ちわきの俳句の部屋

メカ音痴おばさんの一念発起のブログです。
人生の後半を俳句にどっぷりと浸かって、…今がある。

今日のお題は〝目刺〟

2017年03月08日 | 俳句

 昨日は第1火曜日、俳句教室の日でした。
 地域のふれあいセンターで行っていますが、俳句というものは、普通の習い事のように毎週とか、隔週とかはしません。普通どこででも月一回の句会を開くというやり方だと思うのですが、時には吟行と言って、郊外などに出掛け、各自自由に散策しながら句を作り、どこかの会場を借りて句会をするのです。
 同じ場所で同じ景色などを見ているので、よく分かる句が多く、「あ、これ詠みたかったのに出来なくて…」とか、「こんなとこあった?」などと、それぞれの観察力や作句力を磨く勉強になります。
 俳句教室では、毎月5句提出。4句は当季雑詠(句会の行われる季節のものなら何でも良し)ですが、1句は兼題と言って、あらかじめ 決めておいた題で詠んでくるものです。言うなら宿題みたいなものですね。
 今月の兼題は、「目刺」でした。真鰯か片口鰯の目の所を藁や竹串で通し、五匹前後をひとまとめにして干したもの。鰓を通したものは「頬刺」と言います。生干しと固干しがあり、最近は柔らかい生干しが好まれているようです。昔から庶民の食べ物として一般的なものでしたが、最近では鰯が不漁のためか、意外と高くつくし、メインのおかずにはなれないので、食卓に上る機会が少なくなったようです。子供の頃は七輪でさっと炙って良く食べていたのになあと、時々懐かしくなり買ってきたりしますが。
 さあ、今日はどんな句に出会えるのかと思うと、いつも楽しみになります。
 
  目刺焼くここ東京のド真中 

 これは私の尊敬する鈴木真砂女さんの句です。俳句を嗜んでいらっしゃる方は殆どご存じでしょうが、生涯現役を通された昭和期の女流俳人です。2度の結婚・離婚、その間には年下の妻帯者との不倫で家出など、まさに恋多き情熱の女性でした。離婚後50才のとき、独力で東京の銀座に小料理屋「卯波」を開き、96才の亡くなるまで、その女将と俳句人生とをやり通しました。この句もそんな暮しの中から生まれたものでしょうがさすがですね。彼女を知ってからは、いつもこんな句を詠みたいと憧れていました。

  戒名は真砂女でよろし紫木蓮

 これも真砂女さんの潔さを感じさせる、私の好きな1句です。季語は「紫木蓮」、「しもくれん」と読み、字の通り紫色の木蓮の花のことです。今知ったのですが、真砂女さんは〝丙午〟(ひのえうま)生れとか…なるほどと納得しました。昔からこの丙午生れの女は気性が激しくて、夫を殺すという迷信があって、確かにその丙午の年が廻ってきたときは出産率ががた落ちになったという記憶があります。迷信ながらも、やはり我が子には不幸な人生は歩ませたくないという親心でしょう…昔も今も変わらないですね。
 ところで、わが教室の〝目刺〟の句ですが、今回一番の迷作(?)だったのは…〈人生の功成し遂げし目刺好き〉でした。みんな???私も?
 普通俳句は一人称の文学ですから、句の主体は作者になります。とすると、「功成し遂げし」は作者。俳句では自分を褒めそやすのはタブー、だとすればこれは一体誰のこと?となったのです。作者曰く、「元経団連会長の土光さんです」と。
 そこで、みんなに「分かる?」と聞くと、12人中10人が分からないという。恥ずかしながら、政治経済には全く疎い私も当然分かりませんでした。
 何となく聞いたことのある名前だとは思ったのですが、その人が目刺好きとは全くの初耳でした。
 家に帰ってすぐに調べてみましたよ。ありました!ありました!「メザシの土光さん」と親しまれた「第4代経団連会長・土光敏夫」と。
 明治29年生れ~昭和63年没。「ミスター合理化」として臨調で辣腕を振るいながら、私生活では質素・倹約を貫き通した人。食生活ではメザシのみならずキャベツの芯や大根の葉まで余さず食し、散髪は自宅で、農作業には拾ってきた帽子をかぶり、作業ズボンのベルトは要らなくなったネクタイ…更に通勤はバス・電車と、およそ大会社の社長とは思えない「つましさ」で、まさに本物の「倹約家」であったと。
 そんな話や写真などを見ていたら、やはり明治生れの父が重なってきて、「ああ、父もそうだったなあ…」と懐かしく思い出してしまいました。きっと明治や大正生れの人は、みなそうだったのでしょう。
 私たち世代にはよき戒めの話として受け止めることが出来ますが、果たして今の飽食時代の子どもたちには、どう映るのでしょうか。もし、何も感じないということになれば…心配ですが。
 今回も良い勉強をさせて貰い、本当に感謝です。まだ知らないことは山ほどあるでしょうから、これからも学びの日々を過ごしたいものです。みなさん頑張りましょうね。

コメント (1)
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