Action is my middle name ~かいなってぃーのMorrisseyブログ

かいなってぃーのMorrissey・The Smithsに関するよしなしごと。

やっぱり5分でわからない!前回来日から今のモリッシー、7年の軌跡 その7

2023-09-03 18:15:23 | モリッシー来日 2023

前回その6 の続きです。

間があきましたが、まだまだ続いています。2020年まで来ました。モリッシーがこの前日本に来てからの7年間って、ほんと長かったんだな…と実感します。

数々の批判と苦難を経験した2019年、それでも11月にモリッシーは、通算13作目となるソロ・アルバム“I Am Not A Dog On A Chain”を2020年3月にBMGレコーズからリリースすると発表します。プロデュースを務めるのは、フランク・ザッパやザ・ストロークス、ベック、ザ・ホワイト・ストライプスなどの仕事で知られるジョー・チッカレリ。2017年の”Low In High School”に引き続きです。

(チッカレリは前作プロデュース後のインタビューでもモリッシーのことを「プロデューサーの夢」と語っており、好きみたい。モリッシーのことを好きな人がいてよかった。プロデューサーが語る、レコーディング中のモリッシー話おもしろいです↓)

プロデューサー ジョー・チッカレリが語る モリッシー “Low In High School”

 

2020年

3月

●“I Am Not A Dog On A Chain”発売

2020年3月、日本でも新型コロナウイルス感染拡大が始まり、緊急事態宣言まで待ったナシ状態の頃。何もかも延期や中止でどんよりの頃、このアルバムは発売されました。

モリッシーはこのアルバムを、

"......我が最高の作品......本物であるにはあまりにも良すぎ.....良いと思われるには、あまりにも本物過ぎる......"

と評していました。いったいどっちなんだい。とにかくお気に入りということでしょう。どうなるかわかんない、つまんないコロナ禍の世界でまだある喜び…のような気がしたけれど、いかんせんこの「ありフォト」切り抜きを貼り付けたようなジャケは…。シナトラとか「50年代~60年代の男性ボーカリスト」(の、廉価盤ジャケ)ふうを狙っていたのでしょうか?

新年早々出た、先行シングルの歌詞を訳したりもしました↓

モリッシー ニューシングル “Bobby, Don’t You Think They Know?” 歌詞日本語訳

私の印象では、このアルバムをあまり聞いていないと言う方が多い気が。2023年のライブでも、このアルバムからの曲を3曲やっています。カッコ内の数字は演奏回数です。

Knockabout World (14)
Jim Jim Falls (12)
My Hurling Days Are Done (7)

(2020年~2022年には上記3曲に加えLove Is on Its Way Out /Once I Saw the River Clean /What Kind of People Live in These Houses? の3曲も)

 

3曲って言ったら、スミス曲や未発表アルバム曲からの曲をカウントしなければ、アルバム単位で考えたら1番ライブでやっているアルバムなわけで。この機会に聴き込むのもアリです。ていうか、もしまだちゃんと聴いていなければマストではないでしょうか?

私は個人的にはライブで”My Hurling Days Are Done”を聴きたい。歌詞もかなりモリッシーの思いの本質的部分を歌っている気が。7月のダブリン公演より↓

Morrissey - My Hurling Days Are Done - Live At Vicar St. Dublin 15th July 2023.

もう誰も忘れてると思うんですけどこのアルバムの発売は決まった時BMGは、「2020年、モリッシーのアルバムをアートワークとスリーブノーツを刷新して再発、リマスタリングする」って言ってたんですよ。アルバムは”Southpaw Grammar”、”Maladjusted”、”You Are The Quarry”、”Ringleader Of The Tormentors”、”Years Of Refusal”、”Live At The Hollwood Bowl”。「ひえ~またお金かかっちゃう~!!」とか嬉しい悲鳴をあげてたんですけど、しれ~っと裏切られることになります。モリッシーも、わたしたちファンも。

 

5月

●地元でパンを買いに行ったところを激写される

新型コロナウィルスの世界的大流行の昨今、モリッシーはどうしているのかと思っていたら、イギリスに帰りマンチェスターにいた模様。

5月20日の『デイリー・メール』では、マスクではなく「ハンド・イン・グローブ」で、地元近郊ヘイルにある有名な老舗「ヒルズ・ベーカリー」にパンを買いに行った(嬉しそうな)様子が報じられていました。このことを友人に言うと、

「て言うか、パン買いに行くだけでニュースになるって何??『はじめてのおつかい』!?」

と、呆れられました。初めてでもなんでもない、61歳直前の人の単なるロックダウン中の食料調達の様子ですが、嬉しそうだし、コロナでも近所で歩いて行けるところでささやかな幸せを追求しているモリッシーに元気づけられたものです。

モリッシーは2018年9月にも、パン屋でパパラッチされてます(マンチェスター・イブニング・ニュース)。この時はアルダリー・エッジ(マンチェスターから24キロくらいのとこ)の「G.ウェインホールド」。お客さんとして溶け込んでいる・・・↓ パン好きですね。自ら赴いて選びたい、って気持ちわかります。

ニマニマだけでなく、目的を果たしてキリッともしている↓

 

8月

●最愛の母、エリザベス・アン・ドワイヤー逝去

8月に入ると、最愛の母親の病状が悪化したようでモリッシー・セントラルにて祈りを求めるモリッシー。

自分の人生の動機となる唯一の人物、

「彼女は私であり、彼女がいなければ、もう明日というものはない。これ以上のお願いはない」

と言っていました。

しかしその願いもむなしく、同じくモリッシー・セントラルに8月14日に、彼女が亡くなったと発表されます。82歳、胆嚢がんだったそうです。

モリッシーは彼女の若き日の写真とともに、オスカー・ワイルドのこの言葉を引用していました。

 

"All my life's buried here … heap earth upon it."

私の人生そのものがここに眠っている

土をかけてやってくれ

これは、オスカー・ワイルドが27歳の時に書いた”Requiescat”(レクイストカットー「魂鎮めの祈り」)という詩の一説で、8歳で病死した妹アイソラへの鎮魂の詩です。自分の生涯は妹の墓に埋もれたとうたうワイルドは溺愛していた妹の死を嘆き、絶望し、この経験が後のワイルドの創作テーマの源になったと言われています。妹の死とともに、自分の人生そのものも葬られたと嘆いているのです。

上記引用の直前は

Coffin-board, heavy stone,
Lie on her breast,
I vex my heart alone
She is at rest.

棺桶の板、重い墓石が、
彼女の胸にのっている。
私はひとりで苦しんでいる
彼女は安らかに眠る

です。モリッシーは病の苦しみから解放され眠る母を思い安堵しつつつも、生きながら葬られるかのような自分の苦しさを、このオスカー・ワイルドの詩になぞらえたのでしょうか。

私はこの引用を見てスミスの“I Know It’s Over”の歌詞を思い出しました。

Oh Mother, I can feel the soil falling over my head

ああ母さん、頭に土が降りかかってくるのがわかるよ

モリッシーのこの“I Know It’s Over”作詞にはワイルドのこの詩の影響があったのかもしれないなあと思いました(今)。

 

モリッシーのお母さんの家の前に送られた、世界中のファンたちからのお花。これも今気づきましたが、タイトルに”My Hurling Days Are Done”の歌詞が使われていますね。

モリッシーの魂は2020年の夏、母とともに葬られました。この世にはもう気持ちを伝えられる人もなく、行ける場所もないと嘆き…。

でも安心してください、そんなのずっと前からそうだったってモリッシーはわかってるから、まだ前に進んでます(2023年現在も)。

つづきはこちら→ その8


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