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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

樹影譚

2022-09-14 19:21:30 | 丸谷才一

丸谷才一 1991年 文春文庫版
丸谷さんの随筆なんかはおもしろがって読むくせに、意外とちゃんと小説を読んでないことを気にしてたら、ことし3月の古本まつりでだったか、あー、これこれ、これ読んでなかったんだよなと、文庫を見つけたんで買った。
三つの短篇が収録されてて、初出は1986年から1987年で、単行本は1988年刊行だという。
「鈍感な青年」
図書館で知り合った24歳の男と20歳の女の話。
男が佃島のお祭を見に行こう、二年前に見たけどすごい熱気だったと誘う、女は東京出身だけど見たことないんで興味もって応じる。
ところが行ってみると、佃島は静かで、聞いてみると大祭は三年に一度、今年は蔭祭だから何もしない、ってことらしい。
神輿もでないし獅子頭もでない、見るものないんで二人は蕎麦屋にはいって氷いちごを食べる。
若い男は自分にはなんか実際的な能力が欠けてるなあと反省するんだが、女の態度が変わっているのに気がつかない、鈍感だから。
「樹影譚」
どういうわけか樹の影を見るのが好きだ、とくに並木の影なんかが垂直に立つ面に映るのにひかれるのは、どうしたことだろうって前振りから始まって。
古屋逸平という明治生まれ、山陰の地主の家の三男という小説家を主人公にたてて、樹影にこだわる人物にふりかかる奇妙な出来事を語る。
樹の影が映るイメージをとりいれた作品をいくつか書いた老作家は、郷里で講演会をやる機会ができたところ、その際にぜひお会いしたいという老女からの手紙をもらう。
「夢を買ひます」
リカちやんという銀座のお店ではたらく女性が主人公で語り部、「それが月曜で、日曜の夜、アメリカから帰つたばかりの先生が来たの。せんのお店のお客で、おつきあひしてた人。ちやんとママに言つてあつた人よ。」(p.154)とか、全編そんな調子の語り。
ひとから夢の話をされるのは嫌いなんだけど、たまたま聞いた話がおもしろくて、美容整形したけど今の顔は気に入ってないんで、ホステスやめたら元の顔に戻してお客には知らんぷりする、なんてその話を「先生」にする。
すると何が興味を刺激するのか、「先生」は前の顔を見たがり、写真を見せろ、アルバムはないのかと執拗にせまる。



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