碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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異色の設定が光る弁護士ドラマ「リーガルV」

2018年11月27日 | 「しんぶん赤旗」連載中のテレビ評


異色の設定が光る弁護士ドラマ

米倉涼子主演「リーガルV~元弁護士・小鳥遊(たかなし)翔子~」(テレビ朝日系)が始まった時、ドクターXこと大門未知子先生が、副業で弁護士事務所を開いたのかと思った。手術続きで、さすがの天才外科医も疲れたのか。それとも同じ役を続けてイメージが固まることを主演女優が嫌ったか。

そこで制作側が提案する。今度は医者ではなく弁護士。ただし手術室ならぬ法廷に立つ必要はない。なぜならヒロインの小鳥遊(米倉)は弁護士資格をはく奪されているから。弁護士ドラマの主人公が弁護士として活躍できない。この一見矛盾した異色の設定こそが「リーガルV」の魅力だ。

本人は「管理人」という立場で、法律事務所のメンバーを集める。それもクセのある人物ばかりだ。

所長の京極(高橋英樹)は法学部教授で法廷の経験はない。大鷹(勝村政信)は大失敗をして検事を辞めたヤメ検弁護士。そして若手の青島(林遣都)はまだ半分素人だ。パラリーガルも現役ホスト(三浦翔平)や元ストーカー(荒川良々)といった問題児たちだが、小鳥遊は彼らをコキ使って事実を洗い直していく。

このドラマは、「チーム小鳥遊」とでも呼ぶべき集団の活躍を見せる群像劇になっているのだ。そこにはスーパーヒーロー型の「ドクターX」や、バディー型の「相棒」との差別化を図る効果も織り込まれている。
 
また、大門の神技的外科手術と組織内の権力闘争が見せ場だった「ドクターX」と異なり、「リーガルV」では訴えた側、訴えられた側、それぞれの人間模様が描かれる。まさに人間ドラマとしての見応えがあるのだ。

たとえば第3話では、裁判の行方を左右する重要証人、被告の恩師(岡本信人)の偽証を見事に覆した。夫の浮気に気がついていた妻(原日出子)の応援を得たのだ。

そして第4話では亡くなった資産家(竜雷太)の莫大な遺産をめぐって、死の直前に入籍した若い女(島崎遥香、好演)と一人息子(袴田吉彦)が対立する。遺産目当てと思われた結婚の背後には意外な真相があった。

大事な局面では直感と独断でしっかり存在感を示すヒロイン。小鳥遊はドクターXの不在を埋める、“もう一人の大門”と言っていい。

(しんぶん赤旗「波動」2018.11.26)

「an」CMの浜辺美波さん

2018年11月27日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム



パーソナルキャリア「an」
アルバイトに挑戦
浜辺さん八変化

学生時代、アルバイトが途切れたことはない。当時、情報誌『日刊アルバイトニュース』に随分お世話になったからだ。やがて『an』と改題され、現在は完全にWebサービスとなっている。

スマホがあれば、浜辺美波さんのようなバイト初心者も簡単に仕事を探すことができる。なんて便利な世の中になったものだろう。CMでは、お寿司屋さんから巫女さんまで、様々なバイトにチャレンジする姿が八変化で楽しめる。

さらに、「経験なくても」と歌って踊る彼女の背後で身をくねらす、いやバックダンサーを務めているのはアンガールズのお2人ではないか。3人合わせて、「anガールズ」なる笑撃のユニットだ。

昨年の夏、映画『君の膵臓をたべたい』を観た。難病を抱えたヒロインの少女、桜良を明るく演じていた浜辺さん。その笑顔が鮮烈だった。CMを眺めていると、元気になった桜良が、切望していた青春を謳歌しているような気がする。

(日経MJ「CM裏表」2018.11.26)