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碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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感動押し売りバラエティ「ドラクロワ」の安っぽさ

2011年11月15日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載中の番組時評「TV 見るべきものは!!」。

今週の掲載分では、NHK「ドラクロワ」について書きました。


苦労話の再現ドラマがあまりに安っぽい

金曜夜のNHK「ドラクロワ」を見た。

タイトルは有名な19世紀の画家とは無関係。

「ドラマチックな苦労話(くろうわ)」だそうだ。

2つの実話を再現ドラマで見せ、スタジオで司会の森三中とゲストがトークを行う。 

先週は「母と娘の愛情物語スペシャル」だった。

まず高級クラブのママが私生活で教育ママと化し、娘と対立したという話。

次が阪神大震災で母を失った娘が、「医者になって欲しい」という遺志を実現させたという話だ。

確かにどちらもいいエピソードには違いない。しかし、再現ドラマがあまりに安っぽい。

上辺だけをなぞったような内容からは、複雑な家庭の事情や当人たちの葛藤を知ることはできなかった。

スタジオのトーク部分も空疎なものだ。

ゲストの前田美波里は母と娘の両方の気持ちがわかるといった当たり障りのないコメント。

くわばたりえも「自分の子供には頭が良くて金儲けする人になって欲しい」と可笑しくもない感想を述べる。

しかも森三中の面々はただ聞いているだけなのだ。

VTRの中で、亡き母に代わって家事や祖母の世話をしながら受験勉強に励んだ女医さんが、「患者の痛みに寄り添う医師でありたい」と語っていた。

ちゃちな再現ドラマよりこの肉声ひとつのほうがどれだけ見る側の胸を打つか。

薄手の“感動押し売りバラエティ”は民放に任せればいい。

(日刊ゲンダイ 2011.11.14)