碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

週刊新潮で、ドラマ「僕坂」の加賀まりこさんについて解説

2018年11月14日 | メディアでのコメント・論評


「僕坂」で好演の加賀まりこ、
現実でも愛猫と生活 本人語る

「嵐」の相葉雅紀主演の連続ドラマ「僕とシッポと神楽坂」(テレビ朝日系)。動物病院を舞台に獣医の相葉、看護師の広末涼子らと、動物や飼い主たちとの心の交流を描く物語だ。

初回視聴率は6・6%、2回目は5・4%と、テレ朝の金曜23時15分からの枠としては、やや苦戦が続く。

10月26日放送の第3話には、加賀まりこが神楽坂の老舗扇屋の女将役で出演。夫に先立たれ子供もおらず、愛猫と暮らす孤独な女「千津(ちづ)」をしんみりと演じてみせた。

「相葉や広末に比べ、存在感は別格。加賀さんの貫禄を感じさせる回でしたね」

とは、上智大学教授(メディア文化論)の碓井広義氏。

「最後は唯一の家族であるネコに見守られ、眠るように息を引き取っていく。ほのぼのしたドラマの中、彼女の演技で、生と死のテーマが重くならず、でも訴えかける内容で“引き締まって”いました」

若い頃は“和製ブリジット・バルドー”との異名を取った彼女も74歳。昨年放送された倉本聰脚本の「やすらぎの郷」では、かつて大女優で、今では老人ホームで暮らす老女を浅丘ルリ子らと熱演し、話題となった。

「『やすらぎの郷』の出演が転機となったんでしょう。ありのままの自分を出せるようになり、生き生きとした美しさを感じさせるようになりました」(同)


実は加賀さん、実際でも神楽坂に長年住み、ネコを飼っている。

「だから演技も入りやすかったんですよ。ドラマで登場したネコも私が飼っている子にそっくり。ただ、今回のような寂しげなお婆さん役は、本当は苦手かな」

そう話すのはご本人。

「でも、今回のドラマで自分と重ねて感じたことは、“命”に対する思い、そして“死”に対して。今、飼っているネコは16歳。人間なら私と同じくらいか、年上。できるなら一緒、同時に逝きたいわね。私が先に逝った場合、一人残すのは心配。その気持ちは千津と同じ」

1回だけのゲスト出演ゆえ光る、いぶし銀の名演であった。

(週刊新潮 2018年11月8日号)

ドラマ「大恋愛」 ムロツヨシの底力発揮はこれから

2018年11月14日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評


ドラマ「大恋愛」で好評
ムロツヨシの底力発揮はこれから

ドラマ「大恋愛」(TBS系)は、若年性アルツハイマーのヒロインと彼女を支える男の物語だ。下手をしたら陳腐なドラマになるはずだったが、違った。

決定づけたのは、長く筆を折っていた小説家、間宮真司(ムロツヨシ)の“受けとめ力”である。彼の作品の大ファンだった女医の北澤尚(戸田恵梨香)。その情熱を真司が受けとめた。また病気が発覚し、尚が身を引こうとした時も、真司は「病気だなんて屁でもなんでもない。(中略)俺は一緒にいたいんだ!」と丸ごと受けとめる。

それでも尚の元婚約者で、主治医でもある井原侑市(松岡昌宏)の存在や、尚を支え切ることができるのかという不安や迷いもあり、真司から別れを告げる事態に陥った。

しかし先週、2人の間の誤解が解消され、ついに尚はウエディングドレスに身を包んだ。いやはや、ベテラン脚本家・大石静の手練手管によって、陳腐なドラマどころか、タイトル通りの大恋愛に進化しつつある。

功労者はやはりムロツヨシで、「勇者ヨシヒコ」シリーズ(テレビ東京系)の魔法使いとは真逆の役柄でありながら、どこか不穏な雰囲気を残しているのだ。予測不能なムロに敏感に反応した戸田が、ふだん以上の演技を見せるという相乗効果も生まれている。

結婚はしたが病状は進む。ヒロインはもちろん主演女優をも受けとめる、ムロツヨシの底力が発揮されるのはこれからだ。

(日刊ゲンダイ 2108.11.14)