1日1日感動したことを書きたい

本、音楽、映画、仕事、出会い。1日1日感動したことを書きたい。
人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「中国低層訪談録」(廖亦武リャオイウ)

2008-10-01 17:20:39 | 
 「中国低層訪談録」(廖亦武リャオイウ)を読みました。リャオイウは、中国の反
体制の文学者です。天安門事件「大虐殺」という長編詩の録音と、映画詩「安魂」
の制作により、反革命扇動罪で4年間投獄された経歴があります
 リャオイウによると、「低層」とは、「ディスクールの権利を奪われ、社会に忘
れられ、うち捨てられた存在で、一生にわたり生存の問題に対処しても常に生存の
危機に直面する人たち」のことをいいます。この本は、中国社会の底辺で生きる人
31人へのインタビューです。
 浮浪児、出稼ぎ労働者、乞食の大将、麻薬中毒者、同性愛者、売春婦、人買い、
破産した企業家、老右派、老紅衛兵、「6・4天安門事件」反革命分子、チベット
巡礼者、法輪功修行者、地下カトリック教徒などなど。
 リャオイウが命をかけて集めたインタビューからは、中国社会の矛盾とそこで生
きる人たちの生の声が、生き生きと伝わってきます。都市の繁栄の一方で身を売ら
ざるを得ない辺境の農民の声。建国以降の政治的激動の中で、傷つき打ち捨てられ
ていった人々の声などなど。彼らの声は、今の中国の紛れもない姿であり、革命中
国が歩んできた歴史にほかなりません。
 とても良い本だと思いました。こんな良い本を、2001年に発行後すぐに発禁にし
た中国政府の度量の狭さに大きな失望を感じるとともに、今は四川大地震で被災し
た人々の声を集めているリャオイウに、心より敬意を表したいと思いました。