「小泉今日子と中井貴一の空気感に癒される」
ベテランだらけの異色の月9
「続・続・最後から二番目の恋」が
高視聴率スタート
小泉今日子(59)と中井貴一(63)がW主演する月9ドラマ「続・続・最後から二番目の恋」(フジテレビ)がスタートした。2012年に放送された「最後から二番目の恋」の第3弾シリーズで、14年に放送された第2シリーズから実に11年ぶり。役柄も出演者もそのまま年をとった。
そもそも第1シリーズが放送された時は《45歳独身女性と50歳独身男性…「まだ恋は終わらない!」》が謳い文句の鎌倉を舞台にした大人の恋愛コメディだった。テレビ局のドラマプロデューサー・吉野千明も、それを演じる小泉も45歳。鎌倉市役所に勤める長倉和平も、それを演じる中井も50歳。時は流れて13年……。
4月12日の初回は、定年まであと1年となった白髪交じりの千明が「セカンドライフセミナー」を受講するシーンから始まった。和平はすでに定年退職しているが、鎌倉市観光推進課の指導監として再任用されている。
和平を中心とする長倉家で朝食を囲むメンツも変わらない。和平の妹で長倉家の長女・典子(飯島直子=57)、次女で双子の姉・万理子(内田有紀=49)、次男で双子の弟・真平(坂口憲二=49)、和平の娘・えりな(白本彩奈=22)、そして長倉家の隣に住む千明――。平均年齢49・8歳という食卓風景だ。
他のキャストを見ても、千明の独身仲間を演じる森口博子(56)と渡辺真起子(56)、第3シリーズから新たに加わった三浦友和(73)と石田ひかり(52)も出演者の平均年齢を押し上げている。“シニア向けドラマ”と揶揄する声もある。実際のところどうなのか、民放プロデューサーに聞いた。
今期2位の好発進
「初回の個人視聴率は5・5%、世帯視聴率は9・4%と二桁に届きそうな勢いです(ビデオリサーチ調べ、関東地区:以下同)。このところ不調が続いた月9ドラマですが、23年4月期の木村拓哉・主演『風間公親―教場0―』以来の個人視聴率5%超えとなりました。世帯視聴率は阿部寛・主演の日曜劇場『ニュースゲート』の初回14・2%に次ぐ数字です。また、TVerでの再生回数は200万回を突破したそうです」
月9の面目躍如といったところか。だが、もともと「最後から二番目の恋」は、第1シリーズ、第2シリーズとも木曜劇場の枠で放送されていた。それがなぜ今回は月9に?
「第1シリーズの平均世帯視聴率は12・4%で、小泉さんはギャラクシー賞のテレビ部門で個人賞を受賞しました。彼女は翌13年、NHKの朝ドラ『あまちゃん』に出演。14年の第2シリーズは平均12・9%となり、小泉さんがザテレビジョンドラマアカデミー賞で主演女優賞を受賞するなどもともと評判のいいドラマでした。現在、一連のフジテレビの問題のためスポンサーはもちろん視聴者からもフジは敬遠され、前作の月9ドラマ『119 エマージェンシーコール』は打ち切りの危機まで囁かれたほど。そんな中、月9の起爆剤として『最後から二番目の恋』に白羽の矢が立ったのでしょう。フジの看板ドラマ枠といえばやはり月9ですから、まずそこに注力したのではないでしょうか」
もっとも、不安要素がなかったわけではない。4月7日に放送された「FNSドラマ対抗お宝映像アワード2025春」は4月期の連ドラ出演者が一堂に会する番宣特番だったが、そこに「続・続・最後から二番目の恋」からは誰一人参加しなかったのだ。それを“不穏”と報じたメディアもある。
小泉の稀有な存在感
「撮影が忙しかったためかもしれませんが、プロデューサー側があえて出さなかった可能性も考えられます。お騒がせのフジテレビに巻き込まれないように……。初回には『月9って何曜日の何時からだっけ?』という千明の自虐的な台詞がありましたが、これこそ月9の古いカラーを捨てる意思表示だったようにも思えます。それに小泉さんは以前、バラエティ番組には『絶対出たくない』と語ったこともあります。ベテラン勢もいくら番宣のためとはいえ、正直そういう気持ちの人が少なくないと思います」
と語るのは、メディア文化評論家の碓井広義氏だ。
ではなぜ、ベテランだらけのドラマの数字がいいのだろう。
「私もこのドラマは楽しみにしていた1本で、見終えてホッとしました。11年ぶりの新シリーズとなりましたが、千明も和平も基本的に変わっていなかったからです。小泉さんや中井さんがドラマの役柄と同じ年齢というのもキャラが重なって奥行きを感じます。もちろん脚本の岡田惠和さんは、年を重ねての変化、職場での役割、仲間たちとのプライベート、一人の時の自分を階層的、重層的に描き分けています。会話もドラマというより日常的ですが、ロマンチックなところもありつつ年を取るという不安や心配も差し込んでいる。恋愛関係もありながら、ある程度の距離を保ちつつ、喧嘩しながらも相手を心配する距離感、その空気感に癒されました。これは若手では出せない味だと思います」(碓井氏)
ひょっとして、シニア層だけが見ているということだろうか。
「もしかしたら若い人も見ているかもしれません。出演者たちは素敵な中年、シニア層ですから、自分のちょっと先のケーススタディとして人生の教科書的に見ているかもしれません。中でも小泉さんは、昨年9月期に放送された『団地のふたり』(NHK BS)でも見せた力の抜け加減がいい。無理をしなくてもよく見える独特の余裕があります。今や元アイドルも役者も超えた稀有な存在です。“小泉さんの生き方”がドラマ化されているようにすら思えます」(碓井氏)
それにしても、11年ぶりというのは間が空きすぎではないだろうか。
「2〜3年ごとにやってくれてもいいと思いますけどね。スケジュール的に難しいのなら、年に1回のスペシャルものでもいい。そうなればフジの名作ドラマ『北の国から』の鎌倉版になり得るかもしれません」(碓井氏)
(デイリー新潮 2025.04.21)