街から「闇」が消えた。
例えば、昔の喫茶店。
何をしている人なのか、半日ぼーつと過ごしている人達がいた。
タバコの匂いとホコリ臭いシート。
およそ生産性に縁のないその場所、でも必要としていた人がたくさんいたのだ。
薄暗い店の中で、熱心に書き物をする人や、店内の音楽に目をつぶり聞き入っている人、
「自分は何者でどこへ行くのか・・・」なんて、思ってたわけではないでしょうが、
私にはそんな風に映った男の人が昔の喫茶店には昼間から居た。
10代の終り、銀座の新聞社の近くの喫茶店でアルバイトをしていた時の印象です。
1980年(昭和55年)ドトールコーヒーがそんな「闇」をかき消した。
原宿駅前の1号店は鮮烈だった。コーヒーの美味しさにもびっくりした。
カフェのチェーン店はあっという間に街を席巻し、再開発の号令の元、
商店街や駅裏の飲み屋街は消滅し、街は明るく美しく変貌を遂げた。
勿論、悪いことではない、ないのだが、一抹の寂しさが・・・、
明るすぎる街は疲れる、整頓され過ぎた町は心がほぐれない。
少しばかりの闇、私は欲しいのです。
遺してほしいのです。