Action is my middle name ~かいなってぃーのMorrisseyブログ

かいなってぃーのMorrissey・The Smithsに関するよしなしごと。

モリッシーインタビュー Morrissey Talks to Fiona Dodwell for Gabfest, April 2023

2023-04-04 15:45:40 | Morrissey Interview

(撮影 by かいなってぃー EVENTIM APOLLO LONDON 19.3.2023)

昨年11月に続き、ジャーナリストのFiona Dodwell twitter:@Angel_Devil982 がモリッシーに独占インタビュー

4月3日(日本時間)、自身の運営するサイトGabfest に公開しました。


ヨーロッパツアーを終えたばかりのモリッシーの最新の心境や音楽、メディアについて語っています。まあ、いつもと同じことですが、言い回しとか、自虐を超えたあふれる自信とか、ますます力漲り、超然とした高みに上るモリッシー。そんな彼の最新の言葉は読みごたえありました。

早速翻訳しました。以下、日本語訳です。

・・・・・・・・・・

Gabfest Exclusive: In Conversation With Morrissey

Morrissey Talks to Fiona Dodwell for Gabfest, April 2023

Fiona Dodwell(以下、F ):ヨーロッパでのミニツアーが終了しましたね。ライブの評判は本当に絶大なるものでしたよね。私はロンドンのハマースミス・アポロでのコンサートを拝見しましたが、今まで見た中で最高のショーのひとつでした。コンサートや新曲が証明していますが、依然としてあなたが絶好調なのは明らかです。それなのにメインストリームの音楽誌で、あなたを評価しているものはほとんどありません。これは悔しくないですか?

今となっては誰にもわかることだが、理解不能に近いものがある。業界に「不適合」な歌手への蔑視もあるし、音楽オーデイション上がり系の才能より虚栄心志向の延長線上にある考え方なのかもしれないが、どのレコード会社も、1年や2年で終わってしまうような歌手しか欲しがっていないように思える。実際、歌手という職業には、他のどんな職業よりも短いキャリアしか期待できない。100万枚以上売り上げるスター連中の多くは、歌が下手なことはわかっているからか、自分で歌う自信がないんだ。

一般的な傾向としては、やはり私の信用を落とそうとしているんだと思う。なぜなら、世間の人々は皆、喜ばせることなんて到底できないほど、偽りの政治に踊らされ、しょっちゅう怒りを爆発させているので、多目的スターだけが許容されているからだ。奴らが知的で有益なことを決して言わないので、レコードレーベルにとって安心だからだ。


F:あなたがその全てに属していないのは良いことです...。

私は音楽人生の中で、拍手喝采アザラシどもを避けるように過ごしてきたし、今さら加わることはないだろう。 だから私は、賞賛され同時に嫌悪されている。

F:あなたの音楽が今なお愛され続け、ライブチケットが完売するという事実は、未発表アルバムをレーベルと契約させるという問題をさらにややこしくしているのではないでしょうか。腑に落ちないです。レコード会社は何をそんなに恐れているのでしょう?なぜ、こんなにも物事を難しくしているのだと思いますか?

ある有名レーベルは「はい、傑作ですね......でも26歳以上の人とは契約しません」と言った.....。でも、今は多様性が大事で、境を越えてチャンスを提供するんじゃないのか? 現実にはこれらの言葉は、いかにより好みして使われているものであることか! ロンドンの有力なCEOを2人知っているが、彼らは私のキャリアを阻止するために、あらゆる手段を講じているよ。

F: それは信じられませんね、実際にそのような障壁に直面しているなんて。

こういうことに直面したアーティストは他にいないんじゃないか。また業界の重鎮の中には、スミスの再結成への一番の近道は、あらゆることからモリッシーの参加を遮断することだと考えている人もいる。今ではいたるところで、その証拠を見ることができる。 私はキャンセルされたわけではないが、バル・ミツバー(ユダヤ人の少年が13歳の誕生日を記念する通過儀礼で宗教的責任の始まり)に招待されたわけでもない。でも......そんなこと今まで、あったかな?まあ、私の人生を記録したいと考える映画監督が急に増えてきたのは興味深いことだ。 良い人たちは理解しているし、そうでない人は......そのつもりはない。

F: いわば中間マージンをカットして、インディーズでニューアルバムをリリースしたいと思ったことはありますか?ネット上で何人かのライターやファンが、レーベルから離れ、自分でアルバムをリリースすることも選択肢のひとつかもしれないという考えを示しているのを目にしました。レーベルがあなたを失望させることが多いようだから、というのが主な理由です。それとも、もっと伝統的な方法でリリースしたいのでしょうか?

やらないな。同じ段取りを組むとしても、レベルが下がるから。

F:どうしてそう思います?

