「ややこしくするかしないかは、そちら次第だよ~。」
思わず言ってしまった。
やっぱり言ってしまった。
予定より早く市役所の資産税課の役人が二人はるか向こうの道に。
車から降りるなり、
「えっ、屋根がついてるんかいな~。」
「KOKKO:「ついてますよ、でなきゃ確認申請降りないもの。」
困ったような表情で階段を登ってくる二人の役人を見ながら、
「ささ、どうぞ。」
うやうやしくお出迎え。
役人:「設計図どおりの建て方になってませんね。」
KOKKO:「 そんなはずないですけど~。」
年配の役人が、先日コピーしまくっていた建築確認申請書(副)のコピーを開き、
「ほら、屋根が・・・。」
KOKKO:「いいえ、設計図どおりですよ。このラインが屋根で、コンテナの上に乗ってます。」
設計図を指差しながら説明した。
役人:「え? このラインが屋根かいな。へ~。」
おいおい、大丈夫かい? (彼は建築士の有資格者である。)
役人:「僕も一応建築士ですから、奥さん(奥さんではない!元奥さんである。)の仰る気持ちは分かるんですが、税金算定の基準がありまして・・・。」
KOKKO:「算定があろうとなかろうと、見れば分かるでしょ~。これが資材費470万円もするわけないじゃない。コンテナ16万円、それが四つですよ、金額メモしといてね。屋根と柱は日当込みで120万円で付けた。」
役人:「でも、運賃がすごく高かったでしょ?」
KOKKO:「知り合いの大工に頼んだから34000円。クレーンも4万円。でも、固定資産税の算定は確か資材費だけだったはず。」
あちこちの写真を撮りまくっていた二人。
役人:「・・・、本とだ、窓も流し台も中古品ですね。何で、中古品なんか使うんですか?」
KOKKO:「お金ないから~。どれが新品か言いましょうか? IHヒーター、電気温水器、風呂桶、シャワー用蛇口、それだけ。あ、基礎が新品でした!」
役人:「風呂は外だ、温水器も外・・・、これ、算定対象にはならないですね。」
KOKKO:「あらま、嬉しい~。」
役人:「まだ家出来上がってないじゃないですか。」
KOKKO:「これで出来上がりなんです。何しろ、お金がないもんで。これで出来上がりとしなければならないんです。贅沢は敵なのです。」
役人:「でも、風呂もむき出しで固定されてないし・・・。」
KOKKO:「私はこれでいいの! これで入るしかないの。私のライフスタイル、自由にさせてよ~。」
役人:「壁も鉄、内装は?」
KOKKO:「内装無しということで建築確認を通しました。完了検査が済んで引越しして来てから、10年ぐらいかけて少しずつお金貯金して工事していくんです。私にお金がないからこういう設計になったの。」
役人は、「よく分かりましたした。」と言いつつ、その後も頓珍漢な質問を一杯。
私は、そのたび「お金ないから~。」
役人:「これ、重量鉄骨ではなく軽量鉄骨なんです。税法上は軽量鉄骨でもありません。鉄板造鉄板葺平家建てです。」
KOKKO:「え?法務局では鉄骨造ということで申請書を書きましたが・・・。」
役人:「あなた、まだ登記簿見てないの?」←実は、登記完了証しか貰ってきていなかった。(-_-;)
役人から法務局の用紙を見せてもらった。
役人:「鉄骨造の部分に線を引いて消してあり、鉄板造となっていました。向こうが書き換えたんですね。」
ふ~ん、後で内部で話し合ったんだな。
こんなケースないから、皆さんちんぷんかんぷんなんだ~。
役人:「実は困ってるんです。高槻でもコンテナをわざわざ建築確認取ってまで建ててるケースなんてないし、ましてや鉄板造なんてのは規定にないから、税金計算できないんです。あなたが初めてで最後のケースになると思います。」
KOKO:「じゃ、私は高槻の歴史を切り開いたわけね。カ~コッイイ~! だったら、市役所の人たち、しっかり計算して頂戴ね。異議申し立てされたら、ややこしくなっちゃうよ~。」
役人:「ややこしくせんとって下さいよ。」
ここで冒頭のセリフ。
KOKKO:「ややこしくするかしないかは、そちら次第だよ~。」
役人は「上司と相談する時間を2週間下さい。」と言って帰って行った。
KOKKOは粘ります。
自分の土地に自分の責任で自分の家を建てることの自由は事実上なかった。国家に奪われたも同然だ。理不尽と思いつつも違法建築をやる根性がない模範的国民・小市民ゆえに、私は何とか法的にクリヤーしようとしてひどく苦しみ続けたのだ。
この上たくさん税金取ったら許せない。
これはもう囲炉裏茶屋の蚤たちを引き連れて一気に一揆。
そうだ、立ち上がろう、立ち上がるんだ~、全国の蚤たちよ、立ち上がれ~! 我々“蚤の会”の存在をアピールする時が来たぞ~! (私は“カムイ伝”のファンだ)
そうだ、世田谷村の白足袋にも言いつけて・・・いや、ダメだ、奴はあてにゃならない。蚤は奴の天敵だ。
※建築基準法の矛盾については、「ノアの箱家」物語に書いた。姉歯事件後、法改正が行われたが、「改正」なのか「改悪」なのか悩ましい点をおおいに含んでいる。事細かな規制が増大し施主側のあまり意味のない負担が増した。経済的にゆとりのない人間はますます建てにくくなり、受注が減ることで建築業界にも大きな打撃となったのである。