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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

冷たい銃声

2017-01-23 17:20:26 | 読んだ本
ロバート・B・パーカー/菊池光訳 2009年 ハヤカワ・ミステリ文庫版
これはことしどこかで古本買ったやつ、スペンサー・シリーズの32作目、原題は「Cold Service」。
本文の前に「復讐は、冷たく供するのが最良の料理だ」って言葉があって、ん?と思うんだが。
主人公はスペンサーぢゃない、今回スペンサーには依頼人すらいない、これはホークの物語。
ホークが街の賭け屋に護衛を依頼されたが、何者かにライフルで背中を3発撃たれて瀕死の重傷を負う。
かつて自分がそういう目にあったとき(「悪党」)ホークに長期間のリハビリを支えてもらったスペンサーは、当然ホークのために尽力する。
ホークの身体が元の状態になるまで付き添うし、回復したあとは彼の復讐を手伝うことになる。
スペンサーと同様、ホークもそのやりかたにこだわる。自分が自分であるための復讐だから。
当然スペンサーの恋人スーザンは、危ない橋をわたることになるんでスペンサーに加わってもらいたくないんだけど、何を言ってもむだってことはだいたい理解してる。
ホークの恋人セシルは理解できない。こういう危機に直面したことで、そもそも自分がホークってのが何者なのかわかってないことに気づいて悩む。
「彼は、自分の中に籠もって、癪に障るほど充足していて、ただそこにいるだけだわ」と嘆く、スペンサーに対しても「彼に似ている」と言うが、スペンサーにはスーザンがいるし必要な存在、ホークは誰かが必要ってことはない。
スペンサーに説明させると「ホークが現在のホークであるのは、子供の頃から、彼が自分の本質に忠実である方法を見いだしたからだ」ということで、恋人のセシルがいても、彼は変わらないし、恋人の前でのホークの姿ってのは彼のすべてぢゃないって断言する。
ホーク自身に言わせると、「おれは背中を撃たれるようなことがあってはならないんだ」ということになる。誰だって撃たれて死ぬ可能性があると思うんだが、ホークは「ほかの男たちと同じであってはならないんだ」と一歩もひかない。
ところで、今回の敵はウクライナ人のギャング。いやあボストンもたいへんだ、中国人やロシア人も前に攻めてきたけど、こんどはウクライナ。
こいつらが冷酷極まりなくて、関わってる地元の弁護士ですら「彼らはふつうの人間と違うんだ。彼らは石器時代から来たような連中だ」なんて言う、裏切り者はすぐ切り刻んぢゃう、顔色も変えずに。
しかしケガから立ち直ったホークは一層タフになって、愛用の44口径マグナムをひっさげて正々堂々と連中をかたづけてく。
いちどなんかは相手をひっつかまえておきながら「次は殺す、失せろ」って放す、「死ぬことを恐れない人間を殺すのは、さして正義とは言えない」ってのがその理由。やりかたが問題なのだ。
どうでもいいけど、スペンサーのウクライナ勢力の評がおもしろくて、「ただ、そのヨーロッパ移民が大勢いて」「全員がドナルド・トランプのエージェントよりタフなんだ」っていうんだが、ほめてんだかけなしてんだかよくわかんない。

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