「廃材王国」カナディアンファーム
囲炉裏茶屋に住んでいた時、和里庵のM女史から借りた「廃材王国」という本がえらく気にいって、いや、本というより、その建築群の感覚が気に入って、ずっと訪ねて行きたかったのが、八ヶ岳のカナディアンファーム。神長官資料館と同じく、茅野市にある。神長官資料館を尋ねた後に、昼食がてら、寄ってみた。
アスレチック “居候小屋”の入り口にある集会所
子供向けのアスレチックまで造ってあった。これは、本には載っていなかった。最近、造ったものらしい。アスレチックの上に、隠れ家的(牢屋的?)なミニスペースがあって、大人も喜んでもぐりこんでいた。勿論、私も。
かつて、“居候小屋”と「廃材王国」で紹介されていた小屋の前の集会所の屋根の裏の木組みの面白いこと。カナディアンファームでは、設計図無しで家を建てる。そこいらで見つけた適当な木を使って家を建てるので、このような面白い出来上がりになる。カナディアンファームには、いたるところにこんな建物が建てられている。全てセルフビルド(中には、朽ち果てているものもあった)。サウナまであったのにはびっくりした。
ここの建築群の特徴は、とにかく、思いつきというかひらめきで造るとうこと。基礎なんて、森の木を何本か根元数十センチあたりで切り倒し、切り株を基礎代わりにして、その上に床を組むという方法もいくつか取り入れている。敷地内にそういったひらめきの建物がいくつもいくつもあって、手作り感というか、開拓者の家っぽいのがあって、実に面白い。
カナディアンファームにいると、自由に生きていいんだという心理的な後押しを受ける。元気になれる。
土がのった屋根 面白いドアと柱
これで三度目の葺き替えだという台所棟の屋根。土の上に草が生えている。現在、物置か“居候小屋”になっているらしい建物のドアの見事なこと。アプローチには、主であるハセヤンの長男の大樹君の手形と名前が。
カナディアンファームには、ハセヤンの生き方に共感する若者達が続々やってきて、常に何人かが“居候”している。ここで数年居候しながら、家の建て方や燻製の作り方、畑の仕方などを学んで「卒業」していくのだ。
今回、私が来た時も31歳の若者が店の手伝いをしていた。ここを出た後、岩手の農場で震災ボランティアをする予定だという。彼は、もともと岩手でボランティアをしていて、こちらに移ってきているので、元の古巣に戻ると言った方がいいかもしれない。
KOKKO:「給料は、小遣い程度には貰っているの?」
岩手居候:「いいえ。貰ってません。アメリカの農場には、主は食べ物と住居とノウハウを居候に提供し、
その代わり、居候は労働力を提供するという考えが伝統的にあるんです。」
KOKKO:「でも、ここを出て行くとき、無一文では自立できないじゃない?」
岩手居候:「居候たちは、無一文ではないんです。みんな、蓄えを持って来ているんです。」
KOKKO:「そうか。行き場の無い若者達が逃げ込んできているわけじゃないんだ。みんな、確信的居候なわ
けなのね。」
学びたい。体験したい。実験したい。ここに来る居候たちは、初めから自立していくことを前提として、自立のためのノウハウをハセヤンから吸収するためにやってきているのだ。
天井からぶら下がる4年物の生ハム 生ハム切りは、ハセヤンの仕事
食事をしていたら、なにやら生臭い臭いが・・・。天井からぶら下がっている埃?だらけ、カビ?だらけの肉の塊が犯人だった。肉の塊というよりも、尻尾付きの豚のお尻だったり、鹿の後ろ足だったり、というのが本当のところなのだけれど・・・。
ハセヤン曰く、「これが本物の生ハムだよ。塩漬けにして干してあるだけ。カビなどの力で美味しくなるんだ。見てみろ、切り口がこんなに赤くて、まるで生肉みたいだろう?4年経っても、こんなにいい色してるんだ。」
おいおい、四年間もこんなところにぶら下げたままなのかい?
ところがどっこい、生ハム作り専用のツリーハウスがあって、中をのぞくと、お尻とか後ろ足がうじゃうじゃ天井からぶら下がっていた。ノスフェラトウか? ちと、不気味。
だけど、鼠返しつきのツリーハウスは、とても素敵だった。私もこんなの造りたい!
鹿・豚・馬の生ハムと鮭の燻製
鮭の燻製は、勿論自家製。燻製棟も作ってあって、そこでハセヤンはハッスルしている。
この鮭の燻製は、「どっちの料理ショー」でも取り上げられたことがあるらしい。
生ハムの方は本格的過ぎて、臭いが気になって食べられない人もいるはず。通好みの味と香り。1人前で1900円?ほどもした。
だが、美味しかった!!
敷地に咲き乱れていたパンダスミレを所望したところ、快諾を得たので、スコップで何株かを掘り起こして持って帰った。我が家の小丘をすみれが丘と呼ぶことにしよう。