碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

書評した本: 『ふたつのオリンピック~東京1964/2020』ほか

2018年12月01日 | 書評した本たち


週刊新潮に、以下の書評を寄稿しました。


ロバート・ホワイティング:著、玉木正之:訳 
『ふたつのオリンピック~東京1964/2020』

角川書店 2592円

『東京アンダーワールド』の著者による自伝的ノンフィクションだ。1962年に米軍の諜報部員として来日。以来、半世紀以上も東京の表と裏を見つめてきた。本書は街、スポーツ、人物について時にクールでシニカル、また時に熱く語った極私的現代史でもある。

(週刊新潮 2018年11月15日号)


山本貴光 
『投壜通信』

本の雑誌社 2484円

文筆家にしてゲーム作家の著者。書物に関して只者でないことは、『新釈漢文大系』や岩波文庫などの「全巻集め読み」だけで十分伝わる。壜に詰めて海に投じた文章は、旅や数学などテーマ別のブックガイド、辞書や思想誌の分析と評価、新聞のコラムと多彩だ。


竹内 洋 
『教養派知識人の運命~阿部次郎とその時代』

筑摩書房 2160円

阿部次郎著『三太郎の日記』は大正教養主義を象徴する一冊だ。阿部の分身である青田三太郎の「内省」と「自己確立」への模索が綴られており、旧制高校生たちのバイブルと呼ばれた。本書は阿部の評伝であり、知識人の社会史であり、教養主義の変遷史でもある。


新川敏光 
『田中角栄~同心円でいこう~』

ミネルヴァ書房 2592年

かつて世間から糾弾されながら、今や称賛を浴びる存在となった角栄。この特異な政治家を戦後政治の文脈の中で捉え直し、戦後民主主義について再考するのがこの評伝だ。何より「政治的事業家」という指摘が的を射ている。「時代を生き切る」天才の技とは?

(週刊新潮 2018年11月8日号)