車輪を回し、完全に「今」に集中するには、少なくとも6人のスタッフが関わる必要があるが、彼らは自分たちの利益にならないと何もしない。もう賃金だけでは人は動かない!したがって、既存のレーベルにとどまる方が良いでだろう。実際に私は、EMI、サンクチュアリ、そして先史時代のラフトレードで人生で最高の時を過ごした...それらは本当に面白かった...軽蔑的な意味ではなくね。毎週毎日ラフトレードのアジトに行った...それは彼らにとって苦痛だったでろうけど。当時のジェフ・トラヴィスは私と同じく何かを発見しようとしており、少なくとも私たちは妥協を許さないという決意を同じくしていたし、とてもうまくいっていた。

F:あなたのことを何度も何度も公に批判したがるある人物(ここではあえて名前を出しません)がいるようですね。彼らはあなたの名前を言ったり、記事にしたり、ツイートしたりせずにはいられないのです。彼らがあなたのことを嫌いだと言いながら、あなたを放っておくことができないということは、まったく混乱していることだと思いませんか?

それはほとんど性的な執着として伝わってくる。また、私が生身の友人であったという架空の時代のことを強く主張し、その主張によって啓蒙的な苦言を呈する権利が認められていると思っている。頭にロニー・ドネガン(英国の歌手。50年代に英国で大流行したスキッフルの第一人者)のかぶり物をつけ、自らを吠える政治的発言者とみなす者は、1970年代のメアリー・ホワイトハウス(英国の教師、保守的な活動家。英国メディアに反対するキャンペーンを実施)と何ら変わりない行動をしている。自分がたまたま嫉妬しているすべての人に腹を立てているから。頭の悪い子供でも、奴らの正体を見抜くことができる。彼らは、自分たちのことを暴露されるのを恐れて、キャンセルしようとしているんだ。もちろん、私は言論の自由の擁護者だが、嫌がらせや迫害は、かつては法律違反だった。しかし今はそうではない。

F:その点については、多くの人があなたに同意してくれると思います。あなたは長年、マスコミや特定の人物からの嫌がらせを経験してきたと思いますが...。もし、80年代に戻って音楽の旅をやり直せるとしたら、何か変えたり、違うことをしたりしたいですか?もしくは自分の音楽の旅やエンターテインメントの世界を横断してきたことに満足していますか?

絶対に(自分の今までの音楽人生を)好きだと思っている。 歌ってきた歌は素晴らしいし、マスコミの偏見に満ちた戯言の後でも...私の魂はまだ私自身のものだと思うんだ。

F:それはよかったですね。

自分の遠いルーツにスミスがあることは、誇らしい気持ちにさせてくれる。かつて我々が嘲笑され拒絶された理由が、今では、なぜこんなにも多くの人々がスミスを2023年に愛しているのか、という確かな理由になっている。盛り上がっているしね!ほら、人々はいつも正しい。Spotifyでは、スミスの曲はビヨンセと同じヒット数だ。それなのに、ビヨンセはセルフリッジ(英国の高級デパート)のエスカレーターで毎時間宣伝されているというのに、スミスは何の宣伝もされたことがない。

スミスには、今ではありえないような勢いが毎週あった...毎週木曜には、スミスの活動に関する新しい情報が入ってきて、ウルワースやアワープライスで3ヶ月ごとに新しい7インチレコードが発売されていて、とてもイギリス的で、みんなそれを本当に楽しんでいた。その後、コロネーション・ストリートにスミスに関する落書きが見られるようになった。しかし、ラジオやチャートがテクノ・ダンス・ミュージックに独占されたため、今はバンドを追いかけるためのそんなドキドキ感はなくなってしまった。

私にとっては、『Viva Hate』『Bona Drag』『Your Arsenal』『You Are The Quarry』『Ringleader of the Tormentors』『World Peace is None Of Your Business』といった作品と共に音楽キャリアを歩めたことは、この上ない幸せだと思う。


F:音楽活動以外の時間は、どのように過ごし、どのようにくつろいでいるのでしょうか?

古い鉛筆を噛んでいる…ということはないね。私は関わらない。ほとんど世捨て人みたいなものだ。ヨットにも馬にも乗ったことがない。スマートフォン文化のせいで移動が大変なんだ。どこへ行っても、写真を欲しがる人、あるいはすでに撮っている人がいる。でも、そうはいっても、正直なところ......どこへ行っても、人々はいつも、とても親切だ。リシ・スナク(英国首相)には、そんな主張はできないと思うが。

F:本当にそうですね!次は本の話をしたいと思います。私も熱心な読書家なので(そしてあなたの小説『List Of The Lost』を何度も読んでいます!)、あなた自身のお気に入りの小説は何なのか知りたいと思います。

私は本を手に取り、貴重な宝石のようにひっくり返したり回したりしている。1751年にアントワープの塔で細かい手書きで600ページもの書物が編まれたことには驚かされる。それは私にとって究極の達成物だ。古典文学を書き換えようとする「キャンセルハゲタカ(キャンセル文化によって、他人のキャリアや社会的地位を狙って攻撃する者たち)」の話を聞くと、部屋が暗くなるような気がする。

F: 人々は、表現の自由や個性を永遠に腐敗させようとしているように思えます。芸術の世界でも......おそらく芸術の世界ではもっとそうでしょう。なぜなら、権威ある人々は芸術がいかに真に力強く、変容し得るかを認識しているからです。では、好きな作家は誰ですか?

