニスタンのために議会が承認した額は6450億ドル。2008年の2000億ドルを加えると、8000億ドルものお金が、イラクやアフガン民衆を苦しめるための戦争につかわれてきました。ちなみに「金融安定化法案」で、不良債権買い取りのために準備するお金は7000億ドルです。
 この本は、①イラクで戦争を遂行するためにすでに使っていた金に、②将来のコスト(退役軍人の医療費や障害補償、部隊と装備を引き上げるためのコスト)、③戦争に関連する”隠された”コスト、④戦費として借り入れた資金にかかる利息を加え、アメリカがイラクとの戦争に費やした経済コストを明らかにしようとしたものです。
 著者対の試算によると、その額は、控えめに見積もっても3兆ドル(315兆円)にもなります。IMFが試算したサブプライムローンに端を発した金融危機の損失コストは、世界全体で1兆3000億ドル(約138兆円)。 イラク戦争がなければ、世界の不良資産全額を買い取っても十分おつりがくるのですね。残りのお金は飢餓の撲滅にやくだっただろうに・・・。筆者達は、世界の原油高もサブプライム問題も、イラク侵攻が原因の一つであるとも主張しています。このあたりの、経済的な裏付けがもっとほしかったと思います。
 アメリカは、膨大な国債を発行して、イラクへの戦争を継続し、危機に瀕した金融機関と大企業の救済を行っていこうとしています。3兆ドルプラス不良債権の処理。財政赤字の拡大によるドルの没落は、避けられないのだろうな。
 アフガン・イラクへの介入と、サブプライム問題を契機とした金融危機。帝国アメリカの没落は確かに始まっていると実感させてくれる一冊でした。