橋長戯言

Bluegrass Music lover, sometimes fly-fishing addict.
橋長です。

EHAGAKI #371≪100年かけてやる仕事≫

2019年05月27日 | EHAGAKI
 
お世話になります
 
こう言った人がいます
 
「アイヌ語を守らなくてはいけないんです
アイヌ語の絶滅は将来、日本語の存続を脅かすととを知るべきです」
 
唐突ですが、お勧めされた本の一節であります
 
東京の街、たとえば銀座を歩いていて
「あれ、日本語が聞こえない」と感じたことはよくあります
今や珍しいことではありません  大阪のミナミもしかりです
 
儲けだけを追求したら、日本語より中国語?英語?ってことになるのか?
 
今回のお題は
「効率重視・利益優先を進めると中身が無くなる」というお話しです
 
超読書家の知人から
「時を超える生き方のヒントがここにある」と紹介された本であります
 
「100年かけてやる仕事」
〜中世ラテン語の辞書を編む〜
小倉孝保著(プレジデント社)
 
1913年から始まり2014年に完了した
「中世ラテン語辞書作成プロジェクト」に関わった人々への取材と
日本での取材で構成されている本でありました
 
今回はその中で日本での取材
アーサー・ビナードさんとの「やりとり」を取り上げてみました
 
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 
辞書は一日にしてならず
これによって中世の先人がどんな言葉をつくり
どういう知恵や視点を持ち
どんなふうに世界をとらえていたかを知ることができる
 
この世でただで動くのは地震だけ
 
市場原理優先の時代
今回の辞書のように利益が見込めないものに
時間と労力を割くことが難しい時代
 
時代に合わない
グローバル経済の中では利益が出ない、という考えが強い
 
しかし、時代に合わせるという考えの方が間違っている
時代に合わせないことで後々、人々に感謝され ることがある
 
「ただで動くのは地震だけ」
これは日本社会でしばしば口にされる言葉
 
人間は何らかの利益が約束されて初めて行動する
そうでもないのに人が動いた場合
裏に何らかの魂胆があると考えるのが適当、という意味
 
一方
言語などの文化活動においては市場原理に合わないこと
経済的利益や効率を基準には計れないことが多い
 
経済的利益よりはるかに大事な宝物があることに気付くと
利益が出ないことでも人は動く
 
それこそ人類が文明をつくり上げた力
 
もうかるから短歌や俳句が続いているわけではない
英語をつくった先人たちも
配当金をもらえるからそれをやったわけではない
 
人間が暮らしていくうえでかけがえのない宝をつくり
残し、言語は発展した
 
日本語も同じ
 
「この世でただで動くのは地震だけ」という言葉にしても
誰も著作権料を払っていない
 
言葉はみんなの宝物
無料で提供されることで共有財産になる
 
言葉や文字は経済的な力学を無視して生まれ、発展した
 
アイヌ語が絶滅しかけているにもかかわらず
日本人の危機感があまりに薄い
 
ユネスコが2009年に発表した「絶滅が危ぶまれる世界言語地図」
アイヌ語は日本で唯一 、危機の度合いが 「極めて深刻」 とされた
 
その他、「重大な危機」に
八重山語(八重山方言)と与那国語(与那国方言)が載っている
 
英国人は使われなくなった中世ラテン語を守ろうとしている
ウェールズ語、 スコットランド語を残そうとしている
生活言語として維持するのは難しいが、その地域の公用語にして
道路標識などでも使っている
 
英国人はそれを覚悟してやっている
 
一方、 日本人は覚悟どころか問題を認識さえしていない
 
インターネットの普及で英語の準国際語の地位は不動
英語の情報は世界を飛び回り
その影響を民族や文化の力で遮断することは不可能
 
グローバル経済の中でGAFAが東インド会社になって
植民地支配の力学が働いている
 
人・モノの移動が容易になり
ある民族集団の中に他の言語が入り込む
 
かつて日本人は
「ニューヨークやロンドンの地下鉄では英語を聞かない」と
口にしたが東京・大阪でも同じ現象が起きている
 
日本人は「日本列島 (レットウ)」と言うが
違う
「日本アウトレット」 で、日本がなくなっている
 
カネを落とす人々の共通語は英語と中国語
この力に日本語が抵抗できると思ったら大間違い
 
経済の力学を基準に行動している限り日本語は必要なくなる
 
アイヌ語をあきらめると
おっつけ日本語もあきらめることになる
 
「ただでも動く」存在
 
つまり経済的な利益を度外視して行動する人々こそが
文化を守ることが出来る
 
古い言葉を残す努力
アイヌ語や八重山方言、 与那国方言を
何とか存続させようと踏ん張り続けることが
言語植民地主義に抗することになる
 
英語の源流が
アングロ・サクソンの民族語とラテン語にあるのと同じように
日本語にはアイヌ語が影響している
 
カミはアイヌ語でカムイ
イノリはアイヌ語でイノミ
 
土台の言語を失った言語は脆弱になる
 
だからアイヌ語を守らなくてはいけない
アイヌ語の絶滅は将来、日本語の存続を脅かすと知るべき
 
日本語が続いているのは源があるから
絶滅のドミノ倒しが起きる
それが言葉の運命
 
アイヌ語をあきらめることは
日本語をあきらめることにつながる
 
言葉とは思想を伝える道具
効率よくこの道具を使うことでスムーズに速く
思想を伝えることができる
 
一方で
本来複雑である事象や考えを便利な言葉を使うことで
単純化させ ることになる
 
効率よく言葉を使用することで
伝えるべき思想の複雑さを
安易なかたちに変容させてしまうことの危うさがある
 
複雑な事象、思想を可能な限りそのままの姿で伝え残すには
効率よりも正確性を重んじることが重要
 
利便性だけで言葉を使っていては
いずれ社会は平板になり
個々の社会の持つ味わいが薄くなっていく
 
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 
 
ということでした
 
こうやってメールで
断片情報を流してる私が言うのもなんですが
「なるほど」と思う次第です
 
最後にこの「中世ラテン語辞典」の編集長の言葉を引用します
 
二代目編集長
◆デビッド・ハウレット
 
辞書と畑 何の関係もないように思えるでしょう
畑仕事をしているうちに共通点に気付いたんです
 
競争のない世界なんです
辞書編集も畑づくりも
 
競争よりも協力が必要な仕事です
 
最後の編集長
◆リチャード・アシュダウン
 
わたしたちは三百年以上にわたって本を使ってきました
書類としては八百年以上前のものもあります
 
一方、電子情報についてわたしたちはたかだか十年
二十年の経験しかありません
今後、 百年、 二百年とこの情報が生き残るのかどうか
確信を持てません
 
検索をしたり、分解したりするには便利です
しかし、紙に比べ壊れやすいかもしれません
紙の本は正しい条件で保存した場合
長く維持できることを知っています
 
 
何か「オモロイ仕事」のお話しがありましたら、ぜひ!
 ◇ ◇ ◇ ◇
◆分譲マンション・戸建の商品提案〜販売(代理・媒介・派遣)・販売管理
◆不動産営業コンサルティング・研修トレーニング
◆事業用・居住用物件の仲介、都心中古マンションの買取再販
◆都市再開発・建替えに関するサポート(人材派遣・コンサルティング業務)
◆太陽光発電用地取得〜開発・太陽光発電所の売買
 ◇ ◇ ◇ ◇
引続きよろしくお願いします
 
 
ではまた