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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「浦沢直樹の漫勉neo」に、大友克洋登場!

2025年04月02日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

日本漫画の世界を変えた大友克洋

NHK Eテレ

「浦沢直樹の漫勉neo/大友克洋」

 

漫画家の執筆現場に密着し、創作の秘密に迫るドキュメント「浦沢直樹の漫勉neo」(NHKEテレ)。3月29日に1年ぶりの放送があり、漫画界のレジェンドともいえる大友克洋が登場した。

浦沢によれば、ボブ・ディランやビートルズの出現で音楽がガラッと変わったように、大友は日本漫画の世界を変えた。一体何が凄かったのか?

浦沢が選んだのは「AKIRA」ではなく「童夢」だ。浦沢はもちろん、江口寿史など多くの漫画家にも影響を与えた作品である。

その「原画」を前に大友自身が制作過程を語り、浦沢が解説しながら質問していく。何ともぜいたくな時間だ。

登場人物が向き合って会話する場面での小津安二郎的「正面切り返し」。物語の流れの中に別のシーンが挿入されることで生まれる「モンタージュ(編集)感」。今は常識になっていることが、ここから始まったのだ。

大友は言う。「映画、音楽、ファッション、いろんなものが入ってきて作品になる。漫画の中だけで漫画を作ってるわけじゃないんだよ」と。

さらに浦沢が「私の人生を変えた原稿」と呼ぶのが、超能力を持つ老人が暗闇の中に浮かぶシーンだ。

首に巻いた複雑なコードの連なりをホワイト(修正)なしで描いている。大友はこの一発勝負を「呪術」と笑った。

漫画表現のレベルやスタンダードを変えた「童夢」。再読してみたい。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2025.04.01)