ウィリアム・メイクピース・サッカレー(19世紀イギリスの、ディケンズと並びヴィクトリア朝を代表する小説家。上流階級を痛烈に批判した『虚栄の市』で文名を高めた)のような小説家が好きだ。しかし、この作品を読み解くには、ある種のアームチェアに座っていなければならない。カーソン・マッカラーズ(20世紀アメリカの小説家)も好き。『心は孤独な狩人』。タイトルは常に。実際の本そのものよりも多くを語らなければならない。

F: メインストリームのマスコミが悪質で、キャンセル文化がますます頭をもたげる中、自分自身を「水増し」しないことは、大きな自信につながるのではないでしょうか。マスコミから厳しい扱いを受けているのだから、そうすることも許されるでしょう。しかし、あなたは自分自身で強さを保っています。その自信はどこから来るのでしょうか。また、ネガティブな報道の影響から自分を守るにはどうしたらいいのでしょうか。

昔は、真面目な評論家に救われてきたと思うが、今は難しい。音楽界には、明らかに何もかもが優れていないくせに大成功している者がたくさんいるので、音楽ライターには刺激の栄養失調状態のようなものがある。昔はもちろん、ニック・ケントやジュリー・バーチル(2人とも、英国のロック・ジャーナリスト)のようなライターが、ある種の喜びをもって、立ち入り禁止のテーマに取り組んでいた。しかし、今、誰がそれをする準備ができているのだろうか?誰がそれを引き受けたいと思うのだろう?

F:多くの人が「キャンセル」されることを恐れているから、ごく少数です。彼らはむしろ、守る価値のあるものを持たずに、無難に過ごすことを望んでいます。

どこの国でも、隣人の意見にひどく依存しすぎている。その結果、A&Rマン(レコード会社や音楽出版社において、アーティストや作家の才能を発掘し、彼らの芸術的発展を統括する部門の人間)であるはプテロダクティルス(鳥の恐竜)と同じような存在になり、キャンセル文化は実際に現代のリンチの一形態になっている。

F:近年の音楽業界は、才能よりもイメージやギミックを重視しているように思えますが、そう思いますか?

それが長い間続いていると思う。新しいバンドがオアシスやレディオヘッドを連想させれば、すごいと思われるような、比較ゲームばかり盛んになっている。 私は、何も思い出させないバンドを待っているのに!ロボトミー手術を受けたような顔には死ぬほどうんざりしている...そしてアーティストが表現しているのはすべてセックスに関するものだが、実際にセクシーな人はいない。サム・スミスは、女性版W.C.フィールズ(アメリカの俳優、コメディアン。人間嫌いで怒りっぽい酒豪のエゴイストキャラで笑いを呼んだ)みたいなものだ。

F: サム・スミスとW.C.フィールズ...。この比較は頭から離れません。

さて...『Bonfire Of Teenagers』と『Without Music The World Dies』が完成し、現在は未発表となっていますが、モリッシーは次に何をするのでしょうか?この2つのアルバムのリリースを待ち、このことに集中するのでしょうか?

ああ、どちらも発売されることはないと思うけど、もし、ある程度の力を持った人が前に出て、人々が音楽を買うことを許してくれたら...世界中の何十万人もの心の中に、永遠に大切な場所を持つことになると思うんだけど..。

F: これらのアルバムがリリースされないかもしれないと思うと、ショックです...。

こんな時代を誰が予想できただろうか。 キャピトル・レコードは私が死んだら『Bonfire~』をリリースするのだろう。 そうでなければ、誰もこのアルバムを救い出すことはできない。

F:メディアはしばしば、あなたをこの永久に不幸なアーティストと表現したがります。一部のジャーナリストは、「Heaven Knows He's Miserable Now」という言葉を永遠に使い続けています。これは真実からどの程度離れているのでしょうか?

ボブ・ディランがジョークを飛ばしたことがあるか? ジョニ・ミッチェルがウーピー・クッションの上で跳ねるのを見たことがあるだろうか? あるいはトム・ウェイツは? もしビリー・ホリデイが死から蘇ったら、このジャーナリストたちはきっと「Heaven Knows She's Miserable Now」と書くだろう。 ニーナ・シモンはふざげて唇をぶるぶる鳴らしたことがあるか? ルー・リードがコミック・リリーフ(1985年から毎年3月に行われる英国芸能人による慈善企画)のために着飾ったことがあるか?

でも、実際には、マスコミは いつも 私についてそういうことを言っていた。 40年間成功し、人生も楽になったはずなのに、賞を与え、音楽を称えるどころか、なぜか私はシャミマ・ベグム(15 歳のときにテロ組織イスラム国参加のためにシリアに入国した英国生まれの女性)よりも報道陣の支持を得られない!彼女はゴミ箱に入れられた切断された頭部に肩をすくめていた...それでも私は彼女より下だ! たとえ私のことが嫌いでも、この状況は間違っているし、現代のイギリスの芸術や文化を酷く反映している。 でも、私はもうネガティブな声には興味がない。

F:あなたはそれらを克服し超然としている..。

私が歌う曲は、今の現実世界と絶対的な関連性を持っている...そして、他の誰もそれに匹敵するとは思えないんだ。